2023/9/17

血がつながっていても無条件には取れない!兄弟姉妹の戸籍の取得方法について

相続手続で必ずと言っていいほど取得しなければならい戸籍ですが、例えば自分の親の戸籍を役所の窓口で取得しようとする場合、親からの委任状など特別な書類は必要ありません(そもそも、本人が亡くなっている場合は、委任状をもらうことはできませんが)。ところが、自分の兄弟姉妹の戸籍を取得しようとするときには注意が必要です。
 
実は、兄弟姉妹の戸籍を取得することは、全く関係のない他人の戸籍を取得することと同じ取り扱いになっています。これは「第三者請求」と言われており、いくら血のつながった兄弟姉妹であってもその戸籍でも無条件に取得できるわけではありません。
 
今回は、兄弟姉妹の戸籍が必要になった時の取得方法について説明します。
 
 
 
血がつながっていても無条件には取れない!兄弟姉妹の戸籍の取得方法について
 
 
目次
1.戸籍を請求できる人の範囲
2.兄弟姉妹の戸籍の取得方法
3.おわりに
 
 
 
1.戸籍を請求できる人の範囲
 
 
戸籍や除籍等を請求できるのは、原則として、戸籍に記載されている本人やその配偶者及び直系血族(祖父母や父母、子や孫など)のみとされています(なお、実際に取得する際には配偶者や直系血族であることを証明できる戸籍等の提示が必要な場合があります)。
 
これを、細かく分けると、戸籍等を請求できる人の範囲は
 
①戸籍に記載されている人(請求の対象者本人)
 
②(戸籍に記載されている人の)配偶者
 
③(戸籍に記載されている人の)直系尊属(父母、祖父母など)
 
④(戸籍に記載されている人の)直系卑属(子、孫など)
 
ということになります。
 
 
2.兄弟姉妹の戸籍の取得方法
 
 
ここで、例えば、兄が亡くなった場合において、子がおらず、両親や祖父母もすでに亡くなっているため、弟が相続人となるときに、相続手続のために兄の戸籍等を取得しようとする場面を考えてみます。
 
 
(1)兄が結婚したことがなく、亡くなるまで親の戸籍に入っていた場合
 
通常、戸籍には両親と未婚の子の情報が記録されています。そのため、兄が亡くなるまで結婚したことがない場合には親の戸籍に記録されている可能性が高く、その場合は、上記④の立場で親の戸籍を請求すれば、兄の戸籍も取得できることになります。
 
もし、弟も結婚したことがなければ、自分の戸籍を取得することで兄の戸籍も同時に取得することになります。この場合は、上記①の立場で自分の戸籍を取得すればよいでしょう。
 
また、自分が既に結婚している場合でも、過去の自分の戸籍を取得すれば、そこには親と兄が記録されています。もし、その後に転籍などで戸籍が新しくなっている場合には、上記④の立場で親の戸籍を追いかけていけば、兄の戸籍も取得できることになります。
 
 
(2)兄が結婚している場合
 
兄が結婚している場合には、両親の戸籍から抜けて新しい戸籍が作られているため、取得する手続が少し面倒になることがあります。
 
もし、兄が生きている場合であれば、兄から委任状をもらえれば戸籍の取得は簡単ですが、兄が亡くなった後の相続手続で必要な場合には、当然、兄から委任状をもらうことはできません。それでも、兄の配偶者に上記②の立場で取得してもらうか、または、兄の配偶者から委任状をもらえば問題はありません。
 
問題は、兄の配偶者もすでに亡くなられているような場合です。この場合、兄の戸籍を請求できる範囲の人が存在しないことになります。
 
このときに、決して兄の戸籍を取得できないわけではありませんが、血のつながった兄であるにもかかわらず、無関係な他人の戸籍を取得するのと同様の手続を経なければなりません。
 
これを「第三者による戸籍謄本等の請求(第三者請求)」といいますが、この方法で戸籍を取得するには、必要な資料を提出して正当な利用目的を証明する必要があります。
 
相続手続のために戸籍が必要というのも、この正当な理由にあたりますので、その具体的な内容とそれを裏付ける資料を提示して、兄の戸籍を取得することになります。
 
① 正当な理由は明確にする

戸籍の第三者請求をする場合、その理由を明確に請求書に記載する必要があります。その際、「相続のため」といった抽象的な理由ではなく、「相続によってどのような手続をするために戸籍が必要なのか」を具体的に記載する必要があることに注意しましょう。
 
相続手続に関することであれば、以下のような手続があるでしょう。
・遺産分割協議のため法定相続人を確定する必要がある
・不動産などの相続手続きをする必要がある
・故人名義の銀行口座の解約、名義変更をする必要がある
 
あとは、これを具体的な事実にあてはめて、以下のように記載します。
 
「私、〇〇の兄である△△が令和○○年○月○日に亡くなり、遺産相続が発生しました。
相続人間で遺産分割協議をするにあたり、被相続人△△の法定相続人全員を確定するため、私の兄である△△の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。
また、遺産分割協議後、被相続人の遺産である不動産の相続登記のため、○○法務局○○支局に添付書類として戸籍を提出する必要があります。」
 
② 請求を裏付ける資料

①で提示した正当な理由を裏付ける資料としては、戸籍を請求する弟の戸籍のほか、親の死亡及び兄弟の関係を証明するための親の戸籍謄本などが考えられます。もし、窓口で戸籍を請求する際にうまく説明することができないかもしれないと不安な場合は、これに加えて、相続関係図を添付するのもよいでしょう。
 
 
3.おわりに
 
 
以上が、自分で兄弟姉妹の戸籍を取得する方法です。兄弟姉妹については無条件で戸籍を取得することはできませんが、相続手続のためであれば取得することは可能です。
 
なお、司法書士には、相続登記等の手続をするために必要な戸籍等について、職権で戸籍等を取得することが可能です(あくまでも、ご依頼をいただいた手続に必要な範囲でしか取得できず、無条件で取得できるわけではありません)。
 
つまり、戸籍謄本の取得から登記手続までをすべて丸投げすることもできるということです。特に、兄弟姉妹が相続人になる場合は必然的に集める戸籍も多くなるため、時間がない方や自分で手続をすることに不安のある方は、時間や手間を省くために最初から手続を依頼することを検討してもよいかもしれません。