2024/1/18

相続登記だけじゃダメ?農地を相続した場合の届出義務

令和6年4月1日から相続登記が義務化されることにより、これまで放置されがちだった相続登記が促進されることが期待されています。相続登記は、亡くなられた方の名義になっている不動産を相続人の名義に変更する手続ですが、不動産の中には自宅だけでなく、田んぼや畑などの農地が含まれることもあるでしょう。
 
ところで、農地を相続することになった場合、市区町村の農業委員会に対しても届出をする義務があることをご存じでしょうか?
 
この義務を果たさなかった場合、あとで思わぬ罰則を課せられることがあるため注意が必要です。
 
 
 
 
相続登記だけじゃない!農地を相続した場合の届出義務
 
 
食料の安定供給や耕作者の地位の安定などを目的とする政策により、農地には農地法による様々な規制が設けられており、個人が、農地を「売買」や「贈与」で取得する場合などには、市区町村にある農業委員会の許可を得たり、あるいは届出を行わなければならず、また、不動産登記の申請時には、これらの許可や届出があったことを証する書面を添付する必要があります。もし、許可や届出をせずに売買しても無効とされ、所有権移転登記もできません。
 
しかし、相続人が相続によって農地を取得した場合は、意図的な所有権の移転ではないため、農業委員会の許可を得る必要はなく、相続登記の申請時には、許可があったことを証する書面を添付する必要もありません。
 
ただし、「相続を知った時から10か月以内」に農業委員会への届出を行わなければならず、届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合は、10万円以下の過料に処せられることもあるため注意が必要です。
 
ちなみに、この届出は、農業委員会が農地の権利移動を把握するためのものであり、権利取得の効力を発生させるものではありませんし、また、相続登記に代わるものでもないため、登記に関しては、別途、法務局に申請する必要があります(なお、その際に届出があったことを証する書面の添付は不要です)。
 
売買や贈与などにおいては、登記申請の添付書類として必要であることから、農業委員会の許可や届出を忘れることは考えにくいのですが、相続登記の際にはこれらの書面が不要であることから、届出を行うことをつい忘れがちです。あとで過料に処せられることがないよう確実に届出を行うようにしましょう。