2021/8/1

遺言書ってどうやって探すの?

 
 
遺言書がある場合、遺産の相続に関しては原則として遺産分割協議より遺言書が優先されることになります。もし、遺産分割協議が終了した後に被相続人の遺言書が発見された場合には、既に終了した遺産分割協議は無効になり、新たに遺産分割のやり直しが必要になる場合もあります。
 
したがって、遺言書があるかどうかを確認することが大事なのですが、あらかじめ遺言者本人から聞いていればともかく、何も聞いていなければ遺言書の存在に気づかないこともあるでしょう。
 
ですが、「もしかしたら、どこかに遺言書があるかもしれない」と思って、いつまでも遺産相続が進まない(進められない)ことも問題です。
 
どうにかして遺言書を探す方法はないでしょうか?  
 
 
 
 
 
遺言書ってどうやって探すの?
 
 
目次
1.遺言書に気づかないまま遺産分割協議をしたらどうなる?
2.公正証書遺言・秘密証書遺言の検索
3.自筆証書遺言の検索
4.おわりに
 
 
 
1.遺言書に気づかないまま遺産分割協議をしたらどうなる?
 
 
遺言とは、自己の死後における財産の行方や家族の在り方を、法律で定められた方式に従って行う最終の意思表示のことをいい、それを書面にしたものが遺言書です。もし、遺言書がある場合、原則としてその内容どおりに遺産相続を行うことになります。
 
ところが、もし遺言書を書いた人が亡くなったとしても、その相続人が遺言書の存在を知らなければ、遺言の内容とは関係なく遺産分割協議を行い遺産相続の手続を進めてしまうことでしょう。
 
ただ、遺産分割協議が終了した後に被相続人の遺言書が発見された場合には、既に終了した遺産分割協議は無効になり、新たに遺産分割のやり直しが必要になる場合もあります。
 
たとえ、遺産分割協議が終わって何年も経ってから遺言書が見つかった場合でも、遺言書はそれを書いた時点での「意思表示」であり、時間の経過によってその効力が消滅するものではないと考えられています。そのため、完了した遺産分割協議に基づいて遺産の分配が行われていたとしても、基本的には、それらをすべて白紙に戻し、あらためて遺言に従って再分配を行わなくてはなりません。
 
このようなことから、遺言書があるかどうかを確認することは非常に重要な意味を持つわけですが、亡くなられた方から遺言書に関して何も聞いたことがない場合に、やみくもに探してもきりがありません。
 
そこで、遺言の種類ごとに、遺言書を探す方法や手掛かりについて紹介します。この方法だけで完璧に遺言書の有無を確認できるわけではありませんが、一定の効果は期待できるでしょう。
 
 
 
2.公正証書遺言・秘密証書遺言の検索
 
 
公正証書遺言や秘密証書遺言を作成する場合、公証役場にいる公証人の関与が欠かせないのですが、平成元年以降に作成された公正証書遺言については、日本公証人連合会において遺言情報管理システムを構築し、全国の公証役場で作成された遺言公正証書や秘密証書遺言に関するデータが一元的に管理されており、全国どこで作成されたものであっても、最寄りの公証役場で遺言書の有無を検索することができます。
 
「公正証書遺言」は、遺言書の作成そのものを公証人が行い、遺言書の原本は公証役場で保管されているため、検索によって遺言書が保管されている公証役場が分かれば、その公証役場に対して、遺言書の謄本(写し)の交付を申請することで遺言書の内容を知ることができます。
 
 
なお、「秘密証書遺言」については、作成した遺言書の原本は自分で保管しなくてはならないこととされていますので、その存在が分かったとしても、遺言書そのものは別途、探さなければならないことには注意が必要です。
 
 
 
3.自筆証書遺言の検索
 
 
「自筆証書遺言」とはその名のとおり、自分で書いて作成する遺言書です。
 
自筆証書遺言について、かつては公証役場の検索システムのような公的な保管制度はありませんでしたが、令和2年より法務局(遺言書保管所)で遺言書を預ってくれる「自筆証書遺言書保管制度」が開始されています。
 
この制度を利用して法務局に預けた遺言書については、相続発生後に相続人等からの請求によって遺言書の有無や遺言の内容が記載された証明書の交付を請求することができます。なお、一定の条件を満たせば、法務局から遺言書を保管していることの通知が届くようにすることもできるため、遺言書の存在に気づかないといった事態を防ぐことが期待できます。
 
ただし、この制度を利用するかどうかはあくまで遺言者の自由ですので、証明書を請求した結果、法務局に遺言書が保管されていないことが分かっても、それだけで故人の遺言書が存在しないことが確定するわけではないことには注意が必要です。
 
この制度利用しない「自筆証書遺言」については、遺言書の作成を支援した弁護士や行政書士、司法書士などの事務所、あるいは信託銀行などに保管されている場合もありますので、故人の遺品に見慣れない名刺などがあれば連絡をしてみるのも一つの方法でしょうし、場合によっては、遺言者の死亡後に通知があるかもしれません。それ以外にも、遺言者の自宅の重要な書類の保管場所(鍵が付いた机の引出しや金庫など)や銀行の貸金庫を探したり、生前に相談をしていた顧問税理士や親しい人物に問い合わせてみるのもよいでしょう。
 
 
4.おわりに
 
 
遺言書の有無は、その後の相続手続に大きく影響します。生前、何も聞いていなかったからといって安易に遺言書の存在を否定せず、可能な限り手を尽くして遺言書の有無を確認することが望ましいでしょう。