2023/6/15

会社の資本金はいくらにするのがいい?

会社を設立する際には、様々なことを決めなければいけませんが、その1つに「資本金の額」があります。資本金とは、簡単に言うと会社の運転資金のことをいい、かつては、株式会社であれば1,000万円以上、有限会社であれば300万円以上という最低資本金の制度がありましたが、現在では、この制度はなくなっているため、極端なところ資本金1円からでも会社を設立できることになっています。
 
そうはいっても、実際に会社を設立する際には、資本金を額をどうするか迷ってしまうことも多いのではないでしょうか?
 
特に、資本金の額によって税務上・各法令上の取り扱いが異なったり、許認可や融資を受けるために一定額の資本金が必要だったりするため、資本金の額を決定する際にはこれらのことも考える必要があるでしょう。
 
今回は、資本金の額が影響する税務上・各法令上の取り扱いについて説明します。
  
 
 
 
 
会社の資本金はいくらにするのがいい?
 
 
目次
1.資本金とは?
2.資本金の額が影響する税務上・各法令上の取り扱い
3.資本金の額と許認可事業
4.まとめ
 
 
 
1.資本金とは?
 
 
資本金とは、事業を運営するために、会社に出資された金額のことです。会社が事業を運営するために資金を調達する方法としては、金融機関から融資を受ける方法もありますが、このような借入は、いつか返済しなければならないものです。これに対し「資本金」は返済の義務がなく、そのことから会社の規模や資金面での体力を判断する目安にもなります。
 
 
 
2.資本金の額が影響する税務上・各法令上の取り扱い
 
 
(1)資本金の額が300万円以上
 
会社法で債権者保護の観点から、純資産の額が300万円を下回る場合には剰余金の配当することができません。純資産の額は、ざっくりと「資本金+剰余金(会社の残った利益)」で計算することになるため、資本金を少額にしている会社は、利益が計上されても純資産が300万円になるまでは、その利益は配当することができません。したがって、配当を行うことを予定しているのであれば、資本金の額を300万円以上にしておいたほうが確実かもしれません。
 
 
(2)資本金の額が1000万円以上(消費税の課税事業者)
 
資本金の額が1000万円以上の場合、会社設立直後から消費税の納税義務が発生します。これに対して、資本金が1,000万円以下で設立された会社は、原則として設立1期目と2期目の消費税の納税義務が免除されます。ただし、2期目に関しては、1期目の前半6か月の売上が1,000万円を超え、かつ人件費(役員報酬含む)が1,000万円を超えた場合は、消費税の課税対象となります。
 
 
(3)資本金の額が1000万円超(法人住民税の均等割)
 
法人住民税 (地方税)のうち、利益に関係なくかかる税金があり、これを均等割といいます。均等割については、会社の資本金や従業員数に応じてその税額が決まりますが、資本金が1000万円以下であるか、資本金が1000万円超(1億円以下)であるかで変わってきます。
 
 
(4)資本金の額が約2145万以上(登録免許税)
 
会社の設立登記を申請する際には、登録免許税が必要となります。その計算方法は「資本金の額×7/1000」ですが、これで計算した金額が15万円に満たない場合は15万円となります。資本金の額が約2145万円以上であると、この登録免許税が15万円を超えることになります。
 
 
(5)資本金の額が1億円以上(優遇措置の適用除外)
 
資本金が1億円以下の法人については、税務上「中小企業」として取り扱われ、一定の優遇措置が適用されますが、資本金の額が1億円を超えるとそれらの優遇措置が受けられなくなります。
 
具体例
 
・法人税の軽減税率が適用されなくなる
 
・交際費等の課税の特例が適用されなくなる
 
・欠損金の繰越控除が適用されなくなる
 
・欠損金の繰戻還付が適用されなくなる
 
・その他中小企業の優遇税制が適用されなくなる
 
・法人事業税が外形標準課税になる
 
 
(6)資本金の額が5億円以上(会社法上の大会社)
 
資本金の額が5億円以上の会社は、会社法上の大会社に該当し、会計監査人(公認会計士または監査法人)の設置が義務付けられており、会計監査人を設置した場合には、会計監査人設置会社である旨及び当該会計監査人の名称を登記しなければなりません。
 
 
 
3.資本金の額と許認可事業
 
 
事業によっては国などの許認可の際に最低資本金が定められているケースがあります。例えば建設業許可であれば、許可の種類にもよりますが、500万円以上の資本金が必要であり、ほかにも有料職業紹介業であれば500万円以上、人材派遣業であれば2000万円以上(場合によっては1000万円以上又は500万以上)の資本金が必要になります。
 
 
 
4.まとめ
 
 
会社法上、資本金の最低金額についてのルールはないため、資本金の額が1円であっても設立することは可能です。ただし、一般的には資本金の額はその額が大きいほど会社の社会的な信用につながります。しかし、一定の額を超えると税務上の優遇措置が受けられなくなるなどのデメリットもあります。また、会社の事業によっては許認可を受ける必要があり、そのためには最低でも必要となる資本金の額が決められています。
 
資本金の額を決めるにあたっては、このような点を考慮したうえで決めるのがよいでしょう。
 
 
 
 

 
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