2023/5/13
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相続法の歴史~何代も前の相続だと相続人の範囲や相続分が今と違う?~ |
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人が亡くなると、相続が発生します。相続人の範囲や各相続人の相続分等については、民法に定められていますが、過去において何度も法律が改正されており、その内容が現在のものとは異なる部分があります。相続の手続をする際、基本的には、相続が発生した当時の民法の規定が適用されるため、数十年も前に発生した相続については特に注意が必要です。 今回は、明治以降、現在に至るまでの法改正に伴う相続分等の変遷について説明します。 相続法の歴史~何代も前の相続だと相続人の範囲や相続分が今と違う?~
1.明治31年7月16日から昭和22年5月2日まで(旧民法) 旧民法下においては、いわゆる家制度が採用されており、家は「戸主」と戸主以外の「家族」で構成されていました。中でも戸主は、家長として、その構成員を統率する大きな権限(戸主権)を持っており、戸主と戸主以外の家族とでは相続の制度も異なっていました。 (1)家督相続(戸主の死亡・隠居等) 家督相続とは、1人の家督相続人が,前戸主の一身に専属するものを除いて、前戸主に属する一切の身分上・財産上の権利義務を包括的に承継することをいいます。 家督相続は、戸主の死亡だけでなく、隠居や国籍喪失などによっても開始されていました。 (2)遺産相続(戸主以外の家族の死亡) 遺産相続とは、戸主以外の家族の死亡によってのみ開始する相続の制度です。遺産相続が開始すると、以下の順位によって遺産相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属する一切の権利義務を承継することとなります。 家督相続とは異なり、遺産相続の開始原因は当人の死亡のみであり、また、同順位の遺産相続人が複数いるときは共同相続となります。 ・遺産相続人の順位 第1順位 直系卑属 第2順位 配偶者 第3順位 直系尊属 第4順位 戸主 2.昭和22年5月3日から昭和22年12月31日まで(応急措置法) 明治民法では、家制度を前提とする家督相続(戸主の地位及び財産の承継)を中心に相続に関する規律が編成されていましたが、戦後、日本国憲法の制定に伴い、法制全般にわたって改正作業を行いました。民法の改正についての審議も開始されましたが、この改正作業は,日本国憲法の施行までに間に合わなかったため、まず、昭和22年4月に「日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律」(応急措置法)が成立しました。
同順位の相続人が複数いる場合の各相続人の相続分は同じ(均等)ですが、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1です。 3.昭和23年1月1日から昭和37年6月30日まで 昭和22年12月に「民法の一部を改正する法律」が成立し、翌年1月1日から施行されました。
相続順位や相続分については、基本的には応急措置法時代と同じですが、兄弟姉妹の直系卑属にも代襲相続が認められるようになり、また、父母の一方を同じくする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とされました。 4.昭和37年7月1日から昭和55年12月31日まで
相続順位や相続分について変更はありませんが、この時の改正によって、代襲相続や相続の限定承認・相続放棄の制度が見直され、また、特別縁故者への分与制度が新設されました。 5.昭和56年1月1日以降
この時の改正により、配偶者の相続分が引き上げられ、また、兄弟姉妹の代襲相続はその子(被相続人から見て甥・姪)までとされました。
以上のように、戦後も相続制度はたびたび変更が行われており、相続がいつ開始されたかによって相続人の範囲やその相続分も異なる場合があることに注意が必要です。 |
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