2024/7/3
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破産しても支払義務が残る!非免責債権って何? |
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自己破産とは、現在持っている財産や今後得られる収入などから総合的に判断して、借金などの債務について返済できる見込みがないことなど(これを「支払不能」といいます)を裁判所に認めてもらい、債務の支払義務を免除してもらう手続です。 信用情報などへの影響などのデメリットはありますが、基本的にはすべての債務の支払義務を免除される点で経済的な再起を図るうえで有効な手続ですが、中には破産をしても支払義務が免除されない債務があり、これを「非免責債権」といいます。 破産しても支払義務が残る!非免責債権って何?
1.破産手続と免責手続 自己破産の手続は、大きく破産手続と免責手続の2つに分かれます。破産手続は、自己の財産や収入だけでは、借金などの債務の全額を支払うことができなくなった場合に、財産を売却するなどして金銭に換え、この金銭を債権者に公平に支払って債務を清算する手続です。 このようにして破産手続が終了した場合でも、それだけではそれまで負っていた債務を支払わなくてよくなるわけではありません。そこで、破産者に経済的な立ち直りの機会を与えるため残った債務について、法律上の支払義務を免除する制度を免責といいます。 2.非免責債権とは? 自己破産とは、破産手続と免責手続の2つを経て、借金などの債務の支払い義務を免除してもらうための手続ですが、免責が認められたとしても、債務、すなわち、支払の相手側から見た場合の債権の一部については、法律で支払義務を免除されないことが定められています。
(1)租税等の請求権(破産法253条1項1号) 租税等の請求権とは、国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することができる請求権を指します。税金だけでなく、国民年金や国民健康保険の保険料などの公租公課が該当します。 (2)破産者が悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権(破産法253条1項2号) 不法行為の中でも悪質なものについては、被害者の保護の観点から非免責債権とされています。 なお、「悪意」とは、単なる故意ではなく、積極的な害意を要すると考えられています。 (3)破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法253条1項3号) (2)と似たような規定ですが、人の生命や身体を侵害する不法行為の場合、非免責債権となる範囲は(2)の場合よりも広くなります。 具体的には、飲酒運転や暴走運転などの無謀な運転による交通事故の被害者の損害賠償請求請求権などがこれに該当します。 (4)親族関係に係る請求権(破産法253条1項4号) 親族関係に基づく請求権のうち、①夫婦間の協力および扶助の義務、②婚姻から生ずる費用の分担の義務、③子の監護に関する義務、④扶養の義務、および⑤①~④に類する義務であって契約に基づくものが非免責債権とされています。 これらは、保護する必要性が高いという点から非免責債権とされており、具体的には、別居中の配偶者に対する婚姻費用(生活費)の分担義務や子の養育費などが該当します。 ちなみに、破産法が改正(平成17年1月1日)されるまでは、このような請求権も免責の対象となっていましたが、改正によって非免責債権となりました。 (5)雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権(破産法253条1項5号) 使用人とは労働者のことをいいますが、例えば、給料などの請求権については、雇用主が破産した場合であっても免責されないことになります。 ただし、雇用主が法人の場合には注意が必要です。法人が破産すると、その法人は消滅してしまうため、そもそも債務が免責されるかどうかという問題にはなりません。 したがって、この使用人の請求権というのは、雇用主が個人事業主の場合を想定しています。 (6)破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権(破産法253条1項6号) 自己破産の手続を申し立てる際には、原則として、すべての債権者や債権額を明らかにした「債権者名簿」を裁判所に提出する必要があります。債権者には、免責について意見を述べるなどの機会が与えられますが、債権者名簿に記載されていない債権者にはこの機会が与えられないことになるため、このような債権者の保護の観点から、非免責債権とされています。 これは、債権の存在を把握していなかったことについて過失があったために、債権者名簿に記載しなかった場合も含まれるとされています。 なお、破産者が意図的に特定の債権者を債権者名簿に記載しなかった場合には、その債権が免責されないだけでなく、そもそも免責自体が認められない「免責不許可事由」にも該当する可能性があることに注意が必要です。 (7)罰金等の請求権(破産法253条1項7号) 「罰金等」とは、罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金又は過料などが該当します。 これらの請求権は、刑事罰の制裁といった側面を重視した結果、非免責債権とされていると考えられています。 3.おわりに 破産をした場合でも、税金や養育費などの非免責債権については支払義務が残ることになります。 したがって、もし債権者から支払の督促等があった場合には、その支払方法等について債権者と話し合いをして解決する必要があるでしょう。 |
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