2022/10/3

胎児も相続人になれるの?

 
 
相続する権利を得られるのは、法定相続人のうち、相続が開始した時点で存在する人である、というのが原則です。
 
それでは、相続が開始した時点では、まだこの世に生まれていない胎児については、相続は認められないのでしょうか。
 
今回は胎児の相続権について説明します。
  
 
 
 
 
胎児も相続人になれるの?
 
 
目次
1.胎児にも相続権は認められている
2.胎児名義の登記は可能?
 
 
1.胎児にも相続権は認められている
 
 
相続する権利が認められるには、被相続人が死亡したときに相続人は存在していなければならないという「同時存在の原則」というものがあります。
 
民法第3条は、「私権(民法上の権利)の享有は、出生に始まる」と定めていますので、これをそのまま解釈すれば、相続開始時にまだ母親の胎内にいる胎児には、相続する権利はないことになります。しかし、被相続人の死亡時よりも出生が早いか遅いか、という基準で相続できるかどうかが左右されるのは不公平です。そこで、民法第886条では、胎児については、「既に生まれたものとみなす」としており、胎児であっても相続する権利を認めることとされました。
 
ただし、これは胎児が生きて生まれてくることを前提としていますので、胎児が死産であった場合には適用されません。
 
(相続に関する胎児の権利能力)

第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。

2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

 
 
このように、胎児にも相続する権利は認められているものの、胎児が1人であるとは限らず、また、死産の可能性も否定できないことから、胎児を含めて遺産分割協議をすることは事実上困難であり、胎児が生まれてくるのを待って、遺産分割協議をするほうが無難であると思われます。
 
 
 
2.胎児名義の登記は可能?
 
 
例えば、被相続人である夫Aが死亡し、遺産の中に不動産がある場合において、相続人がその妻BとBの胎内にいる胎児の2人だったとします。ここで、遺産分割協議を行わず、法定相続分で相続して共有となった不動産があるときに、胎児を名義人として相続登記をすることはできるでしょうか?
 
結論を言えば胎児名義の登記は可能です。
 
ただし、出生届を提出するまで胎児には名前と住所がありません。実務においては、氏名を「亡A妻B胎児」のように記載し、住所は胎児の母親のものを記載して登記を申請します。その後胎児が出生すると、その胎児には名前がつけられますので、登記名義に書かれた「亡A妻B胎児」という便宜的につけた氏名を変更するための登記を申請しなければいけません。
 
そして、もし胎児が死産でこの世に生まれることができなかった場合、相続はなかったことになるため、胎児の登記名義はなかったものとなりますので、共有状態を変更するための登記が必要となります。