2025/1/14
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相続財産清算人について |
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相続人の存在、不存在が明らかでないときには、利害関係人等の申立により家庭裁判所は相続財産の清算人を選任します。 この相続財産清算人は、被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、清算後も残った財産を国庫に帰属させることになります。 この際、特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もあります。 ![]() 相続財産清算人について
1.制度の概要 相続財産清算人の制度は、相続が開始したものの相続人のあることが明らかでないときに、申立てによって家庭裁判書が相続財産の清算人を選任した後、相続人を捜索しつつ、相続財産を管理・清算(例:不動産の売却や債務の弁済等)し、もし相続人が現れない場合には、これを特別縁故者(被相続人と生計を同じくしていた方や被相続人の療養看護に努めた方、その他特別な縁故があった方)に分与するなどして、最終的には国に引き継ぐための制度です。 2.選任が必要なケース ① 被相続人にお金を貸していたなど、被相続人を債務者とする債権を相続財産から回収したい場合 ② 所有する不動産に被相続人を債権者とする登記があり、その登記を抹消したい場合 ③ 被相続人から財産を預かっていた場合 ④ 相続財産を管理、処分してほしい場合 ・被相続人の自動車が残され、撤去されないままの状態になっており、土地の使用や通行が妨げられている場合 ・被相続人の建物が残されているが、倒壊寸前で自分の家に被害が及ぶ可能性がある場合 ・隣家が空家になって放置されているため、ごみが捨てられて不衛生な状態になって困っている場合が、隣家の所有者は既に亡くなっており相続人がいるかどうか明らかでない場合 ⑤ 特別縁故者として相続財産の分与を受けたい場合 ・内縁関係にあった者が亡くなり、その相続人がいない場合に相続財産を取得したい場合 なお、被相続人とどんなに疎遠であったとしても、相続人が存在する場合には特別縁故者が財産分与を受けることができないことには留意が必要です。 3.申立てができる場合 相続財産清算人を選任してもらうことができるのは「相続人のあることが明らかでないとき」ですが、これは次のような場合です。 ① 戸籍上相続人がいない場合 ② 戸籍上の相続人全員が相続放棄をした結果、相続人がいなくなった場合 ③ 被相続人(亡くなられた方)が外国籍の場合などで、相当の調査をしても相続人を把握しきれない場合、など 相続人はいるがその住所が明らかでない場合は、「相続人のあることが明らかでないとき」には該当しません。なお、戸籍上相続人がいるかどうかについては、相続財産清算人選任の申立てをする方の責任で調べる必要があります。 4.申立てができる人 相続財産清算人選任の申立てができるのは、被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者などの利害関係者と検察官です。なお、所有者不明土地や空家につきましては、市町村長等が申立てできる場合があります。 利害関係人の中に相続放棄をした人が含まれるかどうかですが、相続人の全員が相続放棄をした場合であっても、相続放棄をした人に、相続財産を管理・占有する等の事情があり、利害関係人と認められる場合には申立てをすることができます。 5.申立てに必要な書類 相続財産清算人の選任申立てに必要な書類は主に以下のとおりです。 (1)申立書 申立書の書式や記載例は裁判所のホームページに掲載されています) (2)標準的な申立添付書類 ① 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ② 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ③ 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ④ 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ⑤ 被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ⑥ 代襲者としての甥や姪で死亡している方がいる場合、その甥又は姪の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ⑦ 被相続人の住民票除票又は戸籍附票 ⑧ 財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金及び有価証券の残高が分かる通帳の写し、残高証明書、など) ⑨ 利害関係人からの申立ての場合には、利害関係を証する資料(戸籍謄本、金銭消費貸借契約書写し、など) ⑩ 相続財産清算人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票 上記の書類のうち、同じ書類がある場合は1通で足ります。 また、裁判所での審査で必要がある場合,上記のほかに追加書類の提出しなければならない場合もあります。 6.申立てに必要な費用 相続財産清算人の選任申立てには以下の費用が必要となります。 (1)収入印紙 800円分 申立書の提出の際に、申立書の貼付欄に貼って納めます。 (2)連絡用の郵便切手 具体的な金額や切手の内訳については、申立先の家庭裁判所によって異なる場合がありますので、事前に家庭裁判所で確認する必要があります。なお、各裁判所のホームページで掲載されている場合もあります。 (3)官報公告料 5,075円 (1)と(2)は申立書の提出の際に納める(収入印紙は貼付、郵便切手は添付します)ことになりますが、官報公告料については、申立て後に家庭裁判所の指示があってから納めることになります。 このほかに、相続財産の内容からみて、相続財産清算人が相続財産を管理するために必要な費用(相続財産清算人に対する報酬を含みます)に不足が出る可能性がある場合、相続財産清算人が円滑に事務を行うことができるように、申立人に相当額を予納金として納付しなければならないことがあります。 この予納金の額については財産状況などによって異なるため一概には言えませんが、概ね20万円~100万円程度となるようです。 7.誰が相続財産清算人に選任される? 相続財産清算人に選任されるために特に資格は必要ありませんが、家庭裁判所は、被相続人との関係や利害関係の有無などを考慮して、相続財産を清算するのに最も適任と認められる人を選びます。 相続財産清算人として指名したい人がいれば、申立書に候補者を記載することができますが、必ずしもその候補者が選ばれるとは限らず、弁護士,司法書士等の専門職が選ばれることもあります。 8.相続財産清算人が選任された後の手続 相続財産清算人が選任された後の一般的な手続の流れは次のとおりです。なお、手続の途中で相続財産が無くなった場合はそこで手続は終了します。 (1)相続財産清算人選任と相続人捜索の公告 家庭裁判所は,相続財産清算人選任の審判をしたときは,相続財産清算人が選任されたことを知らせるための公告及び相続人を捜すための公告を6か月以上の期間を定めて行います。この公告の期間満了までに相続人が現れなければ,相続人がいないことが確定します。 (2)債権者・受遺者への請求申出の公告 (1)の公告があったときは、相続財産清算人は、2か月以上の期間を定めて、相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をします。なお、(1)の公告の期間満了までにこの公告の期間が満了するように公告します。 (3)特別縁故者による財産分与の申立て (1)の公告の期間満了後、3か月以内に特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがあります。 (4)相続財産の換価 必要があれば、相続財産清算人は、随時、家庭裁判所の許可を得て、被相続人の不動産や株を売却して金銭に換えることもできます。 (5)債務の弁済 相続財産清算人は、法律にしたがって債権者や受遺者への支払をしたり、特別縁故者に対する相続財産分与の審判にしたがって特別縁故者に相続財産を分与するための手続をします。 (6)国庫への帰属 (5)の支払等をした後に相続財産が残った場合は、相続財産を国庫に引き継いで手続が終了します。
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