2024/5/7
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「補助」ってどんな制度? |
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認知症や知的障がい、精神障がいなどで既に判断能力が衰えた方を支援するための制度として「法定後見制度」があります。そのうち、判断能力不足の程度が軽度である人を対象とし、後見や保佐に比べて本人の意思を尊重する形で支援する制度が「補助」です。 今回は、そのうち「補助」について解説します。 「補助」ってどんな制度?
1.「補助」とは? 「補助」とは、法定後見制度のうち、軽度の精神上の障がい(認知症、知的障がい、精神障がい等)により、一人で判断する能力が不十分な人について、その権利や財産を守るために設けられた制度で、家庭裁判所によって選任された「補助人」が被補助人を支援します。 補助人は、被補助人が家庭裁判所で定められた一定の行為をする際に、それが被補助人の利益に適うかどうかを判断して同意を与えたり、同意を得ずに単独でしてしまった行為を後から取り消したりします。 2.補助人の権利と義務 (1)同意権 家庭裁判所に対して申立てをして補助開始の審判があると、被補助人の援助者として補助人が選任されます。しかし、原則として被補助人の行為が制限されることはなく、家庭裁判所で定められた一定の事項について補助人の同意が必要となります。 (2)代理権 家庭裁判所が認めた場合は、特定の事項について補助人に代理権を与えることができます。成年後見とは異なり後見人には当然には代理権は与えられないため、補助人が被補助人を代理するためには補助開始の申立と同時にまたは補助開始の審判の後に代理権付与の申立をする必要があります。なお、申立てに当たっては、ある程度具体的に行為を特定することや代理権を付与することについて被補助人が同意していることが必要となります。 (3)申立時の注意点 同意権や代理権を付与してもらうための申立ては、補助開始の申立てと同時に、少なくともどちらか一方の申立てをする必要があります。ただ、両者のうち補助開始の申立てと同時に申立てをしなかったものについては,補助開始の審判の後にすることもできます。ただし、申立ての際には、ある程度具体的に行為を特定すること、同意権や代理権を付与することに被補助人が同意している必要があります。 (4)善管注意義務と身上配慮義務 補助人が被補助人を支援する際には、通常の注意義務よりも高度な注意義務が課されます(これを善良なる管理者の注意義務=善管注意義務といいます)。 また、被補助人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(身上配慮義務)。 3.補助人の同意権の範囲 同意権の範囲や内容は、家庭裁判所の審判によって定められますが、民法第13条第1項で定められている内容の範囲内に限定されます。それぞれの具体的な例は以下のとおりです。 (1)元本の領収又は利用 ① 預貯金の払い戻し ② 貸したお金を返してもらうこと ③ お金を貸すこと(利息の定めがある場合) (2)借財又は保証 ① 借金(金銭消費貸借契約の締結) ② 保証人になること(債務保証契約の締結) (3)不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為 ① 不動産の売却 ② 不動産の賃貸借契約の締結(後期(9)記載のものを除く)及び解除 ③ 抵当権設定 ④ 金銭の貸付(利息の定めがない場合) ⑤ 通信販売(インターネット取引を含む)及び訪問販売等による契約の締結 ⑥ クレジット契約の締結 ⑦ 元本が保証されない取引(先物取引、株式の購入など) (4)訴訟行為 民事訴訟において原告として訴訟を遂行する一切の行為。ただし、相手方が提起した訴訟への応訴や、離婚・認知などの裁判(人事訴訟)は、補助人の同意がなくてもできます。 (5)贈与、和解又は仲裁合意 贈与とは、自己の財産等を他人に与えることであって、贈与を受ける場合は補助人の同意は不要です。 (6)相続の承認若しくは放棄又は遺産分割 被補助人が遺産分割協議をするには、補助人の同意が必要になります。 (7)贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付きの贈与の申込みを承諾し、又は負担付きの遺贈を承認すること (8)新築、改築、増築又は大修繕 住居等の新築、改築、増築又は大修繕を目的とする法律行為について補助人の同意が必要になります。 (9)民法第602条の期間を超える賃貸借 民法第602条には、「樹木の裁植又は伐採を目的とする山林の賃貸借は10年」「その他の土地の賃貸借は5年」「建物の賃貸借は3年」「動産の賃貸借は6か月」と定められており、他人に賃貸する場合及び他人から賃借する場合のいずれにおいても、これらの期間を超える契約をするには、補助人の同意が必要となります。逆に、これらの期間内であれば、同意は不要です。 4.取消権について (1)取消しの効果 補助人又は被補助人によって取り消された行為は、初めから無効なものとみなされます。したがって、その行為によって得た利益がある場合には返還しなければなりません。例えば 被補助人が補助人の同意を得ないで借金をした場合、補助人は原則としてその行為を取り消すことができますが、借りた金は返す必要があります。ただし 返還しなければならないのは 利益が、現金あるいは借りた金で購入した商品など形を変えて残っている場合だけです。なお、借りた金を生活費に使ったような場合は、その分、自己の財産の減少を防いだことになり、形を変えて利益が残っていると考えられるので、この場合は返還しなければなりません。 (2)取消ができない場合 取引の相手方を保護し、取引の安全を図るため、以下のような場合は、取消ができません。 ① 被補助人が詐術を用いた場合 例えば、被補助人が、自分が被補助人ではないと嘘をついて、相手方を誤信させた場合です。 ② 補助人が追認した場合 例えば 被補助人が、補助人の同意なく単独でした借金の一部について補助人が返済した場合です。これは補助人が被補助人の行為を認めたものとみなされます。 ③ 時効 補助人が、その行為を知った時から5年経過した場合又はその行為の時から20年が経過した場合です。 5.家庭裁判所への報告 成年後見と同様に、補助人の業務や管理する財産について家庭裁判所への報告が義務付けられています。報告書については家庭裁判所に定型の書式があるため、それを利用すればそこまで難しいことはないでしょう。ただし、日頃から金銭出納帳をつけるなどして財産の管理状況をきちんと記録しておくことが必要です。 |
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