2022/2/23

いつの間にか会社が解散されている?みなし解散とは?

登記されてはいるものの長期間にわたって企業としての活動していない会社を一般的に「休眠会社」と言います。休眠状態になってしまった事情には、経営者の高齢化や病気、怪我などの経営者自身に関することだったり、事業を再生するための時間を作るためや廃業するための準備のためなどの事業に関することだったり、様々なものがあることでしょう。
 
しかし、登記上、存在しているけれど実体のない会社が増えることは、商業登記制度に対する信頼の低下にもつながります。そのため、法務局では平成26年度から休眠会社の整理作業を行うこととしています。
 
この休眠会社の整理作業の対象とされた会社には、法務局からの通知が届きますが、そこで何もせずに放っておくと解散したものとみなされ、その登記がされてしまうことになるため注意が必要です。
 
 
 
 
 
いつの間にか会社が解散されている?みなし解散とは?
 
 
目次
1.休眠会社・休眠一般法人の整理作業
2.休眠会社等の整理作業を行う理由
3.法務大臣による公告と法務局からの通知
4.「まだ事業を廃止していない」旨の届出
5.みなし解散の登記
6.継続の登記
7.解散・清算結了の登記
8.おわりに
 
 
 
1.休眠会社・休眠一般法人の整理作業
 
 
全国の法務局では、平成26年度以降、毎年、休眠会社・休眠一般法人の整理作業を行うこととしています。
 
ここでいう休眠会社・休眠一般法人とは、以下のような法人をいいます。
 
 
①最後の登記から12年を経過している株式会社(会社法第472条の休眠会社をいい、特例有限会社は含まれません)
 
 
②最後の登記から5年を経過している一般社団法人又は一般財団法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第149条の休眠一般社団法人又は第203条の休眠一般財団法人をいい、公益社団法人又は公益財団法人を含みます。これらを併せて「休眠一般法人」といいます。)
 
これらの休眠会社又は休眠一般法人に対し、法務大臣による公告及び法務局からの通知がされ、この公告から2か月以内に事業を廃止していない旨の届出又は役員変更等の必要な登記をしない場合には、みなし解散の登記がされます。この一連の手続きを「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」といいます。
 
 
 
2.休眠会社等の整理作業を行う理由
 
 
株式会社の場合、会社法の規定により取締役の任期は、原則として2年、最長でも10年とされており、取締役の交代や重任(=同一人物が役員を継続すること)があれば、その旨の登記が必要になるため、株式会社については、取締役の任期ごと(少なくとも10年に一度)に、取締役の変更の登記がされるはずです。
 
同様に、一般社団法人及び一般財団法人の場合は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定により、一般社団法人及び一般財団法人の理事の任期は2年とされていることから、少なくとも2年に一度は理事の変更の登記がされるはずです。
 
また、上記のような取締役や理事の変更の場面に限らず、株式会社、一般社団法人又は一般財団法人は、その登記事項に変更があったときには、所定の期間にその変更の登記をすることとされています。
 
そうであるにもかかわらず、株式会社においては12年、一般社団法人又は一般財団法人においては5年の間、何らの登記をせずに放置している場合には、もはや「事業を行っていない」ものと扱われて、「みなし解散」の対象となるわけです。
 
なお、12年以内又は5年以内に登記事項証明書(会社謄本)や代表者の印鑑証明書の交付を受けていたかどうかは関係ありません。
 
 
 
3.法務大臣による公告と法務局からの通知
 
 
毎年10月頃に、法務大臣による官報公告が行われます。具体的には、休眠会社又は休眠一般法人は、2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出をせず、登記もされないときは、解散したものとみなされる旨が公告されます。
 
また、対象となる休眠会社又は休眠一般法人に対しては、管轄の法務局から、法務大臣による公告が行われた旨の通知が発送されます。
 
ここで、法務局からの通知が何らかの理由で届かない場合であっても、公告から2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出又は役員変更等の登記をしない場合には、みなし解散の登記をする手続が進められます。つまり、知らないうちに解散の登記がされてしまう可能性もあるということです。
 
 
 
