2023/7/30
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任意後見契約を補う手段 |
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任意後見とは、現時点ではまだ十分に判断能力のある人が、将来判断能力が低下した時のために生活のサポートをしてくれる人をあらかじめ決めておく制度です。そして、任意後見は本人の生活をサポートすることがその目的であるため、本人が死亡すると効力を失います。 つまり、以下の期間の手続については、任意後見契約を締結しただけでは関与することができない状態になります。 ① 任意後見契約の締結後、実際に判断能力が低下し契約の効力が発生するまでの間の生活のサポート ② 本人の死亡による任意後見契約終了後の事務手続等 上記の手続に関して、頼れる親族や身寄りがいれば問題はないかもしれませんが、中には、任意後見を含め生前から死後の手続について頼れる相手がおらず、不安を感じている方もいるかもしれません。 そこで、任意後見制度ではサポートが難しい期間の手続を行うために、任意後見制度と併せて「財産管理等委任契約」「見守り契約」「死後事務委任契約」といった契約を利用することがあります。 任意後見契約を補う手段
1.財産管理等委任契約 任意後見契約の効力発生時期は、本人の判断能力が低下し、任意後見監督人が選任されてからです。つまり、判断能力の低下には、任意後見契約で対応することができますが、一方で身体能力の低下には任意後見契約では対応ができないため、例えば、体が思うように動かなくなったり、銀行に行くのが億劫になったりしても、それだけでは任意後見契約に基づいて財産管理を任せることはできません。そこで、任意後見契約の効力が発生する前の段階でも生活をサポートできるように、財産管理等委任契約を締結することがあります。 任意後見契約と財産管理等委任契約の2つを結ぶことを、任意後見契約の移行型といい、本人の判断能力が十分にある段階では、財産管理等委任契約に基づいて財産を管理してもらい、判断能力が低下したときには、任意後見契約の受任者が家庭裁判所に対して任意後見監督人の選任を申し立てて、選任されたら任意後見に移行して、それまでの財産管理等委任契約を終了させます。 これにより、身体能力の低下と判断能力の低下のどちらにも対応することが可能となります。 2.見守り契約 見守り契約とは、任意後見が始まるまでの間、任意後見契約の受任者が定期的に本人と連絡をとったり、自宅へ訪問して面談するなどして、本人の健康状態や生活状況、判断能力の程度を把握することによって、任意後見の開始時期を判断するための契約です。 本人の判断能力が低下しても、任意後見監督人が選任されなければ任意後見契約の効力は発生しません。したがって、任意後見契約を締結する場合には、本人の判断能力の状態を把握してもらう必要があります。家族や親族が近くに住んでいて定期的に本人の自宅へ訪問しているのであればいいですが、本人が1人暮らしで家族や親族との交流も少ない場合には判断能力が低下したことに気づかれにくく、適切な時期に任意後見契約の効力を発生させることができないおそれがあります。見守り契約を締結しておけば、任意後見契約の受任者が本人の状況を把握して、適切な時期に任意後見監督人の選任を申し立てて任意後見に移行することが可能となります。 3.死後事務委任契約 任意後見契約は本人が生きている間の生活等のサポートを依頼するための契約であり、本人が亡くなった時には契約は終了となります。したがって、亡くなった後に発生する入院費や家賃等の支払いは、任意後見人だからといって当然にすることはできません。そこで、亡くなった後の手続を任せるために死後事務委任契約を結んでおくという方法があります。 死後事務委任契約とは、本人が亡くなった後に、死亡届の提出、葬儀の手配、医療費や公共料金などの支払などといった手続を、第三者に任せるための契約をいいます。 頼れる親族や身寄りがなく、自分が亡くなった後の手続について不安を感じるようであれば、任意後見契約と併せて死後事務委任契約を締結することも有効な方法でしょう。 なお、亡くなった後の手続に関することなので、遺言を利用することも考えられますが、遺言に死後事務に関する内容を記載しても、法律上、相手を拘束するだけの効力がないため、現実的ではありません。 |
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