2023/5/6

どんな場合に遺言書を書いておいたほうがいいの?

令和4年に全国の公証役場で作成された公正証書遺言の件数は11万1977件であり、ここ数年は10万件前後で推移しています。平成元年には4万935件でしたので、その数は倍以上になっており、少子化、高齢化社会の進行の中で、相続や遺言に対する関心が高まっていることがうかがえます。
 
しかし、どのような場合に遺言書を書いておくほうがよいのか、と言われるとなかなか具体的な場面が思いつかないかもしれません。
 
そこで今回は、遺言書を書いておく必要性が高い例を4つ挙げて説明します。
   
 
 
 
 
どんな場合に遺言書を書いておいたほうがいいの?
 
 
目次
1.夫婦に子供がいない場合
2.パートナーに財産を残したい場合
3.相続人がいない場合
4.特定の人に財産を渡したい場合
 
 
  
1.夫婦に子供がいない場合
 
 
子供がいない夫婦のどちらかが先に亡くなった場合、遺産がすべて配偶者へ渡るとは限りません。家族関係によっては、亡くなった人の親や兄弟姉妹、さらには甥や姪も相続人となり、遺産を配偶者に渡すためには、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。もし、そのような場合において、親や兄弟姉妹の中に認知症の症状がある人がいれば、遺産分割協議の手続きは非常に面倒なことになります。
  
また、兄弟姉妹の中で既に亡くなった人がいて、その人に子(亡くなった人の甥や姪)がいる場合には、その子にも相続権がありますので、遺産分割協議にはその甥や姪を含める必要があります。
 
さらに、兄弟姉妹が既に亡くなっていなかったとしても、遺産分割協議を行わないうちに亡くなってしまえば、今度は兄弟姉妹の相続人が遺産分割協議の当事者となるため、手続きを進めることがより困難となる可能性が高くなります。
 
このような事態を避け、配偶者に全財産を渡すためには遺言書を書いておく必要性が高いと言えます。
 
 
 
2.パートナーに財産を残したい場合
 
 
戸籍法上の婚姻届を提出していない夫婦、いわゆる内縁関係にある人や同性婚の当事者間には互いに相続権はありません。
 
 
遺言書を残すことで、相続人以外の人にも遺産を渡すことが可能となるため、確実にパートナーに財産を残したい場合には遺言書を書いておく必要があります。
 
 
3.相続人がいない場合
 
 
 
 
亡くなった方に相続人がおらず、遺言書も残されていなければ、遺産は行き場がなくなってしまいます。
 
そのような場合、利害関係人の請求によって、遺産の管理や借金などの負債の清算を行う「相続財産清算人」という制度があり、その相続財産清算人によって、特別な縁故がある人に遺産を渡す手続きがとられることはありますが、最終的には、遺産は国庫に帰属する、つまり国のものなります。
 
もし、特別な縁故とまではいかないものの特にお世話になった人や、慈善団体や社会福祉関係など、有意義に感じる団体に遺産を渡したいという場合には遺言書を書いておく必要があります。
 
 
 
4.特定の人に財産を渡したい場合
 
 
例えば、自分の息子の妻に身の回りの世話をしてもらっており、その妻にも遺産を渡したいと思っていても、その妻は相続人ではないため、原則として遺産を相続することはできません。相続人である息子が生きていれば、息子が遺産を相続することで遺産が渡ることはあるかもしれませんが、息子がすでに亡くなっているような場合には、その妻に遺産が渡る可能性は低いでしょう。
 
あるいは、事業や農業などを経営している場合に、事業を引き継ぐ相続人とそうでない相続人との間で遺産分割を行うと事業に必要な遺産が分割され、その後の事業経営に支障が生じる場合があります。
 
このように、世話になった息子の妻や事業の後継者など特定の人に遺産を渡したい場合には遺言書を書いておく必要があります。
 
 
以上、遺言書を書いておく必要性が高い例を4つ説明しました。当事務所では、遺言書を作成したい方のサポートも行っています。遺言書に関して気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。