2023/6/1

養子縁組ってどんな制度?

 
 
養子縁組というのは、血縁関係のない他人同士に法律上の親子関係を発生させる制度のことです。養子は、縁組の日から養親の子の身分を取得し、養子縁組した子は養親の実子と同じように養親の相続人となることから、相続税対策としても利用されることがある制度です。
 
 
 
 
 養子縁組ってどんな制度?
 
 
目次
1.1.養子縁組とは
2.
3.
4.
 
 
 
1.養子縁組とは
 
 
 
養子縁組は、養親と養子との間に法律上の親子関係を作り出す制度です。
 
養子縁組には、①縁組後も実の親子関係が存続する「普通養子縁組」と②縁組により実の親子関係が終了する「特別養子縁組」の2つがありますが、以下では特に断りのない限り、普通養子縁組について説明します。
 
 
特別養子縁組は、実の父母が子の養育をすることが著しく困難であるような場合に、家庭裁判所の審判によって成立しますが、特別養子縁組が成立すると、養子となる子とその実の父母等との親族関係が終了します。その結果、養子となる子と実の父母との間では、扶養義務は消滅し、相続が発生することもなくなります。
 
 
2.普通養子縁組をするためには?
 
 
普通養子縁組は、市区町村の役所への届出によって効力を生じますが、届出を提出すれば誰でも普通養子縁組が認められるわけではありません。普通養子縁組が認められるには下記の要件を満たす必要があります。
 
 
(1)普通養子縁組の要件
 
① 養親が20歳に達していること
 
② 養子となる人が、養親となる人の嫡出子、養子ではないこと
 
③ 養子となる人が養親となる人の尊属、年長者ではないこと
 
④ 後見人が被後見人を養子とする場合は、家庭裁判所の許可を得ていること
 
⑤ 配偶者のある方が未成年者を養子とする場合は、配偶者とともに縁組をすること(配偶者の嫡出子を養子とする場合は、単独で可能です。)
 
⑥ 養子、または養親となる人に配偶者がいる場合は、配偶者の同意を得ていること
 
⑦ 養子となる人が15歳未満であるときは、法定代理人が縁組の承諾をすること(法定代理人以外に養子となる人の父母で監護をすべき方がいる場合は、その同意を得ていることが必要です。)
 
⑧ 養子となる人が未成年者の場合は、家庭裁判所の許可を得ていること(自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合を除きます。)
 
 
(2)届出人・届出場所
 
養子縁組の届出人となるのは養親および養子となる人です。なお、養子になる人が15歳未満の場合は縁組の承諾をした法定代理人が届出人となります。
 
届出場所は、養親となる人、または養子となる人の本籍地または所在地の市区町村の役所です。
 
届出の際に必要なものは主に以下のとおりです。
 
① 養子縁組届書(役所に備付けの書類)
養子縁組届の証人として成人2名による証人欄への記入および署名が必要です。また、養子が15歳未満で、親権者である父母のほかに監護者がいる場合は、その方の同意の記載も必要です。
 
 
② 養親および養子となる人の戸籍謄本(全部事項証明書)
自治体によっては、本籍地がある役所に届け出る場合は不要となる場合もあります。
 
 
③ 窓口に行く人の本人確認書類
マイナンパーカード、運転免許証、パスポート等です。
 
 
④ 養子となる人が未成年者の場合、家庭裁判所の許可書の謄本
ただし、自己または配偶者の直系卑属(孫など)を養子とする場合は不要です。
 
 
⑤ 後見人が被後見人を養子とする場合、家庭裁判所の許可書の謄本
 
 
⑥ 養子または養親となる人に配偶者がいる場合、配偶者の同意書
ただし、配偶者とともに届出する場合は不要です。
 
 
(3)普通養子縁組の効果
 
普通養子縁組をすると、以下のような効果が生じます。
 
① 養親と養子は、お互いに相手を扶養する義務を負います。
 
② 原則として、養子の姓が養親の姓に変更されます。
 
③ 養親が死亡した場合は、養子は養親の相続人になります。養子の法定相続分(法律で定められている相続割合)や相続順位(相続人となる順番)は、養親の実子と同じになります。また、養子が死亡した場合に、その養子に子や孫など第1順位の相続人がいなければ、養親が養子の相続人となる。
 
 
 
3.相続税の節税効果
 
 
養子縁組によって、養子は法定相続人になります。つまり、法定相続人の数が増えますので、法定相続人の数に関係する制度の控除額や非課税枠が増額し、相続税を節税できます。ただし、子が1人もおらず、第2順位(父母や祖父母などの直系尊属)あるいは第3順位(兄弟姉妹)の相続人が法定相続人となる場合に養子縁組をすると反対に法定相続人の数が減ってしまうこともあります。また、後述するように、相続税を計算するうえで法定相続人に含めることのできる養子の数には制限もあるため、注意が必要です。
 
① 相続税の基礎控除
相続税の基礎控除とは、相続が発生した後に、相続税の申告や納税をしなくてよいとされる遺産の額の境界線です。遺産の合計額が基礎控除以下であれば相続税が課税されず、遺産の合計額が基礎控除を超える場合は、超えた分に対して相続税が課税されます。
 
相続税の基礎控除の計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。例えば、法定相続人の数が2人の場合は3,000万円+600万円×2人で4,200万円となります。相続税の基礎控除は、法定相続人の数が1人増えるごとに600万円増額します。
 
 
② 生命保険金等の非課税枠
生命保険金を受け取った場合、生命保険金に対して相続税が課税されますが、生命保険金には相続税の非課税枠というものがあります。この生命保険金等の非課税枠の計算式は「500万円×法定相続人の数」です。例えば、法定相続人の数が3人の場合は500万円×3人で1,500万円となります。生命保険金等の非課税枠は法定相続人の数が1人増えるごとに500万円増額します。
 
 
③死亡退職金等の非課税枠
死亡退職金を受け取った場合、死亡退職金に対して相続税が課税されますが、死亡退職金には相続税の非課税枠があります。死亡退職金等の非課税枠の計算式は「500万円×法定相続人の数」です。例えば、法定相続人の数が4人の場合は500万円×3人で1,500万円となります。死亡退職金等の非課税枠は法定相続人の数が1人増えごとに500万円増額します。
 
 
④法定相続人の数に含められる養子の数
ただし、法定相続人の数に含めることができる養子の数には制限があります。被相続人に実子がいる場合、法定相続人の数に含めることができる養子の数は1人までです。被相続人に実子がいない場合、法定相続人の数に含めることができる養子の数は2人までです。
 
 
 
4.養子縁組の解消(離縁)
 
 
養親と養子の合意に基づいて市区町村に協議離縁の届出をすることで、養子縁組を解消することができます。
 
また、養親又は養子は、養子縁組を継続し難い重大な事由などがあれば、家庭裁判所に離縁の訴えを提起することができます。
 
ただし、未成年の養子を離縁することは、養子の養育に重大な影響を与えるため、養子の利益に配慮して慎重に検討する必要があります。