2022/9/3

株主の所在が分からないけど、どう扱えばよい?

株主が転居をしたにもかかわらず、会社への届出をしていない場合や、会社の株主に相続が発生したにもかかわらず、亡くなった株主の相続人が、その株式が遺産に含まれていることを把握しておらず、株主名簿の書換の請求をしていないことなどによって、所在が分からなくなってしまった株主のことを「所在不明株主」といいます。
  
 
 
株主の所在が分からないけど、どう扱えばよい?
 
 
「所在不明株主」がいる場合であっても、株主としての権利は他の株主と変わりはありません。会社が行う株主に対する通知等は株主名簿上の住所に行えば足りることになっており、また、5年以上継続して到達しない場合は、通知等は要しないとされていますが、会社が剰余金の配当等を実施した場合、配当金は原則として持参債務、つまり株主名簿に記載された住所または株主が会社に通知した場所において交付しなければならないとされているため、会社が株主に対して提供をしなければならず、株主が取りに来るまで待っているということはできません。場合によっては、供託という方法を検討する必要があることから、所在不明株主の対応には苦慮することがあるかもしれません。
 
 
所在不明株主の解消の方法としては、会社法第197条の規定により、当該株主名義の株式を競売や任意売却し、その代金を所在不明株主に交付する方法があります。しかし、この方法は、株主名簿上の住所に5年以上継続して通知等が届かないことや剰余金の配当を受領しないことが要件であり、実際にこの方法をとる場合は、そうした事実を裁判所に疎明しなければならないことから、会社においては、その疎明資料をもれなく収集・保管する必要があります。