2024/12/14

受遺者が法定相続人になる場合の遺言書

私には配偶者も子もなく、また既に親も亡くなっているので、相続人は兄のAだけですが、Aも高齢なので遺産を姪のBに託したいと考えています。Bは現時点では相続人ではないため、遺産については、相続ではなく遺贈することになりますが、将来Aが私より先に亡くなればBが相続人になりますので、その場合に備えてBに相続させるための方法はありますか?
 
 
 
 
受遺者が法定相続人になる場合の遺言書
 
 
遺言では、特定の人に「遺贈する」と記載する場合と「相続させる」と記載する場合があります。遺贈とは、遺言により遺言者の財産の全部又は一部を無償で譲ることを言い、特定の財産を譲る「特定遺贈」と、財産を包括的に譲る「包括遺贈」があります。これに対して、特定の遺産を特定の人に「相続させる」遺言は、原則として遺産分割方法の指定(特定財産承継遺言)であり、何らの行為を要せずして当該遺産は被相続人の死亡の時に直ちに相続に因り承継されます。
 
遺贈と「相続させる」遺言では、一般的に次の点が異なります。
 
① 遺贈では、対抗要件を備えるには遺言執行者(又は相続人)の行為が必要であり、例えば不動産であれば、遺言執行者(いない場合には相続人)と受遺者(遺贈によって遺産を譲り受ける人)が共同で所有権移転登記を申請する必要があるのに対し、「相続させる」遺言による場合は、不動産の相続登記の手続等は当該相続人が単独で申請することができます。
 
② 遺産の取得を第三者に対抗するためには、遺贈の場合は基本的に権利全体について対抗要件が必要であるが、「相続させる」遺言による取得は、法定相続分を超える権利の承継についてのみ対抗要件が必要となります。
 
③ 遺贈は誰に対してもできますが、「相続させる」遺言の対象は相続人に限られます。
 
④ 借地権や借家権の遺贈では賃貸人の承諾が必要となりますが、「相続させる」遺言では不要です。
 
遺贈の場合、上記①と②の対策として「遺言執行者」を指定しておくことが重要となります。遺言執行者がいる場合は、もし相続人が遺言に反して相続財産を処分しても原則として無効とされますので、この意味でも遺言執行者の指定には大きな意味があります。
 
近年の法改正によって、遺贈と「相続させる」遺言の違いはそこまで大きいものではありませんが、それでも上記のような違いがあるため、遺言の実務では相続人に対して遺産を承継させたいときは「相続させる」とし、遺産を承継させたい人が相続人出ない場合に遺贈とするのが一般的です。
 
そのため、遺言作成時にはまだ先順位がいるため相続人でない者(例えば孫や甥姪など)に遺産を承継させたいときは次のような読み替え規定を置いて、相続開始時に相続人となっていたときには「相続させる」遺言とする工夫がされることが考えられます。
 
遺言書の例
 
第○条 遺言者は、遺言者の甥B(昭和○○年○○月○○日生、住所:○○県○○市○○町○丁目○番○号)に遺言者の財産全部を遺贈する。

第○条 遺言者の相続開始時において、本遺言の受遺者が相続人であるときは、前条の「遺贈する」を「(代襲)相続させる」と読み替える。
 
第○条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、前記Bを指定する。
 
 
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