2024/6/27

相続人がいない場合に遺産を受け取れる可能性がある!特別縁故者への財産分与とは

特別縁故者への財産分与とは、亡くなった人(被相続人)に相続人がいない場合に、家庭裁判所が、被相続人と特別の関係があった人に対して、相続財産の全部あるいは一部を分与することを認めるという制度です。
 
民法では、相続人がいない場合、被相続人の相続財産は最終的に国庫に帰属するとされていますが、事情によっては、相続人ではないものの被相続人と深い縁故があった人に相続財産を取得させることが公平であると考えられる場合も少なくありません。そこで、相続人でない特別縁故者が相続財産を取得する余地を残したのがこの制度です。
 
 
 
 
相続人がいない場合に遺産を受け取れる可能性がある!特別縁故者への財産分与とは
 
 
 
目次
1.特別縁故者になることができる人
2.特別縁故者への財産分与の注意点
3.特別縁故者への財産分与の流れ
4.おわりに
 
 
 
1.特別縁故者になることができる人
 
 
被相続人とどのような関係にあった人が特別縁故者になり得るのか、民法では次の3つの類型が規定されています。
 
① 被相続人と生計を同じくしていた者

亡くなった人と生計を同じくしていた場合で、例えば、戸籍上の婚姻関係にはないものの内縁の配偶者、いわゆる事実婚状態であった人や、養子縁組の届出はしていないものの事実上の親子関係にあった人などが該当します。必ずしも亡くなった方と同居している必要はないと考えられています。
 
 
② 被相続人の療養看護に努めた者

被相続人の生前、病気の看護や介護など日常的な身の回りの世話に献身的に努めた場合です。
 
例えば、配偶者の親(義理の両親)の介護を献身的に行っていたような場合において、その義理の両親に法定相続人がいないケースなどが考えられます。
なお、家政婦や看護師のように報酬をもらって介護に従事していた場合は、特段の事情がない限り特別縁故者には該当しません。
 
 
③ その他被相続人と特別の縁故関係があった者

①や②には該当しないものの、これらと同程度に被相続人と密接な関係があったと考えられる人です。被相続人が生前に親しくしており、自分の財産を譲りたいという意思を明確に示していたケースや親同然の関係のように生前は親密な関係があったケースなどが認められる可能性があります。さまざまなケースが考えられるため、最終的な判断は家庭裁判所に委ねられますが、個人だけでなく法人もその対象となり得るとされています。
 
 
 
2.特別縁故者への財産分与の注意点
 
 
特別縁故者の制度により、相続人ではなくても被相続人の相続財産を取得できる余地が残されているとはいえ、あくまでも相続人がいない場合に限って認められるものであり、また、特別縁故者になるためには、裁判所に認めてもらう必要があることには注意が必要です。
 
特に、次のようなケースでは、特別縁故者として認められることは基本的にありません。
 
①法定相続人がいるケース

特別縁故者への財産分与は、被相続人に相続人がいない場合に認められる制度です。したがって、相続人がいれば、たとえ行方が知れないような場合でも、まずはその相続人が優先されることになります。また、当初は、相続人が誰もいないと思って手続を進めていたところ、後から相続人の存在が判明するケースもあるため、こうした場合も特別縁故者への財産分与が認められることはなくなります。
 
 
②遺言書で全財産を譲る人が決められていたり、全財産が債権者への返済に充てられるケース

特別縁故者への財産分与は、被相続人の債権者や、遺言で財産を譲ることにしていた相手への弁済を行った後に、なお残った相続財産があるときに認められます。したがって、これらの弁済によって相続財産がなくなってしまった場合、特別縁故者が財産分与を求めることはできません。
 
 

3.特別縁故者への財産分与の流れ
 
 
特別縁故者として財産分与を受けるためには、家庭裁判所に特別縁故者であることを認められる必要がありますが、被相続人の死亡した後に申告して、すぐに認められるわけではなく、次のような手順を踏まなければなりません。
 
 
① 相続人の調査

特別縁故者への財産分与は、被相続人に相続人がいない場合に認められるため、まずは戸籍等の調査により、相続人がいないことを確認する必要があります。
 
 
② 相続財産清算人の選任

調査した結果、相続人の存在が確認できないときは、家庭裁判所に対して相続財産を管理するための相続財産清算人の選任を申し立てます。相続財産清算人が選任されると、その旨及び相続人がいれば一定の期間内(最低でも6か月)にその権利を主張すべき旨の公告がなされます。
 
 
③ 相続財産の清算手続と相続人の捜索
相続財産清算人は、②の公告と並行して、全ての相続債権者及び受遺者に対し、2か月以上の期間を定めてその請求の申出をすべき旨を公告します。これにより申し出があった債権者等に対し被相続人の債務を支払うなどして相続財産の清算手続きを行います。
 
 
④ 財産分与の申立

①②③の手続を経ても、なお、相続人が判明せず、相続財産を清算した後に残ったものがある場合、特別縁故者は家庭裁判所に対し、被相続人の財産の分与を請求することができます。この請求に対し、家庭裁判所が相当と認めたときは、特別縁故者は、清算後残った相続財産の全部又は一部を取得することができます。
なお、この請求は、②の公告で定めた期間が満了してから3か月以内にしなければなりません。
 
 

4.おわりに
 
 
特別縁故者への財産分与の制度は、相続人でなくても相続財産を受け取れるようにするための制度ですが、それは、相続人がいないことが前提であり、しかも、一定の手続を経たうえで家庭裁判所に認めてもらう必要があります。
 
手続は煩雑なうえに時間もかかり、また、財産分与の申立ができる期間も定められているため、手続をするにはスケジュール管理は欠かせません。
 
もし、この制度の利用を検討しているのであれば、まずは弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。