2023/7/8

貸金庫を開けるときに利用される「事実実験公正証書」とは?

亡くなった方が自筆証書遺言を作成していた場合に、金融機関の貸金庫内に遺言を保管している場合があります。
 
相続が開始した後に、貸金庫を開扉してその中身を回収する権利は、相続人全員が共有している状態になります。そのような中で、もし一部の相続人が金融機関に対して貸金庫の開扉を請求した場合、金融機関がこれに応じることは、他の相続人が有する貸金庫の中身について引渡しを受ける権利を害する侵害することとなるため、原則として許されるものではありません。
 
しかし、相続人には貸金庫の中身を把握しておく権利があります。そこで、一部の相続人から貸金庫の開扉を請求された金融機関が、その責任を回避するために利用するものとして「事実実験公正証書」というものがあります。
 
 
「事実実験公正証書」とは、公証人が公証人法35条の規定に基づいて、自ら五官を駆使し感じ取った事実内容や状況を記録する公正証書のことで、公務員である公証人が、中立公正な立場で作成した公正証書により、証拠保全の効果を得るために利用されます。
 
事実実験公正証書を利用すれば、貸金庫を開扉する時点で、その中にある物を公正証書として記録に残すことができ、相続人や金融機関を含むその他の利害関係人の間で起こりうる対立を予防することが期待できます。
 
なお、事実実験公正証書の作成には、公証人に対する費用として、公証人の立会いや公正証書作成のために必要な時間に応じて算出する費用や、立会いのための出張料などが必要となります。