2024/7/30
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みなし解散後の会社の継続について |
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会社法上、最後に登記をしてから12年間、何も登記をしていない株式会社のことを休眠会社といいます。 12年もの間、何も登記をしていない株式会社については、実際に事業を継続しているかどうかとは関係なく、既に事業を廃止しているものと判断され、休眠会社として取り扱われるわけですが、さらに、この休眠会社は、公告等の一定の手続を経て解散したものとみなされる場合があります。これを「みなし解散」といい、法務局が職権で解散の登記を行うことになるため、会社が知らないうちに解散されていたという事態に陥ることもあります。 ただ、みなし解散から3年以内であれば、株主総会に決議によって会社を継続することが可能です。 今回は、みなし解散の登記がされた後の会社の継続について解説します。 みなし解散後の会社の継続について
1.みなし解散とは 最後の登記から12年の間、何も登記をしていない株式会社は休眠会社とみなされ、平成26年以降、毎年10月頃にその整理作業が行われています。 この整理作業の過程では法務大臣による官報公告や個別の通知が行われますが、これらの手続に適切な対応をしない場合、法務局の職権でみなし解散の登記をする手続が進められます。 2.会社の継続 会社が解散した場合、その後は営業活動ができなくなり、主に清算手続をする目的でのみ存続することになりますが、何らかの事情で、再度、営業の再開が必要となるケースがあります。 こうした場合に、会社が解散前の状態に復帰し、再び営業活動をするために行うのが「会社の継続」という手続です。 みなし解散の登記がされてしまったとしても、3年以内であれば、この会社の継続をすることが可能です。 3.会社継続の手続 みなし解散の登記がされた株式会社が、その後に会社を継続するためには、以下のような手続が必要となります。 (1)株主総会の決議 みなし解散された株式会社が会社を継続するためには、株主総会の決議が必要です。なお、会社継続の決議は、特別決議(行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う決議)で行わなければならないことに注意が必要です。 また、会社解散時には取締役は退任しているため、会社を継続するにあたり、新たに就任する役員を選任する必要もあります。 (2)登記申請 会社の継続について株主総会の決議があった後、2週間以内に登記申請を行わなければなりません。なお、会社継続の登記と同時に、取締役及び代表取締役等の役員についても就任登記を行うのが通常です。また、取締役会を置いていた会社は、みなし解散によって取締役会の登記も抹消されているので、会社継続後にも取締役会を置く場合には、取締役会設置会社の登記も行う必要があります。 4.会社継続の登記に関する注意点 会社継続の登記を申請するにあたり、以下の点に注意する必要があります。 (1)清算人及び代表清算人の登記が必要 通常、会社が解散する場合、取締役は自動的に退任になり、代わって清算事務を処理するための清算人を選任し、その登記をするのですが、みなし解散の場合、取締役、代表取締役、取締役設置会社の事項は、職権で抹消されますが、清算人については何も登記がされていません。 そのため、会社継続登記の前提として、清算人と代表清算人の就任登記をする必要があります。定款に清算人等の定めがあればそれに従いますが、それ以外の場合には、みなし解散時の取締役・代表取締役を清算人・代表清算人として登記します。 (2)過料の制裁の可能性 みなし解散は、最後に登記されてから12年の間、何の登記もされていない株式会社が対象となっています。この「12年」という期間については、発行する株式の全部に譲渡制限がある会社の場合、役員の任期が最長で10年とされており、少なくとも10年に1回は役員変更登記をする必要があることを踏まえて定められたものですが、みなし解散の登記がある株式会社は、この役員変更登記を怠っていることが明らかであるため、会社継続の登記をした後に登記懈怠を理由とした過料の制裁を受ける可能性があります。 (3)印鑑届出が必要 みなし解散がされると印鑑カードは失効してしまうため、会社継続の登記をする際には改めて株式会社の代表者印を届け出ることを忘れないようにしましょう。 5.おわりに みなし解散の登記がされても3年以内であれば会社を継続することは可能ですが、逆を言えば、みなし解散の登記から3年が経過すると、もはや会社を継続することはできず、清算するしかなくなってしまいます。 事業を行っているにもかかわらず、登記記録上は解散させられてしまうことのないよう、株式会社はその登記に対しても注意を払う必要があります。 そうはいっても、登記手続に関して不慣れな場合もあれば、事業に専念するために登記手続には時間を割くことができない場合もあると思いますので、そのような場合は登記の専門家である司法書士に相談してみることを検討してはいかがでしょうか。
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