2024/5/21

自筆証書遺言に財産目録をつけるときの注意点

平成30年に成立した改正民法等のうち、自筆証書遺言の方式の緩和に関する部分が、平成31年1月13日から施行されています。
 
民法第968条第1項では、自筆証書遺言をする場合には、遺言者が、遺言書の全文、日付及び氏名を自書して、これに印を押さなければならないと定められており、これらの要件を満たしていない遺言は無効です。特に、全文を自書、つまり手書きしなければならない点は非常に負担が大きく、遺言の利用を阻害する一因になっているという指摘がありました。
 
今回の改正によって創設された同条第2項では、自筆証書によって遺言をする場合でも、遺言に相続財産の全部又は一部の目録(以下「財産目録」といいます。)を添付するときは、その財産目録については自書しなくてもよいことになりました。これにより、遺言の利用が促進されることが期待されますが、一方で財産目録を添付する際に注意しなければならないこともあります。
 
今回は、自筆証書遺言に財産目録をつけるときの注意点について解説します。
 
 
 
 
自筆証書遺言に財産目録をつけるときの注意点
 
 
目次
1.財産目録を作成することが想定されるケース
2.財産目録に特に決められた形式はない
3.署名押印が必要
4.財産目録を「添付」する方法にも特別な決まりはない
5.おわりに
 
 
 
1.財産目録を作成することが想定されるケース
 
 
遺言書には、「○○をAに相続させる。」とか「△△をBに遺贈する。」といった記載をすることがありますが、多数の財産についての相続等を遺言によって実現しようとする場合に、それらすべての財産を自書するのは大変な手間です。そこで、例えば、本文に「別紙財産目録1記載の財産をAに相続させる。」とか「別紙財産目録2記載の財産をBに遺贈する。」と記載して、別紙として財産目録1及び2を添付するほう
が簡便です。
 
このように、相続等の目的となる財産が多数に及ぶ場合等に財産目録が作成されることになることが考えられます。
 
 
 
2.財産目録に特に決められた形式はない
 
 
遺言作成の利便性の観点から、財産目録については、後述する署名押印のほかに特段の定めはありません。
自筆による必要はありませんので、パソコン等を利用して目録を作成する方法のほか、遺言者以外の人の代筆等によって作成しても構いません。
 
また、例えば、土地については登記事項証明書を財産目録として添付したり、預貯金については通帳の写しを財産目録として添付することもできます。
 
 
 
3.署名押印が必要
 
 
改正後の民法第968条第2項は、遺言者が自書によらない財産目録を添付する場合には、「その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。」と定めています。つまり、自書によらない記載が用紙の片面のみにある場合には、その面又は裏面の1か所に署名押印をすればよいのですが、自書によらない記載が両面にある場合には、両面にそれぞれ自筆で署名し、押印をしなければなりません。なお、印鑑について特別な定めはありませんので、遺言書の本文で用いる印鑑と異なる印鑑を用いても構いません。ただし、遺言書の一体性を明確にしておく意味では同じ印鑑を用いたほうが望ましいでしょう。
 
 
 
4.財産目録を「添付」する方法にも特別な決まりはない
 
 
自筆証書に財産目録を添付する方法について、法律上、特別な定めはありません。したがって、本文と財産目録をホチキス等でとじたり、契印したりすることは必要ではありません。ただし、遺言書の一体性を明確にしておく意味から、ホチキス等で綴じたうえで契印をしておくほうが望ましいでしょう。
 
 
 
5.おわりに
 
 
今回の改正により、自筆証書遺言がより作成しやすいものとなりました。ただし、これはあくまでも自筆証書遺言に財産目録を「添付」する場合に関するものであり、改正法の適用を受けるためには、本文が記載された自筆証書とは別の用紙で財産目録を作成する必要があります。したがって、遺言書の本文と同じ用紙に自書によらない財産目録を記載することはできませんので注意が必要です。
 
 
 
 

 
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