2023/10/28
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遺産分割協議や相続登記をやり直すことはできる? |
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Q 被相続人Aの死亡後、相続人であるBとCとの間で、甲土地をBが、乙土地をCがそれぞれ取得するという内容の遺産分割協議が成立し、その内容に従って相続登記も済ませました。ところが、あとになって遺産について勘違いをしていたことに気づいたので、やっぱり前の遺産分割協議を白紙に戻して、相続登記も抹消したうえで改めて遺産分割協議をやり直したいのですが、可能でしょうか? 遺産分割協議や相続登記をやり直すことはできる?
1.遺産分割協議のやり直しは可能? 一度、遺産分割協議が成立した後に、何らかの理由で遺産分割協議をやり直したいと思うことがあるかもしれませんが、いったん相続人の全員で合意が成立した遺産分割協議は、原則として、やり直すことはできません。 ただし、次のような場合には、やり直しが認められています。 (1)相続人全員が遺産分割協議のやり直しに賛成している場合 一度成立した遺産分割協議でも、相続人全員の合意があれば遺産分割のやり直しができることになります。遺産分割協議の解除といわれ、白紙の状態に戻ります。 (2)成立した遺産分割協議に法的に無効または取消しの原因が認められる場合 例えば、当初の遺産分割協議において次のような事情がある場合です。 ① 相続人の一部が参加していなかった ② 他の相続人や第三者から騙されていた、脅されていた、など ③ 一部の相続人が財産を隠していた このような場合には、当初の遺産分割協議の無効または取消しを理由として、遺産分割協議のやり直しが認められる可能性があります。 2.合意による遺産分割協議のやり直しをする場合の注意点 上述のように、相続人全員の合意があれば遺産分割のやり直しは可能ですが、だからといって気軽に行うと、思わぬ落とし穴があるため注意が必要です。 (1)贈与税、譲渡所得税などの負担が生じる場合がある 税法上、遺産分割協議のやり直しは、いったん確定した資産が移転したものとみなされます。 つまり、遺産分割協議に基づいて、すでに相続税の申告を行っていたり、各種の名義変更を行っている場合には、当初の遺産分割協議が成立していることを意味するため、その後のやり直しは、相続人間での贈与や譲渡と解され、相続税とは別に、新たな課税関係が生じることになるということです。 例えば、当初の遺産分割協議により相続人Aが相続した財産を、遺産分割協議のやり直しによって相続人Bが相続することにした場合において、BがAに対価を支払っているならば「譲渡所得税」が、対価を支払っていないならば「贈与税」が課せられます。 (2)不動産登記のやり直しが必要になる場合もある 通常、遺産のなかに土地・家屋などの不動産がある場合には、相続による不動産の名義変更(相続登記)を行います。 すでに当初の遺産分割協議の内容に従って相続登記が済ませている場合、やり直した遺産分割協議の内容に従って新たな名義人への相続登記をするには、いったん当初の相続登記を抹消したうえで、やり直した遺産分割協議の内容に従って相続登記を行うことになり、そして、このような登記を行う過程で登録免許税の負担が生じることになります。 そのほか、不動産取得税の負担が生じる場合もあります。 (3)遺産が第三者に渡ると取り戻せない場合がある 当初の遺産分割協議で相続人の一人が相続した財産を、すでに相続人以外の第三者に渡してしまっていた場合、その第三者の権利が優先されるため、遺産分割協議をやり直してもその財産を取り戻すことはできません。 例えば、遺産分割により相続人Aが取得し、相続登記も済んでいる不動産を第三者であるBに売却し、その登記も済んでいるとします。この場合には、登記をしたBの権利が保護されるため、遺産分割協議をやり直したとしても、Bから不動産を取り戻すことはできません。 3.おわりに 遺産分割のやり直しやそれに伴う相続登記のやり直しは可能ではあるものの、新たに贈与税又は譲渡所得税のほか、遺産の中に不動産が含まれている場合には、不動産取得税、登録免許税等の負担が生じることになります。 安易に遺産分割協議をやり直したために思わぬトラブルに陥ったりしないよう、遺産分割協議は1度で終わらせるようにしましょう。 そのためにも、もし、気になることや分からないことがあれば専門家のアドバイスを受けながら、相続人全員でしっかり話し合うことが大切です。 |
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