2024/5/14

【宅地建物取引業者向け】住宅用家屋の所有権の保存登記等の登録免許税の税率の軽減措置に係る宅地建物取引業者の事務について

租税特別措置法第72条の2等では、一定の要件を満たした住宅用家屋について所有権保存登記等の登録免許税の軽減措置が講じられており、登記申請の際に市町村長が発行した「住宅用家屋証明書」を添付することでこの軽減措置を受けることができます。
 
今般、住宅用家屋証明書の発行に係る市区町村の証明事務に関して改正が行われ、令和6年7月1日以降、一定の場合において、証明の申請の際に宅地建物取引業者が発行する書類を提出することで、証明事務の一部を省略することができることとされました。
 
 
 
 
【宅地建物取引業者向け】住宅用家屋の所有権の保存登記等の登録免許税の税率の軽減措置に係る宅地建物取引業者の事務について
 
 
 
目次
1.住宅用家屋証明書の添付による登録免許税の軽減措置
2.住宅用家屋証明書の発行に必要な書類として宅地建物取引業者が発行する「確認書」が創設
3.確認書を発行することができる宅地建物取引業者
4.申立書等に代わる確認書を発行することができる場合
5.確認書の発行手順
6.おわりに
 
 
 
1.住宅用家屋証明書の添付による登録免許税の軽減措置
 
 
個人が新築・取得した住宅用家屋が一定要件を満たしている場合、所有権の保存登記等の際に、「住宅用家屋証明書」を添付することで登録免許税の税率について軽減措置を受けることができます。
 
所有権を取得した際の所有権移転登記だけでなく、住宅ローンの抵当権設定にかかる登録免許税についても軽減を受けることができるため、軽減措置を受けられるか否かで登録免許税の負担が大幅に変わることもあります。
 
 
 
2.住宅用家屋証明書の発行に必要な書類として宅地建物取引業者が発行する「確認書」が創設
 
 
住宅用家屋証明書による登録免許税の軽減措置を受けるための要件の1つに「当該家屋が専ら当該個人の住宅の用に供されること」というものがあり、証明書の発行の際にはこの確認のために以下の書類を提出することになります。
 
①既に家屋の所在地に住民票を移している場合
住民票の写し
 
②まだ住民票を移していない場合
入居(予定)年月日等を記載した「申立書」及び「現在住んでいる家屋の処分方法等を確認するための書類」
 
今般の改正により、②について、宅地建物取引業者が発行する「確認書」に代えることができるようになりました。
 
 
 
3.確認書を発行することができる宅地建物取引業者
 
 
従来の申立書等に代わる「確認書」を発行することができるのは、軽減措置を受けようとする買主(個人)の依頼を受けてその家屋の取得に係る取引の代理又は媒介をした宅地建物取引業者とされています。
 
 
 
4.申立書等に代わる確認書を発行することができる場合
 
 
申立書等に代わる「確認書」を利用できるのは次の場合です。
 
①個人が取得した建築後使用されたことのない住宅用家屋の場合

例えば、建売住宅・分譲マンションなどの居住用家屋について所有権移転登記等を申請するような場合が該当します。
 
 
②個人が取得した建築後使用されたことのある住宅用家屋の場合

例えば、中古住宅などを居住用に購入して、所有権移転登記等を申請するような場合が該当します。
したがって、個人が新築した家屋の場合に、まだ住民票を移していないときは従来どおり「申立書」及び「現在住んでいる家屋の処分方法等を確認するための書類」を提出することになります。
 
 
 
5.確認書の発行手順
 
 
(1) 軽減措置の利用意向と住民票の転入時期の確認
 
買主の仲介を行う宅地建物取引業者が自ら又は登記申請業務を受託する司法書士を通じて、買主に対して登録免許税の軽減措置の利用意向を確認するとともに、住民票の転入手続が住宅用家屋証明書の発行申請時期の前後どちらになる(見込み)かを確認します。
 
ここでもし、住宅用家屋証明書発行申請よりも前に住民票の転入手続が済むということであれば確認書を作成する必要はないということになります。
 
 
(2)確認書の作成
 
軽減措置の利用意向が示され、住民票の転入手続が住宅用家屋証明書の発行申請時期の後になる(見込み)である場合には、売買契約時または契約後速やかに、買主に対して、現在の住居の処分方法等や入居が登記の後になる理由等を以下のような書類で確認したうえで、確認書に記入するとともに、買主に対しても確認と記名を求めます。
 
①現在の家屋の処分方法等
現在の家屋の処分方法等については、以下のケースに応じて以下のような書類で確認をします。
 
 
・現在の家屋を売却する場合

当該家屋の売買契約(予約)書の写し、媒介契約書の写し等売却することを証する書類及び証明申請者がその家屋に住んでいることを明らかにする現在の住民票の写し
 
 
・現在の家屋を賃貸する場合

当該家屋の賃貸借契約(予約)書の写し、媒介契約書の写し等賃貸することを証する書類及び証明申請者がその家屋に住んでいることを明らかにする現在の住民票の写し
 
 
・現在の家屋が借家、借間、社宅、寄宿舎、寮等の場合

証明申請者と家主の間の賃貸借契約書の写し、使用許可証又は家主の証明書の写し等、当該家屋が当該証明申請者の所有する家屋ではないことを証する書類及び当該証明申請者がその家屋に住んでいることを明らかにする現在の住民票の写し
 
 
・その他、現在の家屋に証明申請者の親族が住む場合等

当該親族の申立書等、当該家屋が今後、当該証明申請者の居住の用に供されるものではないことを証する書類及び当該証明申請者がその家屋に住んでいることを明らかにする現在の住民票の写し
 
 
② 入居が登記の後になる理由
 
入居が登記の後になる理由は、買主に確認したうえで確認書に具体的に記載することとし、現在の家屋の処分方法等が未定である場合には、入居が登記の後になることを疎明する次のような書類の確認をします。
 
・資金を借りるため抵当権設定を急ぐ場合等登記を入居の後に遅らせることのできない場合

当該家屋を新築又は取得するための資金の貸付け等に係る金銭消費貸借契約書又は当該家屋の代金の支払期日の記載のある売買契約書等の写し
 
 
・前住人が未転出であること、本人又は家族の病気等止むを得ない事情により登記までに入居できない場合

前住人と証明申請者又は宅地建物取引業者との間の引渡期日の記載のある売買契約書の写し、治療期間が記載された医師の診断書の写し等止むを得ない事情を明らかにする書類
 
 
(3)確認書の発行
 
必要事項をすべて記入した後、宅地建物取引業者から買主に対して確認書を交付します。なお、住宅用家屋証明書の発行申請の際には、確認書だけでなく、上記①②で確認した書類の提出を求められることも考えられますので、これらの書類も買主に返却します。
 
 

6.おわりに
 
 
今般の改正は、住宅用家屋証明書の発行に係る市町村の事務負担の軽減を図るためだとされています。
 
一般的には、登記を申請する司法書士が、買主を代理して住宅用家屋証明書の発行を申請するために市役所の窓口へ行くことが多いと思われますが、この改正によって処理にかかる時間が短くなるということであれば非常に有益な改正です。
 
しかし、根本的な手続として変更があったわけではなく、事務の負担を誰が担うかといった点での改正であることを考えると、この制度がうまく機能するかどうかについては少し疑問が残るのが率直な印象です。