2024/4/6
|
|||||||
改正犯収法の施行に伴う司法書士の取引時確認についてのご理解とご協力のお願い |
|||||||
通常、司法書士が依頼を受ける場合は、必ず依頼者の本人確認を行いますが、その中には依頼者の本人確認・意思確認のほか、犯罪収益移転防止法(以下「犯収法」といいます。)で定められた取引時確認が必要となる場合があります。 その犯収法が一部改正され、令和6年4月1日に施行されています。この改正により、司法書士が行う取引時の確認方法が大きく変わる場合があります。 犯罪収益移転防止法の改正に伴う司法書士との取引時確認について
1.司法書士による取引時確認が必要となる業務 司法書士が取引時確認をしなければならないのは、司法書士法第3条もしくは第29条に定める業務またはこれらに付随し、もしくは関連する業務のうち、依頼者のためにする次に掲げる行為または手続についての代理又は代行とされています。 ・宅地又は建物の売買に関する行為又は手続(不動産登記) ・会社等の設立、合併、定款変更、取締役の選任等に関する行為又は手続(商業登記) ・200万円を超える現金、預金、有価証券その他の財産の管理、処分 2.司法書士による取引時確認事項 犯罪収益移転防止法で定められた取引時確認における、従来の確認事項としては、「本人特定事項」として「個人」であれば「氏名・住居・生年月日」、「法人」であれば「名称・所在地」とされていましたが、令和6年4月1日に施行された改正犯罪収益移転防止法により、次の取引時確認事項が追加されました。 (1)個人の場合 ・取引を行う目的 ・職業 (2)法人の場合 ・取引を行う目的 ・事業の内容 ・実質的支配者の本人特定事項 3.取引時確認の際の確認書類等 上記の取引時確認事項については、次のような書類で確認を行います。 (1)個人の取引時確認 ①本人特定事項 ア 運転免許証、運転経歴証明書、在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカード、旅券(パスポート/住所欄の記載のあるもの)等、顔写真のある官公庁発行書類 イ 各種健康保険証、国民年金手帳、母子健康手帳、取引を行う事業者との取引に使用している印鑑に係る印鑑登録証明書 等 ウ イ以外の印鑑登録証明書、戸籍謄本・抄本、住民票の写し・住民票記載事項証明書 上記のほか、官公庁発行書類等で氏名、住居、生年月日の記載があり、顔写真のないもの(個人番号の通知カードを除く。) ②取引を行う目的 申告(ただし、申告内容の確認のため、資料の提示等を求めることもあります) ③職業 申告(ただし、申告内容の確認のため、資料の提示等を求めることもあります) (2)法人の取引時確認 ①本人特定事項 登記事項証明書、印鑑証明書(名称、本店、主たる事務所の所在地の記載のあるもの) ②取引を行う目的 申告(ただし、申告内容の確認のため、資料の提示等を求めることもあります) ③事業の内容 定款、登記事項証明書など ④実質的支配者の本人特定事項 代表者からの申告(ただし、申告内容の確認のため、資料の提示等を求めることもあります) 4.取引時確認の方法 これらの取引時確認は、依頼を受ける業務の内容に応じて、面談、転送不要郵便(書留等)などの方法で行います。具体的には次のとおりです。 (1)個人の場合 ①対面での取引の場合
②非対面での取引の場合
(2)法人の場合 ①対面での取引の場合
②非対面での取引の場合
5.実質的支配者の確認について 実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある個人をいい、依頼者が法人の場合、司法書士はこの実質的支配者について確認することになります。なお、株式会社の場合の実質的支配者とは、おおむね以下のようになります。 ①株式の50%を超える株式を保有する個人、そのような者がいない場合には、②25%を超える株式を保有する個人、そのような者もいない場合には、③事業活動に支配的な影響力を有する個人、そのような者もいない場合には、④代表取締役が該当することとなります。 また、実質的支配者が複数人であるときは、その全員の本人特定事項を確認します。 6.おわりに 改正犯収法の施行後は、例えば、司法書士から法人の依頼者に対し、実質的支配者の本人特定事項の申告を求めることのほか、場合によっては申告内容の確認のために資料の提示等を求める場合もあれば、さらに詳細な資料の提供を求める場合もあります。これらの確認について応じていただけない場合、やむを得ず依頼をお断りする場合もあります。 依頼者の皆様には、確認事項が増えることによる負担が増加することになりますが、皆様の大切な権利を守るために必要なものでもありますので、司法書士による本人確認への御協力をお願いいたします。 |
|