4.「まだ事業を廃止していない」旨の届出
 
 
まだ事業を廃止していない休眠会社又は休眠一般法人は、公告から2か月以内に必要な登記を申請するか「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があります。
 
この「まだ事業を廃止していない」旨の届出は、法務局からの通知書を利用して、所定の事項を記載し、法務局に郵送又は持参して行います。
 
もし、法務局からの通知書を利用しない場合には、書面に次の事項を記載し、法務局に届出をしている代表者印を押印して提出します。なお、代理人によって届出をするときは、委任状を添付する必要があります。
 
①商号、本店並びに代表者の氏名及び住所(休眠会社の場合)、名称、主たる事務所並びに代表者の氏名及び住所(休眠一般法人の場合)
 
②代理人によって届出をするときは、その氏名及び住所
 
③まだ事業を廃止していない旨
 
④届出の年月日
 
⑤法務局の表示
 
ここで不備があると適式な届出として認められないことがありますので、正確に記載するようにしましょう。
 
また、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をした場合であっても、必要な登記申請を行わない限り、翌年も「休眠会社又は休眠一般法人の整理作業」の対象となるため注意が必要です。
 
 
5.みなし解散の登記
 
 
公告から2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出がなく、役員変更等の必要な登記も申請されなかった休眠会社又は休眠一般法人については、その2か月の期間が満了した時に解散したものとみなされ、登記官が職権で解散の登記をします。
 
みなし解散の登記がされると「令和〇年〇月〇日会社法第472条第1項の規定により解散」と登記記録に記録されます。
 
 
 
6.継続の登記
 
 
もし、みなし解散の登記がされてしまった場合でも、その後3年以内に限り、①解散したものとみなされた株式会社は、株主総会の特別決議によって、株式会社を継続し、②解散したものとみなされた一般社団法人又は一般財団法人は、社員総会の特別決議又は評議員会の特別決議によって、法人を継続することができます。
 
ただし、継続したときは、2週間以内に継続の登記を申請する必要があります。
 
みなし解散によって解散した場合、解散の登記後3年が経過すると事業を再開することができなくなり、清算するしかなくなってしまうため注意が必要です。
 
 
 
7.解散・清算結了の登記
 
 
もし、休眠会社等の整理作業についての通知が届いた時点で、実際には事業を行っておらず、この先も再開する予定がないため、会社を消滅させたいという場合には、清算人の選任をし、会社の清算結了登記を行うようにしましょう。
 
というのも、みなし解散の登記がされても会社がなくなるというわけではなく、法人税などの税負担は続くこととなります。完全に会社を消滅させるためには、清算結了登記が必要です。
 
なお、みなし解散後、10年が経過すると登記官が強制的に登記を閉鎖できると法律で決められていますが、これによって法人が消滅する(みなし清算)するわけではありません。
 
10年経過後でも清算結了が済んでいない旨の申告があった場合には、閉鎖された登記を復活することも可能であり、結局のところ、会社を消滅させるには、清算事務を終了させ、清算結了登記をするしかありません。
 
 
 
8.まとめ
 
 
登記すべき事由が発生した場合、2週間以内に登記を申請することが義務付けられています。しかし家族経営の法人などにおいては、あまり役員などが交代しないため、任期が到来した場合に本来必要な役員変更の決議(再任を含む)とそれに伴う変更登記を行わないケースが珍しくありません。
 
会社の登記は、安全かつ円滑な取引を目的としていますが、長期間登記がされていない株式会社、一般社団法人又は一般財団法人は、既に事業を廃止し、実体がない状態となっている可能性が高く、このような休眠状態の株式会社、一般社団法人又は一般財団法人の登記をそのままにしておくと、商業登記制度に対する国民の信頼が損なわれることになります。
 
そのため、長年に渡って登記の手続きを行わない法人に対しては、公告及び通知をすることで、その事業活動の実態を確認するための制度ができたというわけです。登記すべき事由が生じた場合に登記を怠ると、過料の制裁を受けるおそれもあります。思わぬ不利益を受ける前に会社の登記状況について把握しておくようにしましょう。
 
 
 

 
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