2023/8/12
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予備的遺言について |
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例えば「全財産をAに相続させる」という遺言を作成した後、遺言者よりも先にAが亡くなってしまった場合、その遺言は、遺産を受け取るべき人がいないので無効とされてしまいます。もしここで、Aが先に亡くなった場合にはBに相続させるつもりでいた場合、改めて「全財産をBに相続させる」という遺言を作成しなければなりませんが、それでは、結果論とは言え先に作成した遺言が無駄になってしまいます。 そこで、遺言者より先に相続させる人が亡くなった場合に備えて、次に相続させる人を指定しておくという方法があり、それを「予備的遺言」といいます。 予備的遺言について
1.予備的遺言とは 遺言は、自分が亡くなった場合に備えてあらかじめ作成しておくものですので、遺言を作成してからその効力が発生するまでにはどうしてもタイムラグがあります。 その間、特に何も事情の変化がなければいいのですが、もしかすると遺言者よりも先に、遺産を取得させる予定の人が亡くなってしまうかもしれません。 そのような場合に備えて、遺言の中で、次の遺産を取得する人の指定をしておく方法が予備的遺言です。 2.予備的遺言が必要なケース 予備的遺言が必要なのは、次のようなケースです。 (1)遺言者と遺産を取得させる相手の年齢が近い場合 遺産を取得させる相手が、年齢の近い配偶者や兄弟姉妹などの場合のようにどちらが先に亡くなるか予想ができないケースでは予備的遺言の作成を検討する必要性が高いといえるでしょう。 例えば、遺言者が、年齢の近い妻に全財産を相続させるという遺言を作成していても、必ずしも遺言者が先に亡くなるとは限りません。そこで、妻が遺言者よりも先に、あるいは同時に亡くなった場合には、その全財産を長男に相続させるという内容も遺言書に記載しておくことで万全を期すことができます。 特に、夫婦がお互いに全財産を相手に相続させるという夫婦相互遺言を作成する場合において、どちらかが先に亡くなった後、残された方の遺言が用をなさなくなることを防ぐためには予備的遺言も同時にしておくことが望ましいでしょう。 (2)相続させる相手または遺贈する相手の健康が優れない場合 遺産を取得させる相手の年齢が離れていても、その人の健康状態に不安があり、どちらが先に亡くなるか判断が難しいというような場合には予備的遺言を作成することを検討する必要があるかもしれません。 (3)若いうちに遺言を遺す場合 若いうちに遺言を作成すると、その効力が発生するまでのタイムラグが長くなることが予想でき、その間に遺産を取得させる予定の人が先に亡くなる可能性も十分に考えられます。 その場合に備えて、ほかの人を次の候補として予備的遺言を残しておくのもよいでしょう。 3.おわりに 遺言者よりも先に遺産を取得させる人が亡くなった場合の対策としては、遺言書を作成し直すことも考えられますが、もしかするとその時には認知症になっているなどの理由で遺言を作成し直すことができないかもしれません。そのような場合に備えることができる点も予備的遺言のメリットと言えるかもしれません。 相続に対する不安や心配事をできるかぎりなくすためにも、先のことを考慮した遺言を作成することが大切です。 |
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