2022/6/12
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新しい制度!所有不動産記録証明制度とは |
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2021年(令和3年)4月に所有者不明土地の解消に向けた不動産登記法の改正法が成立し、「所有不動産記録証明制度」が新設されました。 この制度は、法務局において、ある人が所有者として記録されている不動産を一覧できるようにリスト化した書面を作成し、証明してくれるものです。 これにより、自身や被相続人が登記名義人となっている不動産をすべて把握することができるようになるため、相続した不動産についての相続登記漏れを防ぐことが期待されています。 新しい制度!所有不動産記録証明制度とは
1.所有不動産記録証明制度とは 所有不動産記録証明制度は、法務局に手数料を納付することで、特定の名義人が所有する不動産の登記内容を証明した書類の交付を請求できるというものです。 施行時期については、改正法が公布された後5年以内に施行することが決まっています。したがって2026年(令和8年)4月までに始まる予定です。 なお、そのような不動産がない場合には、その旨の証明がなされることとされています。
2.制度創設の背景 従来の不動産登記法の下では、登記記録は、土地や建物ごとに作成されており、全国の不動産から特定の者が所有権の登記名義人となっているものを網羅的に抽出し、その結果を公開する仕組みが存在していませんでした。そのため、所有権の登記名義人が死亡した場合に、その所有する不動産としてどのようなものがあるかについて、相続人が把握しきれず、見逃された土地について相続登記がされないまま放置されてしまう事態が少なからず生じているという指摘がありました。 現在の実務では、市区町村で発行される「名寄帳」を取得することで、亡くなった人が所有していた不動産を調べることはできるのですが、名寄帳には固定資産税が非課税となっている土地が出てこない場合があることや、名寄帳は市区町村ごとに作成されているため、複数の市区町村に不動産を所有している場合は、それぞれの市区町村で名寄帳の発行手続きを行う必要がある、といったことから、亡くなった人が所有している不動産をすべて把握するための方法として決して十分とはいえず、どうしても相続登記の対象から漏れてしまう可能性が残っています。 また、今回の不動産登記法の改正では「相続登記の申請義務化」も定められましたが、それに伴い、相続人において、被相続人名義の不動産を把握しやすくすることで、相続登記の申請に当たって当事者の手続的負担の軽減を図ることが求められています。 このように、相続登記漏れの防止と相続登記における手続的負担の軽減という観点から、この制度が新設されました。 3.所有不動産記録証明制度の課題 このように、所有不動産記録証明制度によって相続登記漏れの防止が期待されていますが、次のような課題もあります。 法務省の発表によりますと、証明書を申請する際には、登記名義人の氏名と住所が必要になり、その両方が一致してはじめて一覧として検索結果に表示され、証明書として発行されます。もし、結婚などで氏名が変わっていたり、転居などで住所に変更があった場合に、その情報が登記記録上に反映されていないと、検索に引っかからない可能性があることから、過去の住所等も含めて申請・検索する必要があることが予想されます。 4.所有不動産記録証明制度の交付請求が可能な者の範囲 ある特定の者が登記名義人となっている不動産を一覧的に把握するにニーズは、より広く生存中の個人のほか法人について認められるとの指摘がされていることから、これらの者についても所有不動産記録証明制度の対象としつつ、プライバシー等に配慮して請求範囲を次のとおり限定することとしています。 ①何人も、自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産について本証明書の交付請求が可能 ②相続人その他の一般承継人は、被相続人その他の被承継人に係る本証明書について交付請求可能 なお、証明書の交付請求先となる法務局については法務大臣が指定する予定であり、また、手数料の額等については政令等で定める予定となっています。 5.おわりに 実際に制度の運用が開始されてみないとその利便性などは分かりませんが、所有不動産記録証明制度を利用すれば、特定の名義人の不動産が一覧で見られることになり、財産の把握や管理が容易になります。多数の不動産を所有していたり、いろいろな場所に不動産を所有しているような場合には、非常に役に立つ制度であると思いますので、将来的に運用が開始された際には利用を検討してみるのもよいでしょう。 |
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