2024/5/16
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遺言による債務の承継の可否 |
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遺言は、被相続人が生前に「自分の財産を、誰に、どれだけ残すのか」についての意思表示です。遺言の効力は非常に強く、遺産の分け方は基本的に遺言の内容に従うことになりますので、スムーズに遺産相続を進めることが可能です。 ところで、遺産にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれますが、このようなマイナスの財産について誰が負担するかを遺言で指定することは可能でしょうか? 今回は、遺言による債務の承継の可否について解説します。 遺言によって特定の人に債務を承継することができるか? 例えば、遺言者である父が債権者Aに対して3000万円の借金をしたまま亡くなり、その相続人が母である甲と長男である乙の2人である場合に、父がAに対する借金を乙に相続させるという遺言を残していたとき、乙だけが3000万円の借金を支払う義務を相続するのでしょうか?
このような場合、相続人の間では有効とされています。つまり、乙は、母である甲との関係では、Aに対して3000万円の借金を返済する義務を負うことになります。 しかし、この遺言を債権者であるAに対して主張することはできません。これは、もし、遺言によって特定の相続人に債務を相続させることを債権者との関係でも認めてしまうと、返済能力のない人に債務を相続させることで債権者に不測の損害を与えてしまうからです。 この場合、Aは民法899条の定めにより甲と乙に対して、その法定相続分に応じて1500万円ずつ請求することができ、甲が債権者の請求に応じて1500万円を支払った場合、甲は遺言を理由に乙に対して1500万円を求償することができます。
甲の立場で考えると、遺言によって自分が債務を相続しないとされたとしても、債権者Aから1500万円を支払うように請求があった場合には、遺言の存在を理由に支払いを拒むことはできないということです。 もっとも、債権者が承諾した場合は、遺言によって特定の人に債務を相続させることも可能とされています。 また、遺言者が亡くなってから3か月以内に家庭裁判所に対して相続放棄を申し立てて受理されれば、相続人としての地位を失うことになり、この効果は対外的にも及びますのでAからの請求を拒むことはできます。 以上のとおり、遺言によって、遺言者の債務を特定の人に相続させた場合、相続人の間では効果は及びますが、債権者に対して効果は及ばないため、債権者は各相続人に対し、その相続分の割合に応じて請求することができます。このことは遺産分割協議によって、一部の相続人がその相続分を放棄するとした場合でも同様です。これは家庭裁判所に対する相続放棄とは異なり、あくまでも相続人同士の内部的な取り決めにすぎないためです。 もし、遺言によって自分以外の人に遺言者の債務が相続されているとしても、それだけでは決して安心とは言い切れないことには注意が必要でしょう。 |
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