2021/6/26

生死が不明の者を法律上死亡したものとみなす制度~失踪宣告について~

ある人が家出をしたりしてその住所からいなくなった後、長期間にわたって生死が不明な場合、残された家族といった関係者はその後の生活を営むうえでさまざまな制約を強いられることになります。
 
そこで民法は、法律上その人が死亡したものとみなす制度を設けており、これを「失踪宣告」と言います。  
 
 
 
 
生死が不明の者を法律上死亡したものとみなす制度~失踪宣告について~
 
 
目次
1.「失踪宣告」とは
2.「普通失踪」と「危難失踪」
3.認定死亡
4.高齢者(職権)消除
 
 
 
1.「失踪宣告」とは
 
 
「失踪宣告」とは、生死不明の者や、不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる民法上の制度です。
 
 
 
2.「普通失踪」と「危難失踪」
 
 
失踪宣告には、普通失踪と危難失踪の2種類がありますが、両者では失踪宣告に必要な失踪期間と失踪宣告により死亡したものとみなされる時期が異なります。
 
普通失踪の場合は不在者につきその生死が7年間明らかでないときに、危難失踪の場合は又は戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないときに、家庭裁判所が、利害関係人からの申立てにより失踪宣告をすることができます。失踪宣告の効力として、普通失踪の場合は失踪期間である不在者の生死が不明になってから7年間が満了したときに、危難失踪の場合は危難が去ったときに死亡したものとみなされます(危難が去ってから1年が経過したときではありません)。
  
 
 
3.認定死亡
 
 
(1)認定死亡とは
 
類似の制度に戸籍法上の「認定死亡」という制度がありますが、これは、海難事故、航空機事故、震災、火災などによって遺体の確認ができないものの、死亡の可能性が極めて高い場合に、官公署からの報告により戸籍に死亡が記載される制度です。認定死亡では戸籍に記載された死亡年月日に死亡したものと推定されます。同じような状況下で死亡したものとして扱う制度には危難失踪もありますが、危難失踪の場合、失踪宣告がされるまでに1年の経過が必要となり、財産関係の迅速な処理が出来ず不都合が生じることもあるため、認定死亡制度によりそれを補完しています。
 
 
(2)失踪宣告と認定死亡の違い
 
失踪宣告と認定死亡は、どちらも人の死亡が確認できないときに死亡したものとして扱う制度であり、相続の開始原因であるという点では共通していますが、法的な効果には違いがあります。
 
認定死亡の場合には死亡を「推定する」ものであるのに対し、失踪宣告の場合には死亡したものと「みなす」ことになります。この違いは何かというと、「推定する」という場合には、反対の証拠を挙げれば推定を覆すことができるのに対し、「みなす」という場合には、反対の証拠を挙げただけでは覆すことができないということです。死亡として取り扱われた人が実は生きていたという場合、認定死亡の場合にはその人が生きていたことを証明すれば、認定死亡は取り消され、戸籍の死亡の記載は訂正されますが、失踪宣告の場合には、その人が生きていたことを証明したとしても、それだけで失踪宣告が取り消されることはなく、別途、家庭裁判所による失踪宣告取消の審判が必要となります。
 
 
 
4.高齢者(職権)消除
 
 
なお、高齢者(職権)消除といって、戸籍実務上、100歳以上の高齢者で所在不明の者について、一定の要件の下に死亡の蓋然性が高いと判断される場合には、市町村長が法務局又は地方法務局の長の許可を得て、職権で戸籍から消除する制度もあります。ただし、これはあくまでも行政上の便宜のために行われる手続きであるため、戸籍が消されても相続が開始されることはありません。相続手続を行うには、親族等からの死亡届又は失踪宣告が必要です。