2024/6/13
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相続する資格が重複したらどうなる? |
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ある相続が発生した場合において、各相続人の相続する権利は1つの資格に基づいたものであることが一般的なのですが、養子縁組などの人為的な身分関係の創設によって、1つの相続に関して1人の相続人が複数の資格を持ってしまうことが起こります。 相続資格が重複した場合に、それぞれの資格に基づいた相続が認められるかどうかについては具体的なケースによって扱いが異なっています。 相続する資格が重複したらどうなる?
1.子(養子)と孫(代襲相続人)の二重資格 例えば、被相続人に配偶者であるAと子であるBとCがいて、そのうちBは既に亡くなっている場合において、被相続人が生前にBの子Dを養子にしていたようなケースを考えてみます。この場合、被相続人の相続人はA、C及びDですが、DについてはBの代襲相続人としての地位と祖父の養子としての地位が重複することになります。 このような二重の資格に基づいて相続することが認められるかどうかについてですが、このケースではDは2つの資格に基づいて祖父の相続をすることができます、つまり、祖父の子としての相続分とBの代襲相続人としての相続分を合計した相続分で相続する権利を持っていることになります。 2.子(養子)と兄弟姉妹の二重資格 子のいない兄が弟を養子としていた場合、弟は兄の子(養子)としての相続分を持っていることになります。民法で定められている法定相続人には順番があり、先の順位の相続人がいる場合、後の順位の者が相続人となることはできません。養子は第1順位、兄弟姉妹は第3順位の相続人ですので、弟が養子として相続することになった場合、弟は兄弟姉妹として相続人になることはありません。 なお、このケースで弟が子(養子)としての資格に基づく相続を放棄した場合に、兄弟姉妹としての相続まで放棄したと取り扱われるかが問題となりえます。この点に関して、登記先例では、この場合の相続放棄は、養子としての資格と兄弟姉妹としての資格の両方について放棄したことを意味すると解しているようですが、一方で、あくまでも養子としての資格に基づく相続のみを放棄することを意味し、兄弟姉妹としての相続の資格は残るとの考え方も有力です。 3.子(養子)と非嫡出子の二重資格 養子は、養子縁組が成立した日から養親の嫡出子となります。 かつては、非嫡出子の相続分と嫡出子の相続分が異なっていたため、非嫡出子を養子とすることに相続上の意味があったものと考えられます。 しかし、現在は判例変更やそれによる民法改正により、嫡出子と非嫡出子の相続分は同じであることから、相続分の違いを解消することだけを目的として非嫡出子を養子とする意味はないでしょう。 ちなみに、従前の取扱いとしては、非嫡出子を養子とした場合のその相続分は、養子としてのものだけしか認められず、非嫡出子としての相続分と養子としての相続分とを合算することはできないとされていました。 4.配偶者と兄弟姉妹の二重資格 例えば、ABがDと養子縁組をして、その後実子Cと養子Dが婚姻した場合において、その後にABが亡くなり、さらにそのCが亡くなったようなケースでは、CとDの間に子がいなければ、DはCの配偶者としての資格と、兄弟姉妹としての資格に基づいて相続権を有することになります。 しかし、このケースにおいてDは配偶者としての相続分しか認められず、兄弟姉妹としての相続分を加えることはできないとされています。 5.おわりに 遺産分割協議においては、相続人の範囲だけでなく、各相続人がどれだけの法定相続分を有しているかを把握しておくことも大切ですので、もし、相続人の中に、相続資格が重複するような人がいれば、その相続分を合算することが認められるのかについて、きちんと理解しておくようにしましょう。 |
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