2023/7/23
|
|
合同会社ってどういう会社? |
|
会社には、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4種類があり、このうち合同会社は平成18年に施行された会社法により設けられた会社形態です。合同会社の設立登記は平成19年度には6076件であったものが、平成24年度には1万889件、平成29年には2万7270件と増加傾向にあり、法人を設立する際に利用される割合が高まっていると言えるかもしれません。 ところで、合同会社とはいったいどのような会社形態で、株式会社とはどのような点で異なるのでしょうか。今回は合同会社について解説します。 合同会社ってどういう会社?
1.合同会社とは (1)持分会社 会社形態を大別すると、「株式会社」と「持分会社」の2つがあり、合名会社、合資会社、合同会社を総称して持分会社といいます。所有(出資)と経営が株主と取締役に分離し、会社の意思決定機関が項目によって異なる株式会社に対し、合同会社をはじめとする持分会社は出資と経営が一体となっています。つまり、持分会社は出資者である社員自身が、経営に関する何らかの権限を持って業務を執行するという特徴があります。その背景には、「持分会社は出資者である社員間の人的信頼関係を基礎として作られた会社」であるという考え、言い換えれば各社員の個性を重視しているという考えがあります。そのため会社に何らかの責任が発生した場合には、全社員が、直接の個人責任を負うことが持分会社の原則となっています。 (2)合同会社の特徴 持分会社の一形態である合同会社には以下のような特徴があります。 ① 社員の地位は間接有限責任 合同会社の社員は、他の持分会社である合名・合資会社と異なり、会社の債権者に対して当然には連帯保証人のような直接責任を負わず、会社に対する出資義務を負うだけです。そして、全額の出資をしなければ社員となることはできないため、出資後には会社に対して何らの責任も負いません。この点は株式会社の株主と同様、間接有限責任となっています。 ② 持分単一主義 合同会社の社員の持分は、その出資額に関係なく1個であり、株式会社の持株数のように細分化されていません。また、意思決定に関しても、資本多数決(出資した金額に応じて、各出資者が有する議決権の多数によって決する)のではなく、原則として社員の頭数での多数決や社員全員の同意が中心となっています。 ③所有と経営の不分離 会社法では、「株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることはできない」と定められていますが、合同会社にはこのような規定はなく、合同会社の社員は原則として経営に携わることになり、所有(出資)と経営が分離していません。 ④ 社員の地位は一身専属的な要素が強い 持分会社である合同会社では、社員の個性が重視されていることから、その地位は一身専属的な要素が強く、社員の死亡は法定退社事由であり、その相続や合併による承継は原則として禁止されています。また、持分の譲渡によって第三者が社員になることや特定の社員が持分を増加することについても、原則として他の社員全員の同意が必要とされており、株式会社の株主とは大きく異なります。 2.株式会社と比較したときの合同会社のメリット (1)設立手続 会社を設立する際、株式会社にするか合同会社にするかを検討するうえで、合同会社には次のようなメリットがあります。 ① 定款認証が不要 会社を設立する際には、その根本規則である定款を定めなければなりませんが、株式会社の設立において、定款は設立しようとする会社の本店所在地を管轄する公証役場において、公証人の認証を受けなければ効力を生じません。また、認証を受ける際には手数料として3~5万円、認証された定款の謄本を交付してもらうために約2,000円の費用がかかります。 これに対し、合同会社の設立時の定款については、公証人の認証は必要がないため、株式会社と比べて手間と費用がかからずに済みます。ただ、定款認証には、定款の作成,存否及び記載内容の適法性等について,確実性及び明確性を確保し,これに伴う紛争と不正行為を防止するという機能があることや、公証人の認証を受ける際には、その内容について法的な見地からアドバイスを受けることもあります。合同会社を設立にする場合には、このような定款認証のメリットが受けられないことには注意が必要です。 ② 設立登記費用が抑えられる 会社の設立登記を申請する場合、法務局に登録免許税を納める必要があります。その額については、設立しようとする会社の資本金の額によって異なりますが、計算式としては「資本金の額×7/1000」となっています。ただし、この登録免許税には最低額があり、株式会社の場合は15万円、合同会社の場合は6万円となっています。 つまり、株式会社において、上記の計算式で算出した金額が15万円未満となった場合には、登録免許税は15万円となり、合同会社において上記計算式で算出した金額が6万円未満となった場合には登録免許税は6万円となります。 ③現物出資がある場合でも比較的容易に手続ができる。 会社を設立する際の出資には、金銭以外にも、自動車やPCなどの動産、土地や建物などの不動産といった現物出資をすることができますが、株式会社の場合、一定の現物出資については原則として裁判所が選任した検査役の検査等を受けなければなりません。これに対し合同会社にはこのような義務がないため現物出資があってもその手続は比較的容易になります。 (2)運営面 合同会社を運営するうえで、株式会社と比較すると次のような点でメリットがあります。 ① 決算公告が不要 株式会社は、事業年度の終了後一定の期間内に開催される株主総会が終わった後、遅滞なく貸借対照表や損益計算書といった計算書類を公告しなければならないとされています。公告の方法として多く利用されている官報に掲載する場合、最低でも7万円程度の費用がかかります。 合同会社においては決算公告の義務がないため、手間と費用が節約できます。 ②資本金または資本準備金への組入れ額の規制がない 株式会社の場合、増資のために出資等の払込みがあった場合、その額の2分の1以上を資本金として計上しなければならず、資本金として計上しなかった部分は資本準備金としなければなりません。 合同会社においてはこのような規制がなく、出資の払込みがあった場合に、全額を資本金に計上しないことも可能です。 この違いが顕著に出る場面として、例えば1000万円の増資の場合、株式会社においては最低でも500万円を資本金としなければならず、それによる増資の登記をするために登録免許税として3万5000円(資本金の増加額×7/1000、ただし最低でも3万円)が必要です。 これが合同会社の場合には、1000万円の全額を資本金には計上せず(資本剰余金に計上します)、増加する資本金の額を0円とすることも可能です。増加する資本金の額が0円であれば、登記は不要ですので登録免許税もかかりません。 また、株式会社においては剰余金の配当をする場合、一定の額を準備金として計上しなければなりませんが、合同会社においてはこのような規制もありません。 ③大会社の規制がない 株式会社には、一定の規模になり「大会社」となった場合に、会計監査人(監査法人など)の設置義務がありますが、合同会社にはこのような規制がありません。 ④任期の定めがない 株式会社の場合、取締役等の任期について定めがありますが、合同会社の場合は株式会社のような法定の任期はありません。 ⑤定款自治が広範に認められている 定款自治とは、簡単に言うと会社内部のルールを出資者の合意で自由に決められるということです。株式会社でも一定の範囲で定款自治は認められておりますが、合同会社ではより広範な定款自治が認められています。例えば、合同会社では、原則として出資をした人が業務を執行することになりますが、定款に定めることで「業務を執行する社員」と「業務を執行しない社員」とに分けることができます。この場合、業務を執行しない社員は、実質上出資のみを行い、経営には携わりません。また、出資比率と関係なく利益を配分することも定款に定めることで可能となります。しかし、これは裏を返せば、定款の内容が会社の運営に大きな影響を与えることになるため、どのように定款を作成するかを慎重に検討する必要があるとも言えます。 3.株式会社と比較したときの合同会社のデメリット 合同会社の性質上、株式会社と比較した場合に次のようなデメリットがあります。 ① 多数の人が社員となる会社には向いていない 合同会社では、定款変更等の重要な事項を決定する場合、社員の出資額に関係なく、原則として社員全員の一致が必要です。定款で別段の定めをしておくことでこうした事態を回避できるよう検討する余地はありますが、株式会社のように出資額に応じた議決権や多数決の原理が働きにくい会社であるため、基本的には社員が多数に上ることが想定される会社には向いていないと考えられます。 ② 社員の入れ替わりが頻繁に起こる場合、その手続が煩雑になる 合同会社は、社員の加入や持分の譲渡について他の社員の同意等が必要であり、また、いつでも自由に退社できるわけではありません。また、社員の氏名や名称、住所は定款に定めなければならないため、原則として、社員の変更がある都度、定款の変更手続も必要となります。 ③ 経営に携わるには出資が必要 株式会社のように所有と経営が分離している場合、株主総会によって会社の経営を行う取締役を選任することになりますが、取締役は必ずしもその会社に対して出資をしている人である必要はありません。例えば、会社の従業員が経験を積んで一定の経営判断を行う能力が備わった場合に、株主総会で承認を得てその従業員を取締役に抜擢することもあるでしょう。 しかし、合同会社の場合、出資者である社員がそのまま経営に携わる仕組みになっている以上、その経営に携わるためには出資が必要となります。 ④ 株式会社に比べて知名度が低いため社会的な信用度はやや劣る 近年、利用されることが多くなってきたとはいえ、合同会社は決算公告の義務がなく、小規模で閉鎖的な会社形態が中心なので、どうしても社会的な信用度については株式会社には及ばないところがあるかもしれません。 ただし、「アップル」(Apple Japan合同会社)や「グーグル」(Google合同会社)、「アマゾンジャパン」(アマゾンジャパン合同会社)のように世界的に有名な企業が日本国内において合同会社の形態をとっていることで、その認知度は高まっているといえるでしょう。 ⑤ 資金調達の方法が限定される 合同会社は上場することができないため、株式会社のように、株式を発行する形での資金調達ができません。短期間で事業を拡大し上場を目指す場合、合同会社は不向きかもしれません。 5.おわりに 合同会社は、いまだ認知度が十分とは言えないため対外的な取引を活発に行う会社には不向きかもしれませんが、設立コストが安く済む、会社組織がシンプルであるといったメリットもあり、これから法人を設立しようとする際に、株式会社ではなく合同会社を検討してみる価値は十分にあると言えます。会社の規模や事業内容、将来の目的などをよく考え、適した会社形態を選択するようにしましょう。 森山司法書士事務所では、合同会社の登記に関するご相談・ご依頼を承っております。 どうぞお気軽にお問い合わせください。 |
|