2024/7/24
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解散しただけでは会社を終わらせることができない?会社の解散と清算について |
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事業の業績悪化や後継者不足などの理由から、やむを得ず会社を終わらせることにすることもあれば、もともと自分の代だけでやめるつもりで自主的に廃業をすることもあると思いますが、会社を解散したとしても、それだけでただちに会社が消滅するわけではありません。会社を消滅させるには、原則として債権債務の処理や残余財産の株主への分配などの清算手続を経る必要があります。 解散しただけでは会社を終わらせることができない?会社の解散と清算について
1.会社の解散事由 会社法では、会社が解散する原因(解散事由)について7つ規定されています。
① 定款で定めた存続期間が満了すること 会社は、定款で会社の存続期間を定めることができ、存続期間が満了すると、満了日の翌日の午前0時に会社が解散することになります。 ② 定款で定めた解散事由の発生 会社が、定款で、一定の事柄が発生した場合に会社が解散することを定めていた場合、その事柄が発生することで会社は解散することになります。 ③ 株主総会で解散を決議した場合 会社は、株主総会で会社の解散を決議することができます。解散の理由は何でも構いませんが、決議には、原則として、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した議決権の3分の2以上の株主の同意が必要です。 実務上、株主総会の決議による解散が最も多く行われています。 なお、原則として、解散の効力は、解散決議が成立した時点で発生し、それ以後、会社の営業活動は禁止されます。したがって、株主総会の開催日については慎重に決める必要があります。 ④ 合併 合併とは、複数の会社が1つの会社になることです。合併により消滅する会社の権利や義務を存続する会社に引き継がせるという特徴があり、合併により消滅する会社は、合併と同時に解散し、清算手続きを経ずに消滅します。 ⑤ 破産手続開始の決定 会社について、破産手続開始決定がなされた場合にも会社は解散しますが、裁判所が選任した破産管財人が破産手続きを処理することになるため、会社法の定めによる清算手続きは原則として行われません。 ⑥ 解散を命じる裁判があった場合 公益上の理由から会社の存続を認めがたい場合に、裁判所の判断で会社を解散させる制度です。 ⑦ 休眠会社のみなし解散の制度 会社に関する最後の登記があってから12年を経過した会社を「休眠会社」として強制的に解散させてしまう制度です。実体のない会社の登記をそのまま放置しておくと、登記に対する信頼性が損なわれてしまうため、一定期間、登記を変更していない会社を休眠会社とみなして、その登記を職権で抹消することとされています。 「12年」という期間については、発行する株式の全部に譲渡制限がある会社の場合、役員の任期が最長で10年とされており、少なくとも10年に1回は役員変更登記をする必要があることを踏まえて定められています。 2.会社の継続 解散したものの清算が終了していない会社が、解散前の状態に戻って会社を継続することを会社継続といいます。 会社を継続できるのは、上記の7つの解散事由のうち「定款で定めた存続期間の満了」「定款で定めた解散事由の発生」「株主総会の決議」「休眠会社のみなし解散」によって解散した場合に限られ、また、会社を継続するためには、株主総会の特別決議が必要です。 3.会社の清算 会社を解散し、その登記をしても、それだけで会社を終わらせるというわけにはいきません。会社が解散して事業活動を終了しても、まだ、その後の残務処理や財産整理は残っています。解散した会社について、債権債務を処理して残った財産を株主へ分配する手続を清算といい、清算に関する業務を行う人を清算人といいます。 なお、解散後の会社は清算を行う目的でのみ存続します。そのため、清算人はもっぱら会社の清算事務を行うことになります。 (1)清算人の選任方法 会社の清算人の選任方法としては、次の4つがあります。
① 定款に定められた人が清算人になる 誰が清算人になるかについて、会社の定款で定められている場合には、定款に定められている人を清算人にすることができます。とはいっても、定款に清算人についての規定を設けている会社はあまりないため、このケースで清算人に選任されるケースは少ないと思います。 なお、清算人と清算会社の関係は委任の規定に従うため、定款で定められたからといって強制されるわけではなく、あくまで就任を承諾したときに初めて清算人となります。 ② 株主総会の決議で清算人を決める 株主総会の決議によって清算人を決めることもできます。株主総会の決議による解散では、同じ株主総会で、清算人の選任決議を行うことが多いようです。 会社解散の決議は特別決議になりますが、清算人の選任決議は普通決議でかまいません。株主総会で清算人の選任決議がされた場合も、本人の就任承諾が必要です。 ③ 取締役がそのまま清算人になる ①②で清算人が決まらない場合には、それまでの取締役が当然に清算人になります。これを法定清算人と言います。 ④ 裁判所が清算人を選任する 取締役が死亡しているなど、清算人になる人がいない場合には、利害関係人の申立てにより、裁判所が清算人を選任します。 (2)清算人の業務 清算人の業務については、会社法上、「現務の結了」「債権の取立て及び債務の弁済」「残余財産の分配」の3つが定められていますが、その具体的な内容は次のようなものがあります。 ① 会社の財産調査 会社の解散日現在の財産目録と貸借対照表を作成し、その内容について株主総会の承認を得ます。 ② 現務の結了 会社について完了していない業務を終了させます。例えば、既に締結している契約を履行したり、取引先との基本契約の解消などです。また、従業員は解雇せざるを得ないため、就業規則や法律の定めにしたがって退職金や解雇予告手当を支払うことになるでしょう。 なお、清算事務の範囲でない新規の取引などはできません。 ③ 官報公告等 解散後すぐに、2カ月以上の期間を定めて、債権者に対してその債権を申し出るよう官報による公告を行います。また、債権者と分かっている相手対しては、個別に債権を届け出るように催告をします ④ 財産の換価 債務の弁済や残余財産の分配のために、商品の在庫、不動産、機械・備品などの設備、有価証券などの会社の財産を換価します。 ⑤ 債権の回収 ④と同様の目的で、売掛金や貸付金の取立てや債権譲渡などによって、会社の債権についても換価します。債務の弁済や残余財産の分配のため、会社の財産をお金に換える必要があります。会社の債権については、債務者に支払いを請求したり債権譲渡を行ったりして換価します。 ⑥ 債務の弁済 ④⑤によって得た資金などをもとに、会社の債務を弁済します。このとき、③の債権者への公告や個別の催告において定めた期間を経過した後でなければ弁済をすることはできません。ただし、裁判所の許可を得れば、債権者への公告や個別の催告において定めた期間内であっても弁済をすることができます。 ⑦ 残余財産の分配 会社の財産を換価し、すべての債務を弁済した後に、財産が残っている場合にはその財産を株主に分配します。分配は金銭で行うのが原則ですが、金銭以外の財産で分配することも可能です。 ⑧ 清算結了の登記 会社の財産の清算が完了したら、清算人は決算報告書を作成し、株主総会の承認を得て清算結了します。その後2週間以内に法務局で清算結了の登記を行い、登記が完了すれば会社の登記簿(登記記録)は閉鎖され会社は消滅します。 4.解散・清算に伴う登記手続 (1)解散の登記 会社の解散事由のうち、「定款で定めた存続期間の満了」「定款で定めた解散事由の発生」「株主総会の決議による解散」の場合には、解散の登記と清算人の登記を申請します。 株主総会の決議による解散の場合には、その総会において清算人を選任することも多いことから、解散の登記と清算人の登記の2つを1度にまとめて申請するのが一般的です。 なお、解散によって代表取締役という役職はなくなり、新たに(代表)清算人が会社の代表者として就任するため、解散の登記と清算人の登記の申請人となるのは(代表)清算人ということになります。この時、申請書(あるいは委任状)に押す印鑑についてですが、それまで、代表取締役として届け出ていた印鑑は解散による退任登記に伴い廃止されてしまうため、改めて(代表)清算人の資格で印鑑を届け出る必要があることに注意が必要です。 これは、同じ印鑑を継続して使う場合であっても、解散時の代表取締役と代表清算人が同一であっても同様です。 (2)清算結了の登記 解散後の清算手続が終了し、決算報告について株主総会の承認されたときは、代表清算人は清算結了の登記をしなければなりません。登記の期限は株主総会で決算報告かが承認された日から2週間以内です。 なお、清算結了の登記は、解散の日から2カ月を経過していないと申請は受理されません。清算手続の1つである債権者に対する公告等の手続では、債権申出の期間として最低でも2ヵ月の期間を定めることになっているため、解散後2ヵ月以内に清算手続が完了することはないからです。 (3)清算手続中の各種変更登記 清算手続中に清算人の追加や退任があった場合には清算人の変更登記、会社の本店移転や商号変更があればそれらの変更登記が必要となります。 5.まとめ 会社を消滅させるためには、解散後、清算手続を経て、清算結了という手順を踏むことになり、その手続には最低でも2カ月以上の期間が必要です。 また、登記手続上は解散の登記と清算結了の登記の2つが必要です。 そのほか、税務や社会保険、労働保険など各関係機関への届出、従業員や取引先、金融機関などの利害関係人への対応など、会社の規模や状況によっては様々な手続が必要になる場合もあります。 会社を解散するにあたって、ご自身ですべての手続に対応するのが難しいと感じるようであれば専門家のアドバイスを受けながら進めることも1つの方法でしょう。
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