2023/7/11

会社の名前はどうする?~商号を決める際に気を付けること~

会社を設立する際に決めなければならないものの一つが会社の名前である「商号」です。商号は会社の登記簿に記載される、いわば会社の顔ともいえる大切なものですので、理念を反映させたり、画数を気にしたり・・・と特別な思い入れをもって商号を決めることが多いのではないでしょうか。
 
商号は、基本的に自由に決めることができます。しかし、登記をするうえでは一定のルールがあることや、登記ができても後でトラブルに発展することもありますので注意が必要です。
 
今回は「商号」を決める際に気を付けるべきことについて解説します。
 
 
 
 
会社の名前はどうする?~商号を決める際に気を付けること~
 
  
目次
1.会社の種類を入れる
2.商号に支店や部署名を入れない
3.同一住所で同一商号の登記はできない
4.公序良俗に反する商号は使用できない
5.一定の業種については使用文字の制限がある
6.使用できない文字がある
7.登記ができても商号が使用できない場合もある
 
 
 
1.会社の種類を入れる
 
 
例えば、設立しようとする会社が株式会社である場合、商号の前か後に「株式会社」の文字を入れなければなりません。また、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を入れることはできず、例えば、設立する会社が「合同会社」である場合に「株式会社」という文字を使うことはできません。
 
 
 
2.商号に支店や部署名を入れない
 
 
「支店」「支部」「支社」など会社の一部門を表すような文字を商号に入れることはできません。
 
 
 
3.同一住所で同一商号の登記はできない
 
 
同一の住所で同一の商号を使うと、会社の区別ができなくなるので、登記をすることができません。逆をいえば、同じ住所でない限りは、同じ市町村内であっても同一商号を使用することはできるということですが、後述するように登記ができても「不正競争防止法」によって商号を使用できない場合もあるため注意が必要です。
 
 
 
4.公序良俗に反する商号は使用できない
 
 
どの程度の言葉が公序良俗に反するのかは解釈によって分かれるかもしれませんが、明らかに違法性がある言葉は、商号に使用することはできません。
 
 
 
5.一定の業種については使用文字の制限がある
 
 
銀行や信託銀行、保険会社などは、その業種を商号の中に使用しなければなりません。そして、それらの業種ではない会社が銀行や信託銀行、保険会社と言った文字を商号に使用することはできません。
 
 
 
6.使用できない文字がある
 
 
商号に使用できる文字は決まっており、「?」「!」「@」「Ⅰ・Ⅱ・Ⅲなどのローマ数字」などは、商号に使用することはできません。例えば、「!!!株式会社」や「ABC♪株式会社」は、登記することはできません。
 
なお、商号に使用できる文字は漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字のほか「&」(アンパサンド)、「’ 」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点)の6つの符号です。
 
6つの符号については商号の先頭及び末尾に使用することはできませんが、ピリオドについてはその直前にローマ字を用いた場合には、商号の末尾に用いることもできます(例:株式会社ABC.)。また、 ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り、当該単語の間を区切るために空白(スペース)を用いることができます。
 
 
 
7.登記ができても商号が使用できない場合もある
 
 
「不正競争防止法」では、他人の著名な商号と同一もしくは類似の商号を利用することを禁止しています。また、決して著名とまでは言えなくても、一定の地域では認識されている商号と同じだったり、似ている商号を使用したりすることも禁止しています。
 
会社法においても「不正の目的」をもって、誤認される恐れのある商号を使用することは禁止されており、これに違反した場合には、商号の使用を差し止められるリスクがありますが、不正競争防止法では他人の商号と混同させたり、著名な他人の商号と同一もしくは類似した商号を使用することに「不正の目的」がなくても、差止請求や損害賠償請求を受けるリスクがあります。
 
したがって、商号に有名な企業の社名やそれに似た名称を使用することは避けたほうがよいでしょう。
 
 
 
8.他社の商標は避ける
 
 
すでに商標登録がされている他社の商品やサービスと同じ名称やそれに似た名称を用いて営業を行うと、他社の商標権を侵害したことになり、損害賠償を請求されたり、商号の差止請求を受けたりすることがありますので、商号を決める時には、他社の商標として登録されていないかどうかを確認する必要があります。
 
 
 
9.おわりに
 
 
会社法が制定される前の旧商法においては、「同一市区町村内において、同一の営業のために他人が登記した商号と同一の商号を登記することができない」という規定があり、また、旧商業登記法においても、「同一市区町村内において、同一営業のために他人が登記した商号と判然区別することができない商号の登記をすることができない」という規定があったことから、会社設立時に商号を決める際には類似商号の調査が必須でした。
 
会社法が制定される際に類似商号の制度は廃止され、商号についての規制は以前に比べると緩和されましたが、それでもなお守らなければならないルールは存在します。せっかく考えた商号が登記できなかったり、登記はできたものの後で思いがけないトラブルに発展するという事態にならないよう、商号を決める際には事前に商号調査を行うなどして慎重に検討することが肝心でしょう。
 
 
 

 
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