2024/3/10

住宅ローンを借りた金融機関が合併した場合の抵当権抹消登記

住宅の購入は高額な買物ですので、住宅ローンを組む際には長い期間をかけて返済するのが一般的ですが、そのようにして住宅ローンを返済している間に金融機関が合併してしまうことがあります。もし、住宅ローンを完済して抵当権の抹消登記を申請しようとする際に金融機関に合併があった場合、その抵当権を抹消する際には少し注意が必要です。
 
今回は、金融機関に合併があった場合の抵当権抹消登記について解説します。
 
 
 
 
住宅ローンを借りた金融機関が合併した場合の抵当権抹消登記
 
 
 
目次
1.合併して消滅した金融機関の抵当権を抹消する場合
2.合併した後も存続する金融機関の抵当権を抹消する場合
3.おわりに
 
 

1.合併して消滅した金融機関の抵当権を抹消する場合
 
 
例えば、A銀行で住宅ローンを組み、抵当権を設定した場合において、その後A銀行がB銀行に合併されてA銀行が解散(消滅)したとします。
 
ここでA銀行の抵当権を抹消する際の手続は、住宅ローンを完済した時期が合併の前か後かで異なります。
 
 
(1)合併後に住宅ローンを完済していた場合
 
A銀行とB銀行が合併した後に住宅ローンを完済してA銀行の抵当権を抹消する場合、「抵当権抹消登記」の前提としてA銀行からB銀行への「抵当権移転登記」を申請する必要があります。
 
これは、合併によってA銀行からB銀行に抵当権が承継されたためです。
 
したがって、合併後に住宅ローンを完済した場合には、抵当権を抹消するために①抵当権移転登記(A銀行→B銀行)②抵当権抹消登記、という2つの登記を申請することになります。
 
なお、抵当権移転登記はB銀行のみが単独で申請できますが、その際には「A銀行がB銀行に合併されたことを証明できる情報」を添付する必要があり、また、抵当権移転登記の申請を代理するのであれば「B銀行からの委任状」を添付する必要があります。
 
 
(2)合併前に住宅ローンを完済していた場合
 
A銀行とB銀行が合併する前に住宅ローンを完済していたにもかかわらず、抵当権の抹消登記をしないでいる間に合併した場合には、(1)のように「抵当権移転登記」を申請する必要はありません。これは、住宅ローンを完済したことで、実体上、抵当権は消滅している(登記記録上それが反映されていない)ためです。したがって、抵当権抹消登記のみを申請すればよいことになるのですが、ここで1つ注意しなければならないことがあります。
 
抵当権抹消登記は、原則として「不動産の所有者」と「抵当権者」が共同して申請します。住宅ローンを完済した場合の抵当権抹消登記であれば、「住宅の所有者」と「抵当権を設定した金融機関」が申請の当事者となるのが通常です。しかし、上記の例でいうと登記を申請すべきA銀行は既に合併によって消滅しており、登記申請の当事者となることはできません。この場合は、合併によりB銀行が登記申請の義務を承継したことになるため、「住宅の所有者」と「B銀行」が共同して抵当権抹消登記を申請します。
 
なお、この際には通常の抵当権抹消登記に必要な書類に加えて、「A銀行がB銀行に合併されたことを証明できる情報」を添付する必要があります。
 
 
 
2.合併した後も存続する金融機関の抵当権を抹消する場合
 
 
上記の例で、B銀行で住宅ローンを組み、抵当権を設定していた場合において、その後A銀行とB銀行が合併しA銀行が解散(消滅)したときのB銀行の抵当権を抹消についてですが、この場合は、合併の前後を通じてB銀行が抵当権を有していることに変わりはありません。
 
したがって、抵当権抹消登記の前提として抵当権「移転」登記をする必要はなく、抵当権抹消登記のみを申請すればよいことになります。
 
ただ、ここでもしB銀行が合併の際に「C銀行」に商号を変更している場合、別の注意が必要です。
 
それは、抵当権抹消登記を申請するのが「不動産の所有者」とB銀行から商号を変更した「C銀行」になるため、抵当権抹消登記を申請するときの添付書類として、商号を変えた事実を証明できる書類を法務局に提出する必要があるということです。
 
 
 
3.おわりに
 
 
住宅ローンの返済は長期間に渡るため、その間に金融機関に商号の変更や合併等が生じていることは珍しくありません。また、住宅ローンを完済した後でも、抵当権抹消登記をしないでいる間に金融機関が合併してしまうこともあるでしょう。そうなると通常の手続より少し手間がかかってしまうことになりますので、住宅ローンを完済した後はできるだけ早いうちに抵当権抹消登記を申請しておくことをお勧めします。
 
 
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