2022/11/1
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【令和5年4月1日施行】買戻特約の抹消登記が単独で可能に? |
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不動産の取引にかかわる仕事をしていると、ときどき「買戻特約」という登記がされている登記簿謄本を目にすることがあります。 この買戻特約とは、不動産の売買契約と同時にする特約のことで、あらかじめ定められた買戻期間内であれば、売主が売買代金と契約費用を買主に対して支払うことでその不動産を買い戻すことができるというものです。この買戻特約は登記をすることができ、また、その効力を失えば抹消登記を行うのですが、中には効力が失われているにもかかわらず買戻特約の登記が放置されていることがあります。 従来、買戻特約の抹消登記は、不動産の所有者と買戻特約の相手方(買戻権者)が共同して行う必要があったのですが、不動産登記法の改正によって、令和5年4月以降、一定の要件を満たした場合には買戻特約の抹消登記の手続が簡略化されることになりました。 【令和5年4月1日施行】買戻特約の抹消登記が単独で可能に?
1.買戻特約とは? 買戻特約とは、不動産の売買契約から一定期間内であれば、売主が売買代金と契約の費用を返して、その不動産を取り戻すことができるという特約のことで、売買契約と同時に交わします。 そもそもの目的は、公的な宅地造成を円滑に行うために創設された特約制度と言われています。宅地造成事業を行う住宅供給公社等から土地を譲り受けた人が「土地を転売しない」「住宅を建てる」などの約束を守ってもらうためにこの特約を付しておく、というのが主な使われ方です。 買戻が行われると一度は買主に移転した所有権を売主に戻す事ができます。先ほどの場合であれば、万が一、土地の譲受人が約束を守らなかった場合、一定期間内であれば公社等は土地を買い戻す事ができるということです。 このほかにも、借金の担保のために不動産を譲渡し、借金が返済されたら買戻す「不動産担保」を目的として買戻が利用されることもあります。メリットは、借金が返済されない場合に容易に不動産を取得できるという点なのですが、デメリットとして、所有権移転に関する税金が高額なのと、登記される内容は「売買代金及び契約費用」と定められているため、金利や損害金を登記することができないという点です。 この特約については民法第579条で定められており、買戻期間は10年が最長で、期間の更新は認められていません。もし契約で10年を超える期間を設定したとしても10年とみなされ、期間を定めなかった場合には、その期間は5年とされます。 2.買戻期間が経過しても登記は自動的に抹消されるわけではない 買戻期間が過ぎればその効力は失われるのですが、買戻特約の登記が自動的には抹消されるわけではなく、抹消登記の手続が必要です。 買戻特約の抹消登記は、不動産の所有者と買戻権者が共同して行うことが原則です。買戻権者が公団や公共団体の場合、期間が満了して買戻の効力が失われていれば抹消の手続きに協力してくれます。ただし、登記申請については各団体により取扱いが異なっており、登記申請を行ってくれるところもあれば、書類だけ発行してもらって申請は自分でしなければならないというところもあります。 買戻権者が個人の場合、任意に抹消手続きに協力してくれないということがあるかもしれませんが、その場合は訴訟で判決を取ってから抹消登記の手続きをすることになります。 3.買戻特約の抹消登記が単独で申請できる場合がある(令和5年4月1日以降) 買戻権が実体的には消滅しているにもかかわらず、その登記が抹消されることなく放置されていると、手続を行うべき当事者が不明になるなどの理由で、その抹消に手間やコストがかかる場合があることや、不動産登記法には登記義務者の所在が不明である場合における登記の抹消についての特例があるものの、手続的な負担が重いなどの理由で活用がされていない実情があるといった指摘を受けて、一定の要件を満たし場合には、買戻特約の抹消登記の手続が簡略化されることになりました。 不動産登記法の改正により、令和5年4月1日以降、契約の日から10年を経過している買戻特約の抹消登記は、不動産の所有者が単独で申請できるようになります。つまり、買戻権者に連絡して抹消登記のための書類を発行してもらうという手順が省略できることになります。 ただ、手続が簡略化されるとはいえ、抹消登記そのものが不要となるわけではありません。もし、所有している不動産に効力を失った買戻特約が登記されたままになっている場合は、できるだけ早めに抹消しておくことが望ましいでしょう。 森山司法書士事務所では、買戻特約の抹消に関するご相談・ご依頼を承っております。 どうぞお気軽にお問い合わせください。 |
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