2023/9/12

3ヶ月経過後の相続放棄はできる?できない?

相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に行わなければなりません。ただ、3ヶ月が経過したら絶対に認められないというわけではなく、一定の事情が認められる場合には3ヶ月を経過した後の相続放棄も認められることがあります。 
 
 
 
3ヶ月経過後の相続放棄はできる?できない?
 
 
目次
1.特別な事情があれば、3ヶ月経過後の相続放棄も可能
2.ケース①督促などによって、はじめて死亡の事実や相続があったことを知った場合
3.ケース②遺産はないと思って特に相続の手続をしないでいたら3ヶ月経過後に督促があった場合
4.おわりに
 
 
 
1.特別な事情があれば、3ヶ月経過後の相続放棄も可能
 
 
被相続人に多額の借金があることが分かっている場合や、死亡後に債権者から請求が届いたりすることで借金の存在が分かれば、すぐに相続放棄をすることで問題を解決することもできますが、中には、被相続人の死亡後3ヶ月以上が経過してから、突然、相続人に対して多額の遅延損害金を上乗せした請求が届くこともあります。請求してくるのは、もともとの借入を行った債権者ではなく、債権者から債権譲渡を受けたという業者であったり、債権回収業務の委託を受けた債権回収業者や法律事務所などのような場合もあります。
経過した期間によっては、消滅時効を援用することで解決できる場合もありますが、特別な事情が認められる場合には、3ヶ月経過後の相続放棄も認められることがあります。
 
 
2.ケース①督促などによって、はじめて死亡の事実や相続があったことを知った場合
 
 
例えば、長い間連絡をとっていなかった父の借金についての督促状が届いたことで、そこで初めて父が3年前に死亡していることを知った場合、死亡してから3年は経過しているものの、「自己のために相続の開始相続があったことを知ったとき」は督促状が届いたときですので、この後3ヶ月以内であれば、原則どおり相続放棄をすることができます。
 
もっとも、一般的に親子間では、死亡時にその事実や自己のために相続の開始があったことを知ることになると考えられるため、被相続人の死亡後3ヶ月を経過した後に相続放棄をする場合には、その具体的な理由や事情を家庭裁判所に説明して認めてもらう必要があります。
 
 
3.ケース②遺産はないと思って特に相続の手続をしないでいたら3ヶ月経過後に督促があった場合
 
 
また、父の死亡の事実や自己のために相続の開始があったことを知ってはいたものの、借金の存在を知らなかったために特に何も手続をしなかったところ、3年が経ってから父の借金についての督促状が届くということがあるかもしれません。この場合、父の死亡の事実や自己のために相続の開始があったことを知ってから3ヶ月が経過していますので、原則どおりに考えると相続放棄をすることはできなくなります。
 
しかし、特に相続するような財産がなかったので、相続放棄を含めた何らの手続もしなかっただけなのに、3ヶ月が経過してからの請求で初めて借金の存在を知ったような場合に、3ヶ月が経過していることを理由に相続放棄を認めないとするのはあまりにも不合理です。
 
この点、判例は「3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められる場合」には、相続放棄ができる3ヶ月の期間は、相続人が「相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。」としています。
 
つまり、父の死亡の事実を知り、自己のために相続の開始相続があったことを知ってから3ヶ月が経った場合でも、上記の判例に該当するような具体的な理由や事情などの特別な事情が考慮されれば、3ヶ月の起算点が延びることで相続放棄をできる可能性がでてきます。
 
 
 
4.おわりに
 
 
以上のように、3ヶ月が経った後でも相続放棄が認められる可能性は十分にありますので、諦める必要はありません。もっとも、3ヶ月が経過した場合の相続放棄は、原則どおりの相続放棄よりも遥かにハードルは高くなりますので、手続に不安のある方は専門家へ依頼をするほうがよいかもしれません。
 
なお、注意しなければならないこととして、相続が開始した後に、単純承認となるような行為をした相続人については、借金の存在を知ったのが3ヶ月を経った後である場合はもちろん、たとえ3カ月以内であったとしても、もはや相続放棄をすることはできなくなります。
 
相続の開始後、借金はないものと思って被相続人の銀行口座の相続手続をしたり、遺産分割をしたものの、後になって多額の借金の存在が分かったからといって、やっぱり相続放棄をするということにはできないことは認識しておきましょう。
 
 
 

 
森山司法書士事務所では、3ヶ月を経過した場合の相続放棄に関するご相談・ご依頼も承っております。
 
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