2024/1/13

土地の価格について-「一物四価」とは-

売買や贈与、相続を原因として名義変更(所有権移転)の登記を申請する際には、登録免許税という税金を法務局に納める必要があり、登録免許税は土地の「価格」に税率を掛けて計算します。
 
例えば、価格が1000万円の土地について、相続を原因とする所有権移転登記をする場合、1000万円に0.4%の税率を掛けた4万円が登録免許税の額になり、同じ価格の土地であっても、贈与を原因とする所有権移転登記をする場合の税率は2%であるため、登録免許税の額は20万円になります。つまり、登記にかかる費用は土地の価格や登記の原因によって左右されるというわけです。
 
ところで、ひと言で「土地の価格」と言っても、実は土地の価格は一律に決まっているものではなく、状況に応じて変わってくることをご存じでしょうか?
 
今回は、土地の価格について解説します。
 
 
 
土地の価格について-「一物四価」とは-
 
 
目次
1.土地の価格は一律には決まっていない
2.時価(実勢価格) 
3.公示地価(公示価格)
4.相続税評価額(路線価)
5.固定資産税評価額
6.おわりに
 
 
 
1.土地の価格は一律には決まっていない
 
 
一般的に、土地の価格は4種類あると言われています。具体的には①時価(実勢価格)②公示地価(公示価格)③相続税評価額(路線価)④固定資産税評価額の4つがあり、「一」つの土地(物)に「四」つの「価」格があることから、「一物四価」と言われることがあります。
 
 
 
2.時価(実勢価格) 
 
 
時価(実勢価格)は、一般的に売買などで取引されるときの金額です。不動産業者に仲介を依頼し、第三者から土地を購入するような場合はこの金額となります。
 
他の3つの価格と比べた場合、一番高い金額になることが一般的です。 
 
 
 
3.公示地価(公示価格)
 
 
公示地価(公示価格)とは、地価公示法を根拠として公示されるものであり、特定の地域等において標準的な場所を選定し、その場所に関する土地の価格を公示するものです。
 
したがって、個々の土地についての金額ではなく、その周辺地域において目安となる金額ということになります。
 
一般的には、時価(実勢価格)よりは低く、相続税評価額(路線価)より高い金額になる傾向にあります。
 
 

4.相続税評価額(路線価)
 
 
相続税評価額(路線価)は、道路に接した土地についての平米単価のことです。国税庁によって例年7月頃に1月1日時点の価格が公表されており、ニュースなどで路線価という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
 
相続税や贈与税の計算をする際には、路線価を基に計算することになりますが、路線価は基本的に市街地にしか定められませんので、都市部から離れると路線価が定められていないことも多く、その場合には、市区町村の「評価倍率表」を基に計算することになります。
 
一般的には、公示地価(公示価格)より低く、固定資産税評価額よりは高くなる傾向にあります。
 
 
 
5.固定資産税評価額
 
 
市町村が、土地や建物などの固定資産に対して課税するために、個々の不動産について定めるものであり、原則として、この評価額に1.4%を掛けた金額が固定資産税として毎年1月1日時点の所有者に対して課税されます。
 
もし、年の途中で所有者が変わったとしても1月1日時点の所有者が1年分を納める必要があるため、不動産の売買の際には、日割計算をして買主と売主の間で精算することが一般的です。
 
一般的には相続税評価額(路線価)よりも低くなる傾向があります。
 
また、登記申請の際に、不動産の価格を基に登録免許税を計算する場合は、この固定資産税評価額を基に計算します。
 
 
 
6.おわりに
 
 
「土地の価格」には、その状況によって色々な意味があります。一般的に、公示地価(公示価格)は時価(実勢価格)の90%、相続税評価額(路線価)は時価(実勢価格)の80%、固定資産税評価額は時価(実勢価格)の70%と言われており、それぞれの金額に差異があることから、どの状況における土地の価格のことを指しているのかを誤解すると、あとで思わぬトラブルになってしまうかもしれません。
 
特に、不動産の仲介業者を通さずに、当事者同士で不動産の売買を行うような場合には、いくらで取引するかをどのようにして決めるか悩んでしまうこともあるでしょう。不動産の価格には、様々な種類があることを知っておき、場合によっては、不動産鑑定士に鑑定を依頼することを検討するのもよいかもしれません。