2022/1/5

戸籍の附票の記載事項が変更されることによる相続登記への影響について

住所の履歴を証明する「戸籍の附票の写し」について、デジタル手続法施行に伴う住民基本台帳法の一部改正により、令和4年1月11日から下記のとおり変更されます。
 
・基本事項(氏名、住所、住所を定めた日)に、生年月日、性別が追加され、原則として表示されます。基本事項は必ず表示される項目ですので、省略はできません。
 
・基本事項であった「本籍・筆頭者氏名」「在外選挙人名簿登録情報(国外に住所があり、選挙人名簿に登録している方)」が原則として表示されなくなります。ただし、戸籍の附票の写しの利用目的を達成するために、これらの記載が必要であることを請求者が申し出たうえで、市区町村長が相当と認めるときは、戸籍の附票の写しに記載することができるとされておりますので、表示を希望する場合には、請求時にその旨を申し出る必要があります。
 
 
 
 
戸籍の附票の記載事項が変更されることによる相続登記への影響について
 
 
 
今回の法改正のうち、戸籍の附票の写しに「本籍・筆頭者氏名」が表示されなくなることで相続登記に及ぼす影響があります。
 
 
相続登記をする際には、「不動産の登記事項証明書に記載されている所有者」と、「戸籍謄本に記載されている被相続人」が同一人物であること証明をしなければなりません。被相続人が、その不動産の所有者であることを証明する必要があるというわけです。
 
 
そして、戸籍謄本には氏名、生年月日と本籍が記載されていますが、住所の記録はありません。一方、登記事項証明書には、所有者についての情報としては住所と氏名が記録されているのみです。つまり、戸籍謄本と登記事項証明書への記載事項で共通しているのは氏名のみなのですが、単に氏名が同一であるとの事実のみでは、戸籍謄本に記載されている被相続人と、登記事項証明書に記載されている不動産の所有者とが同一人物であることの証明にはなりません(ただし、地域によっては本籍と住所の表示が同じ場合もあり、この場合は戸籍謄本で被相続人と不動産の所有者が同一人物であることを証明することが可能です)。
 
 
そこで、戸籍謄本に記載されている被相続人と、登記事項証明書に記載されている不動産の所有者が同一人物であることの証明(被相続人の同一性を証する情報)に使われるものの一つが戸籍の附票の写しです(ほかに、住民票の除票があります)。
 
 
従来、戸籍の附票の写しには、そこに本籍地がある期間の氏名、本籍、住所がすべて記載されていたため、戸籍謄本に記載されている被相続人と、登記事項証明書に記載されている不動産の所有者が同一人物であることの証明ができたのですが、今回の改正で本籍が原則として表示されなくなりました。
 
 
本籍の表示のない戸籍の附票では、被相続人の同一性を証する情報としては不十分となる恐れがあり、相続登記の申請後に、法務局から本籍の表示のある戸籍の附票の写しの提供を求められる場合も考えられます。
 
 
戸籍の附票の写しを請求する際には、その目的に応じて本籍の表示の必要性を検討するとともに、本籍の表示が必要である場合には、請求時に本籍の表示を希望する旨を申し出るなどの注意が必要です。