2024/6/2

法人が所有権の登記名義人となるときの「法人識別事項」について

令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が法人であるときの所有権の登記の登記事項として、会社法人等番号その他の特定の法人を識別するために必要な事項(「法人識別事項」)が追加されました。これにより所有権の登記名義人である法人の識別性が向上することとなります。
 
 
 
法人が所有権の登記名義人となるときの「法人識別事項」について
 
 
 
目次
1.法人を所有権の登記名義人とする登記の申請について
2.法人識別事項を申請情報の内容としなければならない場合
3.法人識別事項を申請情報の内容とする登記の添付情報
4.法人識別事項に関する登記の記録例
5.おわりに
 
 

1.法人を所有権の登記名義人とする登記の申請について
 
 
法人を所有権の登記名義人とする登記の申請の際には、次の①から③の法人の区分に応じてそれぞれに掲げる法人識別事項を申請情報として提供する必要があり、さらに②及び③の法人については、登記申請の際の添付情報として、法人識別事項を証する情報を提供しなければならないとされています。
 
① 会社法人等番号を有する法人・・・会社法人等番号
 
② 会社法人等番号を有しない法人であって、外国の法令に準拠して設立されたもの 当該外国の名称(設立準拠法国)
 
③ 会社法人等番号を有しない①②以外の法人・・・法人の設立の根拠法の名称(設立根拠法)
 
なお、所有権の登記名義人が国、地方公共団体又は相続財産法人であるときは、法人識別事項の登記をする必要はないとされています。
 
 
 
2.法人識別事項を申請情報の内容としなければならない場合
 
 
法人が以下に掲げる登記を申請する場合には、上記の「法人識別事項」を申請情報の内容としなければなりません。
 
① 所有権の保存の登記
② 所有権の移転の登記
③ 所有権の登記がない不動産について嘱託によりする所有権の処分の制限の登記
④ 合体による登記等(不登法第49条第1項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る)
⑤ 所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る)
⑥ 所有権の登記名義人の名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記(法人識別事項が既に登記されているときを除く)
 
 
 
3.法人識別事項を申請情報の内容とする登記の添付情報
 
 
法人識別事項として、設立準拠法国又は設立根拠法を申請情報の内容とする登記の申請をする場合には、当該事項を証する情報をその申請情報と併せて提供する必要がありますが、その内容は次のとおりです。
 
 
(1)「設立準拠法国」を証する情報
 
設立準拠法国を証する情報は次の①又は②のいずれかとされています。
 
① 登記名義人となる者の設立に当たって準拠した法令を制定した国(州その他の地域を含む)の政府(設立準拠法国の領事を含み公証人を除く)の作成に係る住所を証明する書面(これと同視できるものを含む )
 
② 登記名義人となる者の設立準拠法国の公証人の作成に係る住所を証明する書面及び登記名義人となる者の設立準拠法国政府の作成に係る書面等の写し等であって、次の要件を満たすもの
 
ア 登記名義人となる者の名称の記載又は記録がある書面等の写し等であること。
イ 当該住所を証明する書面が作成された日又は当該申請の受付の日において有効な書面等の写し等であること。
ウ 当該住所を証明する書面と一体となっていない書面等の写し等にあっては、原本と相違がない旨の記載及び登記名義人となる者の代表者その他の当該住所を証明する書面の作成に当たって宣誓供述を行う権限のある者(以下「代表者等」という )の署名又は記名押印がされていること。
 

(2)「設立根拠法」を証する情報
 
設立根拠法を証する情報としては、法人の名称、住所及び設立根拠法を明らかにする公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)等が該当します。
 
 
 
4.法人識別事項に関する登記の記録例
 
 
法人識別事項に関する登記の記録は次のようになります。
 
 
5.おわりに
 
 
以上、法人が所有権の登記名義人となった場合の法人識別事項についての解説でした。
 
なお、令和8年4月1日からは、所有権の登記名義人が会社法人等番号を有する法人であって、その会社法人等番号が所有権の登記に記録されているときは、会社法人等番号を検索キーとして、商業・法人登記システムの情報に基づき、登記官が職権で法人の名称又は住所の変更の登記をすることが想定されています。
 
これを踏まえ、令和6年4月1日において既に所有権の登記名義人であった法人について、その法人識別事項を追加する登記に係る手続的な負担を軽減する観点から、当該法人による簡易な申出により、登記官の職権で法人識別事項を登記してもらうことができる旨の規定が設けられています。