2023/8/15

親族はどの範囲までの人?

相続に限らず、法律の中で「親族」という言葉はよく出てきます。親族とは、血縁関係または婚姻関係によってつながりのある人たちのことを指し、「親戚」や「親類」と似たような意味で用いられることもあります。しかし、その一方で「親族」には民法上で定義された法律用語としての側面もあり、その範囲が具体的に決められています。また、その範囲を定めるにあたって、「親等」という言葉を用いて親族関係における対象者との距離の近さや遠さを表しています。
 
親族の範囲や親等について理解しておくと、相続をはじめ様々な手続をする際にも理解がスムーズになります。
 
そこで、今回は親族の範囲と親等について解説します。
 
 
 
親族はどの範囲までの人?
 
 
目次
1.親族とは
2.親等の数え方
3.親族の範囲
4.事例ごとの親族の数え方
5.おわりに
 
 
 
1.親族とは
 
 
民法上、親族に含まれる範囲の人を次のように定めています。
 
① 6親等以内の血族
② 3親等以内の姻族
③ 配偶者

ここで、血族というのは血縁関係にある人のことを指しますが、これには、生物学上の血縁(自然血族)だけでなく、養子縁組による法律上の血族(法定血族)も含まれます。
 
また、姻族とは、配偶者の血族と血族の配偶者を指します。
 
なお、配偶者には、親等が割り振られていません。親等において配偶者は血族でも姻族でもなく、本人と同列に扱われるという点に注意しておきましょう。
 
 
 
2.親等の数え方
 
 
親族は、本人を起点にして「1親等、2親等」と数えます。「親等」とは、親族関係における「世代の距離(近さ、遠さ)」を表すための法律上の単位で、この数字が小さいほど親族関係は近くなり、数字が大きくなると親族関係は遠くなります。
 
親等の数え方については、親や子などの「直系」の親族であるか、兄弟姉妹などの「傍系」の親族であるかによって注意しなければならない点があります。
 
(1)直系の親族の場合
 
祖父・親・子・孫と父祖から子孫へまっすぐつながる関係を「直系」といいますが、例えば、本人から見て親(父母)は世代が1つ離れているので「1親等」と数えます。子も同様に1つ世代離れているので「1親等」です。祖父母は、親の世代(1親等)からさらに1つ上の世代に遡りますので、「2親等」と数えます。同様に、本人から見て孫は、子よりも1つ離れた世代となるので、「2親等」となります。直系血族では、本人を起点として、1親等はもっとも小さい親等であり、もっとも世代の距離が近いことを示しています。
 
祖父母は、親の世代(1親等)からさらに1つ上の世代に遡りますので、「2親等」と数えます。同様に、本人から見て孫は、子よりも1つ離れた世代となるので、「2親等」となります。
 
本人から見た曾祖父母は3親等、同様に、曾孫も3親等です。
 
 
(2)傍系の場合
 
兄弟姉妹・叔父や叔母など、同一の祖先(例えば、兄弟姉妹の場合は「親」)を通じてつながる関係を「傍系」といい、法律上、傍系の親族を数える場合は、いったん同一の祖先(親世代)までさかのぼり、それから下に降りて数えるということになっています。
 
したがって、本人から見て兄弟姉妹は、いったん1つ前の親世代までさかのぼり、それから1つ下に降りるという「1親等+1親等」の経路を辿ることになるため、2親等となります。同様に、本人から見て叔父や叔母は、同一の祖先である祖父母世代までさかのぼり、それから1つ下に降りるという2親等+1親等の経路を辿ることになるため、3親等となります。
 
兄弟姉妹については、本人と同じ世代であるため、つい1親等と考えられがちですが、法律上では「2親等」として数えることに注意しましょう。
 
 
 
3.親族の範囲
 
 
以上の点を踏まえた親族の範囲は以下の図のようになります。
 
 
(1)血族の親等
 
血族の親等は以下のようになります。
 
① 1親等

父母・子
 
② 2親等

祖父母・孫・兄弟姉妹
 
③ 3親等

曾祖父母・曾孫・叔父叔母/伯父伯母・甥姪
 
④ 4親等

高祖父母・玄孫・祖父母の兄弟姉妹・いとこ・甥姪の子
 
⑤ 5親等

五世の祖父母・来孫・曾祖父母の兄弟姉妹・祖父母の甥姪・いとこの子・甥姪の孫
 
⑥ 6親等

六世の祖父母・昆孫・高祖父母の兄弟姉妹・曾祖父母の甥姪・祖父母の甥姪の子
 
 
(2)姻族の親等
 
姻族の親等は以下のようになります。
 
① 1親等

義父母・子の妻
 
② 2親等

義祖父母・義兄弟姉妹・孫の妻・兄弟姉妹の妻
 
③ 3親等

義甥姪・義叔父叔母/伯父伯母・曾孫の妻・甥姪の妻・叔父叔母/伯父伯母の妻
 
 
 
4.事例ごとの親族の数え方
 
 
家族の状況はそれぞれですので、中には親族に含まれるのかどうか判断に迷うケースがあるかと思います。以下、そのようなイレギュラーなケースについて親族の数え方を紹介します。
 
① 離婚した元配偶者同士

離婚して婚姻関係がなくなりますので、親族には含まれず親等は割り当てられません。
 
② 内縁の妻と夫

婚姻関係のない男女は、法律上親族にならず、親等も割り当てられません。
 
③ 離婚した親子

離婚や親権は、親等とは関係がないため、親が離婚したとしても、親子は1親等となります。
 
④ 養親と養子

養子に血の繋がりはありませんが、養子縁組をした場合には法律上の親子関係が成立しますので、通常の親等と同じ数え方をします。したがって、養親と養子は1親等となり、もし養親に実子がいる場合における養子と実子は2親等となります。
なお、養親と養子の実親は、血族にも姻族にもなりませんので、親等は割り当てられません。
 
⑤ 再婚相手の連れ子

本人が再婚した場合において再婚相手に連れ子がいた場合、その連れ子は本人からみて1親等です。なお、連れ子と養子縁組をしていない場合は姻族、養子縁組をした場合は血族となります。
 
また、本人にも連れ子がいた場合、連れ子同士は、血族にも姻族にも該当せず、親等は割り当てられません。ただし、養子縁組をした場合、連れ子同士は法定血族になるので2親等になります。
 
⑥ 未婚の男女の間に生まれた子と母

未婚の男女から生まれた子ども(非嫡出子)であっても、母と子は1親等となります
 
⑦ 父母が異なる兄弟姉妹同士

異母兄弟姉妹、異父兄弟姉妹同士も通常の数え方と同じですので2親等となります。
 
 

5.おわりに
 
 
親等の数え方や、親族の範囲がどこまでなのかということは、普段の生活で必要になることはほとんどなく、細かい部分まで知っておく必要性はあまりないかもしれません。ただ、例えば、成年後見人をつけるための後見開始の申立をすることができる人として「4親等内の親族」が含まれていたり(民法第7条)、扶養義務が及ぶ可能性がある親族の範囲が「3親等内の親族」(民法第877条2項)とされていたり、ほかにも3親等内の傍系血族の間では婚姻することができないと定められているなど(民法734条)、様々な場面で親族の範囲や親等について問題となる場合があります。
 
そのような場合に備えて、親族の範囲や親等の数え方について知っておくことも決して無駄ではないでしょう。
 
ただ、イレギュラーなケースにおいては、親等が割り当てられるのかどうかの判断に迷うことがあるかもしれませんので、少しでも不安のある方は専門家に相談してみるのもよいでしょう。