2023/8/19
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認知された子の戸籍はどうなる? |
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遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、誰か一人でも遺産分割協議に参加していなければその協議は無効です。したがって、相続人が誰なのかを確定する作業というのは非常に重要です。 相続人を確定するには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を確認することになりますが、この際に注意しなければならないのは「認知された子」は父の戸籍には入らないということです。 認知された子の戸籍はどうなる?
1.認知された子は相続人となる 法律上の夫婦関係のない男女の間に生まれた子(婚外子、非嫡出子)は、母が出生届を出すことにより、母の戸籍に入ります。 その際、母が戸籍の筆頭者でない場合(親の戸籍に入っている、など)には、分籍して母を筆頭者とする戸籍が新たに作られ、その戸籍に母と子が入ります。 そして、母の戸籍に入った子についてですが、「父」の欄は空欄になっています。というのも、母が出生届を出しても、それだけでは父との間に法律上の親子関係が生じることはないからです。つまり、血のつながった実の父であっても、その父から扶養を受けたり、相続をする権利はありません。 法律上の父子関係を成立させるためには、父が子を認知する必要があり、認知は出生のときにさかのぼってその効力を生じるとされていますので、認知された子は父が亡くなったときは、その相続人となります。このことは、父の死亡後に認知されることになったとしても変わりはありません。 なお、その相続分について、過去には非嫡出子の法定相続分は嫡出子の半分の2分の1とする規定がありましたが、平成25年9月4日付の最高裁の決定によりその民法の規定が違憲である判断がなされ、その規定が撤廃されており、現在では嫡出子と非嫡出子とでその相続分に変わりはありません。 ちなみに、母子関係については分娩により当然に生ずるとされており、法律上の親子関係を成立させるために認知をする必要はありません。 2.婚外子(非嫡出子)を認知した父の戸籍はどうなる? 認知には、父が市区町村に認知届を出すことによっておこなう任意認知と、子の側から認知を求める調停などを家庭裁判所へ申し立てることによる強制認知とがあります。いずれの方法によっても、市町村に認知届が受理されることで、法律上の父子関係が成立します。 ただし、父に認知されたからといって、それにより父の姓を名乗れるようになったり、父の戸籍に入るわけではありません。 まず、子を認知した場合には、父の戸籍に「〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 ○○○○同籍△△△△を認知届出」のような記載がされます。コンピュータ化されている戸籍では、父の戸籍の身分事項欄に次のように認知事項が追加され、認知した子がいることは戸籍から読み取ることができます。 身分事項 認知 認知日 令和〇年〇月〇日 認知した子の氏名 △△△△ 認知した子の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 〇〇〇〇 3.認知された子の戸籍はどうなる? 父に認知されると、それまでは空欄だった子の戸籍の「父」の欄に父の氏名が載ります。そして、身分事項欄には「認知日」「認知者氏名」「認知者の戸籍」などが記載されます。 4.父の戸籍から子を認知した事実が消えてしまう場合がある 子を認知した場合には、父の戸籍にその事実が記載されますが、その後に本籍地を移したり、また、改製などの理由によって父の戸籍が新たに作られた場合、新たな戸籍では子を認知した事実についての記載が省略されてしまいます。 したがって、現在の戸籍だけでは認知した子がいるかどうかが判明しないこともあるので、認知した子の有無を確認するためには、古い戸籍(除籍、改製原戸籍)をさかのぼって逐一確認する必要があります。 5.父の姓を名乗り、父の戸籍に入るには? 認知された子が、父の姓を名乗り、父の戸籍に入るには、家庭裁判所へ「子の氏の変更許可申立」をし、その許可審判書謄本を付けて市町村へ入籍届をします。この入籍届が受理されることで、子は母の戸籍から除籍され、父の戸籍に入ります。 6.認知された子がいる場合の遺産分割協議 認知された子は父の相続人となりますので、その存在を無視して遺産分割協議をしても原則として、それは無効です。ただし、父の死亡後に認知によって子が相続人になった場合で、遺産分割が既に終わっているときは、遺産分割は有効とされます。この場合、相続人になった子は、遺産分割協議のやり直しを求めることはできませんが、自己の相続分に相当する金額の支払いを、他の相続人に対し、請求することができます。 7.おわりに 相続人が誰かを確認する際に、認知された子がいる場合、父の戸籍に入っていれば比較的容易に把握できると思いますが、父の戸籍に入っていない場合は、認知した事実が記載されているだけになりますので、うっかり見逃してしまう可能性もあります。せっかくまとまった遺産分割協議をまたやり直しせずに済むよう、相続人の確定作業は慎重に行いましょう。 |
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