2023/4/19

相続発生後、遺産分割協議が成立するまでの賃料は誰のもの?

被相続人が亡くなって相続が開始しても、多くの場合、葬儀や役所への届出などのいろいろな手続で慌ただしくなるため、すぐに遺産分割協議を行うことは現実的に難しく、どうしても相続開始から遺産分割協議が成立するまでの間にはタイムラグが発生してしまいます。
 
もし、被相続人が所有する不動産の中に賃貸物件があり、そこから賃料収入を得ていたような場合、相続開始後に被相続人の口座が凍結されてしまったことで賃料の振込口座を相続人の誰かに変更したり、または特定の相続人が管理してその賃料を全額受け取っていることもあるでしょう。では、この賃料収入はその後どのように取り扱うことになるのでしょうか。

 
 
 
 
 
相続発生後、遺産分割協議が成立するまでの賃料は誰のもの?
 
 
 
目次
1.共同相続人が相続分に応じて取得する
2.確定申告が必要であれば各共同相続人が行う
 
 
 
 
1.共同相続人が相続分に応じて取得する
 
 
亡くなられた方が土地や建物などの不動産を持っており、それを他人に貸して賃料収入を得ていた場合、相続開始から遺産分割協議が成立するまでの賃料収入は誰のものになるのでしょうか? 
 
相続開始から遺産分割協議が成立するまでの賃料収入については、遺産として遺産分割協議の対象となるのか否かという問題がある一方、そもそも遺産分割の効力は相続開始時にさかのぼるとされていることから、賃料収入を発生させている不動産を遺産分割によって取得した相続人が、相続開始時からその不動産を取得したことになるため、その不動産から発生していた賃料収入も取得するという考え方もできます。
 
この点につき、賃貸不動産から生じた賃料債権に関する平成17年9月8日の最高裁判例によると、相続開始から遺産分割協議が成立するまでの間に発生した賃料債権は遺産ではなく、共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、後で賃料債権を発生させている不動産について遺産分割協議が成立しても影響を受けるものではないとされています。
 
つまり、この判例に従えば、相続開始から遺産分割協議が成立するまでの賃料収入は、共同相続人の間でその相続分に応じて清算をすることになり、もしそこに争いがあるなら、最終的には訴訟手続によって解決を図ることになります。
 
ただ、この賃料収入と遺産について、それぞれ別個の手続をとるよりも、遺産分割手続の中で一回で解決できたほうが合理的であることから、実務においては、上記の判例を踏まえつつ、相続人全員が遺産分割の対象に含めることに合意した場合には遺産分割の対象にするという取扱いがなされていることもあります。
 
 
最判平成17年9月8日

「遺産は、相続人が複数あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属することであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」
 
 
 
 
2.確定申告が必要であれば各共同相続人が行う
 
 
遺産について遺産分割協議が成立していない場合、その遺産は各共同相続人が共有するものとされており、その相続財産から生ずる収入は各共同相続人にその相続分に応じて帰属するものと考えられています。
 
したがって、遺産分割協議が成立するまでは、共同相続人にその相続分に応じた賃料収入があったものとして考え、その不動産所得について確定申告が必要であれば、各相続人が所得税の確定申告をすることになります。
 
たとえ、遺産分割協議が成立するまでの間、一部の相続人が賃料収入を管理しているような場合でも取り扱いは変わりません。
 
なお、その後に遺産分割協議が成立しても、その効果は遺産分割協議成立までの収入の帰属に影響を及ぼすものではないため、遺産分割協議の成立を理由とする更正の請求または修正申告を行うことはできないことに注意が必要です(参照:国税庁:タックスアンサー No.1376 不動産所得の収入計上時期)。