2023/4/8

隣の土地から自分の土地まで枝が伸びてきたら勝手に切ってもいいの?

隣の土地の竹木が自分の土地にはみ出てきた場合、従来の規定では、隣地の竹木の「根」がこちらの土地に越境してきた場合には自分で切ることができますが、「枝」が越境してきた場合は自分で切ることはできず、隣の人に枝を切除させる必要がありました。
 
しかし、民法の改正により、この内容が変わり、一定の条件を満たせば、越境してきた「枝」を自分で切除することができるようになりました。
  
 
 
 
 
隣の土地から自分の土地まで枝が伸びてきたら勝手に切ってもいいの?
 
  
目次
1.改正の内容
2.費用負担
3.改正の理由
4.さいごに
 
 
1.改正の内容
 
越境された土地の所有者は、竹木の所有者に枝を切除させることができるとしたうえで、次の場合には枝を自ら切り取ることができることとしました。
 
 
(1) 竹木の所有者に切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき
 
この催告の方式について、法律上の制限はありません。ただし、後日、催告の有無について争いになることを防ぐために書面等で行うことが望ましいでしょう。竹木が共有である場合には、基本的には竹木の共有者全員に対して催告をする必要があります。
 
また、相当の期間とは、枝を切除するために必要な時間的猶予を与える趣旨であることから、基本的には2週間程度と考えられています。ただし、個別の事案によってはこの期間は変動することがあるものと思われます。
 
 
(2) 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
 
「竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」とは、基本的には、現地調査のほか、不動産登記簿や立木登記簿、住民票といった公的な記録を確認するなどして調査を尽くしても、竹木の所有者やその所在を知ることができないときをいいます。ただし、これも個々の事案により異なる場合があることには注意が必要です。
 
 
(3)急迫の事情があるとき
 
「急迫の事情」とは例えば、台風などの災害によって枝が折れ、今にも隣地に落ちてきそうなほどの危険が発生している場合等が考えられます。
 
 
 
2.費用負担
 
 
もし、越境された土地の所有者が自分で枝を切り取る場合にかかった費用については、枝の越境により土地の所有権を侵害していることや、本来竹木の所有者が負担すべき枝の切除義務を免れたことを鑑みて、基本的には竹木の所有者に請求できるものと考えられます。
 
 
 
3.改正の理由
 
 
なお、改正が行われた理由ですが、ひとことで言えば「隣の人に枝を切除させる」のが大変だからです。今までの規定によると、隣の土地の所有者が求めに応じて素直に切除してくれれば良いのですが、切除してくれない場合に強要することはできず、裁判を起こして強制執行の手続をとらなければなりません。また、仮に裁判を通じて切除できたとしても、切除した枝の部分はまた伸びてきますので、枝が越境する都度、隣の土地の所有者に枝の切除を求め、応じなければ裁判を起こす、ということを繰り返さなければならないとすれば、その手続のために相応の時間と労力、費用が必要になり現実的ではありません。
 
そのようなわけで、一定の条件を満たす場合には自分で切除できるように法が改正されたのですが、隣の土地が近年問題になっている所有者不明土地であっても、この改正によって適切に対処することが期待できるようになります。
 
なお、改正法の施行時期は、令和5年4月1日です。
 
 
 
4.さいごに
 
 
法改正により手続きが大幅に簡略化されることになりましたが、裁判所の手続を経ないことから、竹木所有者との間でトラブルが発生するリスクも伴います。実際に行動を起こす前には慎重に検討する必要があるため、やはりまずは弁護士などの専門家に相談するほうが無難でしょう。