2023/7/18

奨学金があっても個人再生はできる?連帯保証人や保証人はどうなる?

家庭の事情などにより経済的な余裕がなく、進学のために奨学金を借りたものの、思うように就職ができなかったり、就職ができてもあまり収入が得られず、奨学金の返済に苦しむ方が増えています。
 
債務整理のなかでも、個人再生をすれば、借金の大幅な減額を期待することができますが、奨学金には、通常、連帯保証人や保証人がついていることが多く、個人再生をするときには注意しなければならない点があります。
 
今回は、個人再生をすることによる奨学金の返済義務と連帯保証人や保証人に及ぶ影響について解説していきます。
 
 
 
 
 
奨学金があっても個人再生はできる?連帯保証人や保証人はどうなる?
 
 
目次
1.奨学金も個人再生の対象となる
2.「本人」の返済義務は最大で9割減額される
3.奨学金を個人再生したときに連帯保証人や保証人に生じる影響
4.奨学金を個人再生の対象から外すことはできない
5.連帯保証人や保証人が請求された場合の対応
6.まとめ
 
 
 
1.奨学金も個人再生の対象となる
 
 
奨学金の中にも「給付型」「貸与型」の奨学金があり、このうち「給付型」は返済が不要なものですので債務整理の対象とはなりません。一方、「貸与型」の奨学金は、消費者金融や銀行などからの借入と同じ「借金」であり、個人再生を含む債務整理の対象となります。
 
 
 
2.「本人」の返済義務は最大で9割減額される
 
 
個人再生では、借金の総額に応じてその返済義務が8~9割(ただし、最低でも100万円)減額されます。例えば、奨学金を含む借金総額が600万円なら、個人再生後の返済義務は120万円にまで減額させることが可能です。
 
ただし、高額な財産を所有している場合には、返済額が増額される可能性があることや、個人再生の中でも給与所得者等再生を利用した場合は、可処分所得の2年分を全額返済しなければならず、必ずしも借金総額の8~9割が減額されるとは限らないことにも注意が必要です。
 
 
 
3.奨学金を個人再生したときに連帯保証人や保証人に生じる影響
 
 
個人再生に限らず、奨学金がある場合の債務整理では、連帯保証人や保証人になっている親族への影響に注意する必要があります。
 
 
(1)保証人や連帯保証人には個人再生による減額の効果は及ばない
 
奨学金を借りた本人が個人再生をした場合、貸主(債権者)は連帯保証人や保証人に対して奨学金の返済を請求することになります。この場合において、個人再生はあくまで「本人」の返済義務を減額する効果がありますが、連帯保証人や保証人にはこの効果が及びません。そのため、奨学金の貸主は、個人再生により本人の返済義務が減額した分を連帯保証人や保証人から返済してもらうことになります。
 
 
(2)連帯保証人は全額の返済義務を負う
 
奨学金を借りる際に、連帯保証人を立てている場合、連帯保証人は奨学金を借りた本人と同一の債務を負っているため、本人が奨学金を支払えなくなった場合には、まず、残りの奨学金全額について返済を求められることになります。もっとも、個人再生後に本人が返済する分については連帯保証人が支払う必要はなくなります。たとえば、奨学金の残額が300万円あり、本人が個人再生によって100万円を返済することになった場合、連帯保証人が返済する金額は残りの200万円となります。
 
 
(3)保証人は全額の返済義務を負わない場合がある
 
保証人については連帯保証人とは異なり、「分別の利益」というものが認められています。分別の利益とは、保証人が複数いる場合に、各保証人はそれぞれ、保証人の人数で分割した債務額のみを負担するという原則のことです。例えば、連帯保証人1人と保証人1人がいる場合において、本人が奨学金を返済できなくなった場合、保証人は残額の2分の1についてのみ返済義務を負います。
 
 
この点につき、かつて日本学生支援機構は、分別の利益がある保証人が対しても残額の全額を請求していました。しかし、令和4年5月19日に、保証人が負担すべき額は分別の利益により当然に減額され、本来の負担額を超えて保証人が返済した部分は日本学生支援機構に対する過払いになるという趣旨の判決が言い渡されました。

そのため、現在、日本学生支援機構は、保証人に対しては残額の3分の1(場合によっては3分の1)しか請求しないという取り扱いに変更しています。
 
 
なお、奨学金を借りる際に「保証機関」による保証を利用する場合がありますが、この場合は、個人再生をすることにより保証機関が本人に代わって日本学生支援機構などの奨学金の貸主に対して返済を行い、以後は当該保証機関が債権者になります。つまり、保証機関が返済した分が個人再生の対象になるだけですので、この場合は、保証人への影響を気にする必要はあまりありません。
 
 
 
4.奨学金を個人再生の対象から外すことはできない
 
 
以上のように、個人再生による連帯保証人や保証人への影響は重大なものとなります。そのため、奨学金を外して個人再生をしたいと考える人がいますが、残念ながらこれは認められません。個人再生は裁判所を通して行う強制的な手続きであることから、「債権者平等の原則」が適用されるからです。
 
個人再生をするのであれば、原則としてすべての債権者を手続の対象としなければならず、もし、奨学金を外して個人再生をした場合、最悪の場合、手続が失敗するおそれがあるため注意が必要です。
 
 
 
5.連帯保証人や保証人が請求された場合の対応
 
 
個人再生をすることにより、奨学金の貸主は連帯保証人や保証人に対して一括での返済を求めることにできるようになります。その場合、保証人が一括で返済できれば問題ありませんが、現実的には一括で返済できない場合というのが少なくありません。こういったケースでは次のような対応をとることになります。
 
 
(1)話し合いによる分割払い
 
これは、連帯保証人や保証人と奨学金の貸主との間で直接話をして分割払いにしてもらう、という方法です。これまで本人が返済していたのと同じ条件で分割払いにできる場合もあります。
 
 
(2)連帯保証人や保証人も債務整理を行う
 
連帯保証人や保証人が返済できないということであれば債務整理を検討してもらう寳保もあります。任意整理、個人再生、自己破産といった手続の中から、連帯保証人や保証人の実情に合った手続で解決を図ります。
 
 
 
6.まとめ
 
 
個人再生は、借金を大幅にカットできるというメリットがありますが、実際に手続をする際には様々な注意点がありますので、個人再生を検討する際には弁護士や司法書士などの専門家のサポートを受けることをお勧めします。
 
 
 
 

 
森山司法書士事務所では、個人再生に関するご相談・ご依頼を承っております。
 
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