2024/1/16

売買したのに贈与税?親族間での不動産売買の注意点

何らかの事情により、ご自身が所有している自宅を親族に譲渡したいときに、贈与すると贈与税がかかるため、売買することにして、また、親族間であることから可能な限り、売買代金を低く抑えたいと思うことがあるかもしれませんが、場合によっては、贈与税が課されることがあるため注意が必要です。
 
 
 
 
売買したのに贈与税?低額譲渡の注意点
 
 
相続税法第7条では、著しく低い価額の対価で土地等を譲り受けた場合には、その土地等の時価と支払った対価との差額を贈与により取得したものとみなされます。このような「著しく低い価額での譲渡」を「低額譲渡」といい、財産を譲り受けた者に対して贈与税が課される場合があります。
 
低額譲渡にあたるかどうかは、個々の取引についての取引の事情や取引の当事者の関係等を総合的に勘案して判断することになりますが、低額譲渡に該当する場合の、その土地等の対価は、相続税評価額ではなく通常の取引価格に相当する金額、いわゆる時価をいいます。
 
したがって、親族間の売買などにおいては、売買価格をいくらに設定するかが重要となるわけですが、適正な通常の取引価格に相当する金額である時価の設定は非常に困難な問題です。

なお、時価をめぐる裁判例の中には、時価とは「客観的交換価値、すなわち、課税時期において、それぞれの財産の状況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいう」とし、相続税評価額と同水準の価額がそれ以上の価額を売買価格として譲渡が行われたときは、原則として「著しく低い価額」の対価による譲渡とは認められないとしたものがあります。
 
したがって、一般的には、少なくとも相続税評価額を下回る譲渡価額での売買については贈与税が課税されることがあることに注意が必要です。
 
ちなみに、もし、あまり深く考えずに低額譲渡を行った場合において、譲渡所得税の申告を税務署に提出して受け付けられたとしても、それは、あくまでも申告書の提出を受理したにすぎず、申告の内容が適正であることを示すものではありません。
 
つまり、後になって税務署から低額譲渡の指摘を受け、時価との差額の贈与税を支払うことになる可能性もあります。
 
場合によっては、客観的な価額である相続税評価額で、かつ2,500万円までの価格が非課税となる「相続時精算課税制度」の活用を検討するのも一つの選択でしょう。