2024/5/18

「所有権保存登記」って何?

不動産の所有者について名義を変更する際、多くの場合は、それまでの所有者から新しい所有者に変わるということで所有権「移転」登記を申請することになります。
 
ところが、ある不動産について初めて所有者として登記をする場合、他の誰かから取得したわけではありませんので、所有権「移転」とすることはできません。そこで、このような場合に申請するのが所有権「保存」登記です。
 
 
 
 
「所有権保存登記」って何?
 
 
不動産の登記簿の構成としては、大きく表題部と権利部の2つに分かれており、最初に表題部があり、権利部が続きます。表題部には不動産の物理的な状況が記録され、権利部には不動産の権利関係に関する事項が記録されますが、所有権保存登記は、表題部と権利部のうち、まだ権利部の登記が存在しない不動産について、最初に行われる所有権の登記をいいます。
 
権利部は、さらに甲区と乙区に分かれており、甲区には所有権に関する事項を記録し、乙区には抵当権などの所有権以外の事項を記録します。
 
例えば、建物を新しく建てた場合、自動的に登記簿が作成されるわけではありません。したがって新たに不動産登記を作成する必要があるのですが、この場合、まずは表題登記を申請して、どこにどのような建物があるかということを登記します。
 
そのようにして作成された登記簿ですが、この時点ではまだ表題部の登記記録しかない状態ですので、その後に申請するのが所有権保存登記ということになります。
 
登記をすることによって、自分が所有者であることを第三者に対して主張することができ(これを登記の対抗力と言います)るようになるのですが、表題登記には原則としてこの対抗力はなく(表題部にも所有者を記録する欄はありますが、それだけでは第三者に対抗することはできません)、所有権保存登記をすることで自分の所有権を第三者に対しても主張することができるようになります。
 
なお、建物を新築して表題登記を申請しても登記識別情報(いわゆる権利証)は発行されず、所有権保存登記をして初めて登記識別情報が発行されることになります。したがって、所有権保存登記は登記識別情報を発行してもらうためにする登記だということができるかもしれません。
 
もちろん、土地についても表題部のみが登記がされている場合には、その後初めてする権利部の登記は所有権保存登記ということになるのですが、多くの土地はすでに所有権の登記が存在しているため、土地について所有権保存登記をする機会は建物ほど多くはなく、例えば、土地を埋め立てて新たに土地ができた場合など、極めてまれなケースに限られます。