2023/11/18
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登記識別情報(登記済証)を提供できない場合の方法~本人確認情報~ |
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登記識別情報または登記済証を提供・提出すべきとされている登記の申請において、その登記識別情報(登記済証)を提供することができない正当な理由があるときは、法務局から登記義務者に対し、「申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると考えるときは、法務省令で定める一定期間(原則として2週間)内にその旨の申し出をすべき旨」を通知することとされておち、これを「事前通知」といいますが、もし登記義務者より事前通知に対する申出が期間内にされないときは、申請が却下されることとなります。 つまり、「事前通知」では登記義務者の協力がないと、法務局で登記の処理が進まなかったり、あるいは登記の申請が却下されるおそれがあり、非常に不安定な状態に陥ってしまいます。 そこで、この事前通知に代わる方法として「資格者代理人による本人確認情報」を提供する方法が用いられることがあります。 登記識別情報(登記済証)がない場合の方法~本人確認情報~
1.資格者代理人による本人確認情報とは 資格者代理人による本人確認情報の提供の制度とは,登記識別情報または登記済証を提供・提出すべきとされている登記の申請において登記識別情報または登記済証を法務局に提供することができない場合に,司法書士等の資格者代理人が本人確認情報を提供し,法務局の登記官が提供された情報の内容を適正なものと認めたときは,事前通知の手続を省略することができるというものです。 事前通知の制度を利用する方法でも登記を申請することは可能ですが、例えば不動産の売買においては、買主が代金を支払ったにもかかわらず、事前通知が何らかの理由で滞ることによって登記が完了せず売主の名義のままになってしまうというリスクがあります。そのため、親族間での贈与などの特殊な事情がある場合を除いては、事前通知は利用されていないのが実情です。 一般的な不動産売買や金融機関の融資に伴う抵当権の設定などの場面では、司法書士による本人確認情報の提供によることがほとんどと言ってよいでしょう。 2.本人確認情報の作成の流れ 本人確認情報を作成するには、その登記を申請する司法書士が、登記識別情報または登記済証を提供できない人(不動産売買における売主などの登記義務者)と実際に面談をしたうえで本人であることを確認し、そのうえで本人が当該不動産の正当な権利者であることを確認します。 こうして確認した事項をもとに本人確認情報を作成し、登記識別情報また登記済証に代えて法務局に提供します。 なお、ここで作成した本人確認情報については、あくまで、その時の登記申請において登記識別情報または登記済証に代わるものになりますが、その後にまた別の登記を申請する際には、改めて本人確認情報を作成する必要があることには注意が必要です。 3.本人確認のための必要書類 本人確認情報を作成する際には申請者本人であることを確認するため、下記の書類が必要となります。 (1)1点以上の提示が必要な書類 ・運転免許証 ・運転経歴証明書 ・パスポート(※2020年2月3日以前に発給申請したもの) ・住民基本台帳カード(※顔写真付のもの) ・マイナンバーカード(個人番号カード) ・外国人登録証明書 など (2)2点以上の提示が必要な書類 ・被保険証(健康保険/国民健康保険/後期高齢者医療保険/介護保険など) ・国民年金手帳 ・共済組合員証 ・共済年金、恩給等の証書 ・国民年金、厚生年金保険、船員保険に係る年金証書 など (3)登記を申請する不動産の所有者であることが確認できる書類 ・購入時の売買契約書、重要事項証明書、領収書 ・新築時の請負契約書、建築確認通知書、検査済証、領収書 ・固定資産税納付通知書・領収書 ・納税証明書 ・電気・水道・ガスなどの公共料金の納付済領収書 など 4.おわりに 登記識別情報または登記済証がない場合、「資格者代理人による本人確認情報」の提供制度を利用すれば、事前通知のリスクを回避して登記を完了させることができるという点で、不動産取引の安全が確保されることにつながります。 とはいえ、司法書士にとって本人確認情報の作成は非常に重い責任を伴うため、作成にかかる費用が比較的高額になる場合がほとんどです。 登記識別情報または登記済証は再発行することはできませんが、登記識別情報または登記済証がなければ不動産登記ができないというわけではありません。しかし、本人確認情報を利用して登記を申請するということになれば、費用や手続の面で負担になってしまいますので、紛失したりしないよう厳重に管理するようにしましょう。 |
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