2021/9/22

不動産登記とは

司法書士の業務の一つに不動産登記の代理申請があります。具体的には、不動産の売買、贈与、相続などによる名義変更や、抵当権、借地権に関する登記など、不動産の権利に関する登記についての手続きを代理して行っています。
 
日本における不動産登記の代理申請業務は主に司法書士が担っており、不動産に関する様々な権利関係について、人・物・意思などの確認を行いながら、市民権利の保全に寄与していますが、不動産登記という言葉は知っていても、その内容はあまり広く知られていないかもしれません。
 
今回は、不動産登記に関して、登記の種類や登記すること意味(効力)について説明します。
 
 
 
 
 
不動産登記って何?どんな意味があるの? 
 
 
目次
1.不動産登記とは
2.登記簿の構成
3.表示登記と権利の登記
4.不動産登記の効力
 
 
 
1.不動産登記とは 
 
 
不動産登記とは、登記所(法務局)において、法令で定められた手続きにより公の帳簿(登記簿)に不動産の表示や権利に関する事項を記録することをいいます。この登記簿には土地や建物の所在・面積のほか、所有者の住所・氏名などが記載されており、これを一般に公開することで、権利関係などの状況が誰にでもわかるようにし、取引の安全と円滑をはかる役割を果たしています。
 
 
 
2.登記簿の構成
 
 
登記簿とは、「表示に関する登記」(表示登記、表題登記)または「権利に関する登記」について1筆(1区画)の土地または1個の建物ごとに作成される「登記記録」を電磁的記録(コンピュータで処理可能なデジタルデータ)として備える帳簿のことをいいます。登記記録は、「表題部」と「権利部」に区分され、「権利部」はさらに、「甲区」(所有権に関する事項)と「乙区」(所有権以外の権利に関する事項)に区分されています。
 
 
 
3.表示登記と権利の登記
 
 
不動産登記には、不動産の物理的な状況の登記である「表示登記」と、不動産の権利に関する得喪、変更等に関する登記である「権利の登記」があります。
 
このうち、「表示登記」は不動産の物理的な状況を正確に公示するという役割があるため、不動産の所有者に は申請義務が課されています。
 
一方、「権利の登記」は、不動産の権利関係を第三者に対抗するために公示するという役割であって、申請人には原則として申請義務は課されていません(※)。
 
表示登記は土地家屋調査士、権利の登記は司法書士が業務として取り扱うことができます。
 
 
※これまで任意とされていた相続登記や住所等変更登記の申請を義務化する法律の改正が令和3年4月21日に成立しました。相続登記の義務化が3年以内に施行され、相続による不動産の取得を知ってから3年以内の所有権移転登記を義務化し、正当な理由がないのに怠れば、10万円以下の過料の対象となります。また、住所変更等の登記の義務化も5年以内に施行され、登記上の所有者の氏名、住所等について変更があったときは、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならず、正当な理由がないのに怠れば、5万円以下の過料の対象となります。
 
 
(1)表示登記
 
表示登記は、不動産の物理的現況を明らかにすることを目的としています。表示登記がなければ、権利の登記はできないため、表示登記は権利に関する登記の前提ということができます。
 
建物を新築したり、土地の地目を変更したような場合に表示登記を申請することになりますが、その登記事項として、登記年月日等のほか、土地の場合は「所在」「地番」「地目」「地積」について登記がなされ、建物の場合には「建物の所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」などが登記されています。また、これらの異動があったときは、異動があった日から1カ月以内に申請をしなければなりません。
 
 
(2)権利の登記
 
権利に関する登記は、不動産についての権利の保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅を公示するための登記です。
 
具体的な例として、売買による所有権移転や弁済による抵当権抹消などがあり、登記事項には、登記の目的、受付年月日・受付番号、登記原因及びその日付、権利者の住所・氏名等があります。
 
 
 
4.不動産登記の効力
 
 
前述のとおり、権利の登記は「不動産の権利関係を第三者に対抗するために公示する」という役割があります。この点につき、以下の【事例】を用いながら説明していきます。
 
【事例】
Aが、自らが所有する土地をBに売った。その後、未だ登記名義がAであったため、さらにCにも売った(二重譲渡があった場合)
 
(1)対抗力
 
民法176条では「物権の設定及び移転は当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」と定められています。したがって、例えば【事例】のようにA・B間で土地につき、売買契約が成立すれば、これら不動産の所有権はBに移転する効力が発生します。また、同様にA・C間でも同一の不動産につき、売買契約が成立した場合は、これら不動産の所有権はCに移転する効力も発生します。
 
このように二重譲渡が行われた場合、BまたはCのどちらが第三者に対して所有権が移転したことを主張できるのでしょうか。
 
 
民法177条では「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定められています。つまり、上記の【事例】では、売買契約の順序に関係なく、先に所有権移転登記を完了させた者が、一方の買主を含む第三者に対し自らが所有者であることを対抗(主張)できることになります。
 
このような効果を登記の「対抗力」といいます。所有権や抵当権などの不動産に関する権利を取得した場合に、登記をする必要性があるといわれるのは、登記をすることで対抗力を備え、自己の権利を守るためです。
 
 
なお、この「対抗力」は、表示登記については原則として認められていません。
 
 
(2)権利推定力
 
不動産登記には、反証により覆されない限り、現在の権利状態が推定されるという「権利推定力」があります。
 
ところで、実は日本の不動産登記には、原則として「公信力」がないと言われています。
 
「公信力」とは、相手方が権利者でないにもかかわらず権利者であるかのような外観を信頼して取引をした者に権利の取得を認める効力のことをいい、例えば、動産を占有している相手方を所有者だと過失なく信じてその動産を購入した場合、たとえその相手方が所有者でなかったとしても、購入者はその動産の所有権を取得することができます(民法192条の即時取得)。
 
これは、動産の占有に公信力が認められているからです。しかし、日本では不動産登記に公信力がないため、真実の権利関係と登記の記載とが異なっているときは、その記載を信用しても、これを保護することができないのが原則です。つまり、登記簿の記載より真実の権利関係を優先させるわけです。
 
もっとも、実際の不動産売買などの取引では、誤った登記が生じないように、不動産登記申請手続の代理を業として行う司法書士、あるいは宅地建物の売買等の媒介を行う場合の宅地建物取引業者には、法令等に基づく本人確認義務が課せられていることなどを鑑みると、このような事態が頻繁に発生するようなことはないと言えるでしょう。また、前述の「権利推定力」があることからも、不動産登記制度は一定の信頼性のもと、不動産の権利関係を公示する機能を果たしていると言えます。
 
 
(4)形式的確定力
 
形式的確定力とは、一度登記がされてしまうと、その登記が有効か無効かにかかわらず、その登記を無視して、その後の登記手続をすることができない効力のことをいいます。つまり、無効な登記がなされている場合であっても、その無効な登記の抹消等をしなければ、真実の権利者は自らの権利の登記をすることができません。
 
 
 
4.まとめ
 
 
不動産登記のうち、権利の登記については「対抗力」「権利推定力」「形式的確定力」という3つの効力が作用することによって、不動産に設定されている自己の権利を第三者に対抗することが可能となります。
 
権利の登記には、原則として申請の義務はありませんが、自らの権利を保護する意味で不動産登記は非常に重大な役割を果たしています。