2024/7/15

配偶者にすべての遺産を相続させるための「相続放棄」にはご注意を!

「配偶者にすべての遺産を相続させたい!」
 
このような理由で相続放棄という方法を選ぶ方もおられるかもしれませんが、相続人が配偶者と子の2人である場合に、配偶者にすべての遺産を相続させるために子が相続放棄をしても、それだけで配偶者がすべての遺産を相続することになるとは限りません。
 
それは、子が相続放棄をすることによって、次順位の相続人が現れる場合があるからです。
 
 
 
 
 
配偶者にすべての遺産を相続させるための「相続放棄」にはご注意を!
 
 
相続人には亡くなった方との関係に応じて、以下のとおり相続する順番が決められており、先順位の相続人がいなければ次順位の相続人が相続する権利を有することになります。
 
第1順位の相続人・・・子(子が既に亡くなっている場合は、その子など)
第2順位の相続人・・・直系尊属(親、祖父母など)
第3順位の相続人・・・兄弟姉妹(兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、甥姪)
 
なお、配偶者は常に相続人となります。
 
相続放棄をすることによって、初めから相続人ではなかったこととみなされますので、第1順位の相続人全員が相続放棄をした場合、相続する権利は第2順位である直系尊属に移ることになり、第2順位の相続人全員が相続放棄をしても、第3順位の相続人に相続する権利が移るというわけです。
 
もし、配偶者にすべての遺産を相続させるために相続放棄という方法を選んだ場合、第1順位から第3順位までの相続人全員が相続放棄をする必要があり、場合によっては非常に手間がかかってしまうことになるというわけです。
 
それならば、はじめから相続人全員で遺産分割協議を行い、配偶者が全財産を相続することにした方が手間もかからないでしょう。
 
ただ、第1順位から第3順位までの相続人全員に相続放棄をしてもらうことが意味を持つ場合もあります。
 
それは、亡くなった方に多額の借金などの負債がある場合です。
 
遺産分割協議によって特定の誰かにすべての遺産を相続させたとしても、借金などの負債については、相続人全員がそれぞれ法律で定められている相続分に応じて負担することになるため、遺産をすべて相続した人以外に対して借金の督促が来た場合、原則として、遺産分割協議で決まった内容を理由として支払いを拒むことはできません。
 
もし、ここで相続放棄をしていれば、初めから相続人ではなかったことになるため、当然、借金についても相続していないことになり、督促に対しても支払いを拒むことができることになります。
 
ひと言で相続と言っても、遺産の内容や相続人同士の関係性などによって、その具体的な手続について採るべき方法は変わってきます。
 
インターネットを検索すれば様々な情報を得られますが、その真偽の判断については自己責任が伴うことも忘れてはいけないでしょう。不安があるとき、判断に迷ったときには、専門家に相談することをお勧めします。