2024/5/30

供託ってどんな制度?

例えば、賃貸マンションに住んでいる場合に、突然、貸主から家賃の値上げを伝えられたとして、提示された金額に納得がいかないため、それまでと同じ家賃を払おうとしたところ、貸主が値上げ後の家賃でなければ受け取らないと言って拒否されてしまったとします。
 
ここで、家賃の受取を拒否されたからといって、家賃を支払わないでよいというわけではありません。相手側の事情で支払いができないとしても、賃貸借契約上、家賃を支払う義務があるためです。
 
ただ、そうはいっても相手が受取を拒否しているのであれば、どうやって支払えばよいのか困ってしまいます。
 
そこで、このような場合に家賃の支払いをしたのと同じ効果を得るための制度として「供託」というものがあります。
 
 
 
供託ってどんな制度?
 
 
供託とは、供託者が供託物(金銭、有価証券、振替国債等)を国家機関である供託所に提出してその管理を委ね、供託所を通じて、債権者等の特定の相手に取得させることにより、一定の法律上の目的を達成しようとする制度をいいます。
 
冒頭の例でいえば、マンションの家賃を払おうとしたところ、貸主にその受け取りを拒否されたとしても、マンションを借りている以上はその家賃を支払わなければならず、そのままの状況が続くと賃料不払いによる賃貸借契約の解除といった事態に発展するおそれもあります。そこでこのような場合に、借主が家賃を供託することによって、支払義務を消滅させることができるというわけです。
 
相手が受け取りを拒否したこと以外にも、支払の相手が住所不明のために受け取りができなかったり、支払の相手が亡くなった後にその相続人が不明である場合のように支払の相手が誰なのかをはっきりと判断できず、しかも、判断できないことについて自分に過失がないときには、供託によって支払債務を免れることができます。
 
このように、供託によって責任を免れることができるとはいえ、供託をするためにはその原因(供託原因)が必要です。供託原因には、「受領拒否」や「債権者不確知」、「受領不能」といったものがあり、それぞれの要件を満たさなければ供託することはできません。
 
例えば、家賃の値上げを要求され、そのことに納得がいかないというだけでは、供託によって家賃の支払債務を免れることはできず、きちんと手続を踏まえたうえで行う必要があることには注意が必要です。
司法書士は、このような供託の手続についても専門家としてサポートすることができますので、お困りのことがあればお気軽にお問い合わせください。