2024/7/1

外国の方の氏名を登記する際の注意点

外国の方でも日本の不動産を購入して所有権を取得することは可能であり、もちろん、その登記をすることも可能です。ただ、登記制度は、もともと日本人を対象とした制度であり、日本語を使用すべきであるとされていることから、外国の方の氏名、住所を登記する場合、日本語のカタカナ又は漢字で表記することが求められます。
なお、法律の改正により、令和6年4月1日以降に外国の方が不動産を購入してその登記をする際には、氏名を「漢字」または「カタカナ」で表記するとともに、「ローマ字(大文字のアルファベット)」での併記することが必要となります。
 
 
 
 
 
外国の方の氏名を登記する際の注意点
 
 
 
目次
1.外国の方を所有権登記名義人とする際の氏名について
2.表記を変換する場合の対処法
3.外国の方で、個人が所有者となる不動産登記についてはローマ字併記が必要
 
 
 
1.外国の方を所有権登記名義人とする際の氏名について
 
 
不動産登記の制度は、もともと日本人を対象とした公文書であるため、日本語を使用すべきであり、外国人の氏名をアルファベットなどの外国文字で登記することはできません。ただし、中国や韓国などの漢字圏の外国人の場合であれば、漢字で登記することもできます。
 
外国の方の氏名をアルファベット等の外国文字からカタカナ表記に変換するにあたって明確な基準はありません。実務上は、本人の住民票又は印鑑証明書などの公的書類に通称名がカタカナで表記されていれば、その表記を用いますが、日本に住所がない場合や公的書類に通称の記載がない場合には、本人を特定する観点から、依頼者に口頭で発音を確認し、原語の発音をできるだけ近い形のカタカナで表記する必要があります。
 
 
 
2.表記をする場合の対処法
 
 
外国の方の氏名を、日本語のカタカナ又は漢字で表記をする場合の一般的な対処法は下記のとおりです。
 
 
(1)英語圏の氏名の登記
 
英語圏の名前をカタカナに変換する際は、まずアルファベットをローマ字読みに変換し、それをカタカナに置き換えます。
 
例えば、”Elizabeth Turner” は、カタカナで表記すると「エリザベス ターナー」となります。ただし、登記をする際には単純にカタカナ表記にすればよいわけではありません。まず、日本の氏名の表記と同じように、「姓→名」の順に表記する必要があります。また、登記実務では、姓と名の間を空白で区切ることはできず、姓名を続けて記載するか、「・」や「、」で区切らなければなりません。
 
したがって、“Elizabeth Turner”は、 「ターナー・エリザベス」「ターナー、エリザベス」「ターナーエリザベス」という表記に変換して登記します。
 
なお、ミドルネームについては、登記することも可能ですし、省略することも可能です。
 
 
(2)漢字圏の氏名の登記
 
漢字圏の場合には、日本と同じように漢字が用いられているため、氏名を漢字で登記することができます。
 
住民票、印鑑証明書、外国発行の公的書類に漢字で氏名が記載されていれば、その表記で登記することが可能です。ただし、漢字は日本国内で通用している漢字、すなわち法務省で登録されている漢字でなければならず、中国や韓国などでは漢字として通用しても、日本では通用していなければ、その漢字は登記できません。その場合には、英語圏の氏名と同じようにカタカナで表記する必要があり、結果として、漢字表記とカタカナ表記が混在する場合もあります。
 
 
 
3.外国の方で、個人が所有者となる不動産登記についてはローマ字併記が必要
 
 
不動産登記の制度上、外国の方の氏名について、外国文字を使用することは認められていないため、日本語のカタカナ又は漢字を使用する運用となっていました。しかし、パスポート(旅券)や在留カードに記載されている氏名がアルファベット表記となっていると、カタカナ表記の氏名では両者が一致しているかの確認ができず、登記記録上の所有者本人であるかどうかの確認が困難となってしまうという問題がありました。
そこで、令和6年4月1日以降、外国の方で個人の場合について、不動産の所有者の氏名を日本語のカタカナ又は漢字で登記するとともに、ローマ字(大文字のアルファベット)での併記ができるように法改正が行われました。