2024/8/1
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発行可能株式総数とは?あらかじめ決めておく理由や具体的な決め方について |
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株式会社を設立する際には様々なことを決めなければなりませんが、その中のひとつに「発行可能株式総数」というものがあります。発行可能株式総数とは、その会社が発行できる株式の数の上限のことで、当然ですが、会社は発行可能株式総数を超えて株式を発行することはできず、もし、発行可能株式総数を超えて株式を発行しようとする場合には、株主総会の決議で発行可能株式総数を変更する必要があります。 発行可能株式総数とは?あらかじめ決めておく理由や具体的な決め方について
1.発行可能株式総数とは 発行可能株式総数とは、株式会社が発行することのできる株式の総数のことです。そのうちの一部は会社の設立に際して発行することになりますが、残りは会社設立後、必要に応じて発行します。 会社法では、株式会社は設立登記のときまでに、発行可能株式総数を定款で定めなければならないとしており、もし発行可能株式総数を超えて株式を新たに発行する必要が生じた場合は、事前に株主総会の決議によって定款を変更しなければなりません。 2.発行可能株式総数を決めておく理由 発行可能株式総数を定款で定めておくのは、会社の資金調達の機動性を確保すると同時に、取締役会の権限を制約するためだと言われています。 株式を発行することは、株主構成に変更が生じ、また、株式の価値にも影響を及ぼすこともあることから、既存の株主にとっての利益を害するおそれのある行為です。したがって、本来であれば、株式の発行は株主総会の決議によって決めるべきだといえます。しかし、株式の発行をその都度株主総会で決定するとなると、どうしても時間がかかってしまうため、迅速な資金調達が達成できなくなってしまいます。 そこで、あらかじめ発行可能株式総数を定款で定めておき、資金の調達が必要になった場合には、取締役会決議によって発行可能株式総数の範囲内で株式を発行することができるようにすることで、会社の運営に機動性を持たせつつ、既存の株主の利益の保護を図っているというわけです。 このように、一定の範囲内で取締役会に株式発行の権限を付与する制度を授権資本制度といいます。 3.発行可能株式総数の決め方 (1)公開会社の場合には一定の制約があることに注意 会社が発行する株式の全部又は一部の内容に株式の譲渡制限をつけていない会社を公開会社といい、公開会社では取締役会を設置が義務付けられています。 公開会社では、株式の発行は基本的に取締役会の決議によって行われますが、ここで、あまりに広い範囲の株式発行権限を取締役会に与えることは、既存の株主にとっては自身が持つ株式の保有割合が低下するなど不利益を被るおそれがあります。 そこで、会社の設立時には、発行可能株式総数の少なくとも4分の1は株式を発行しなければならないこととし、このことは、発行可能株式総数は設立時に発行する株式の4倍以内でなければならないということを意味します。 また、定款の変更により既存の発行可能株式総数を増やす場合にも、発行済株式総数の4倍までしか増加できないこととされています。 これに対し、会社が発行する株式の全部について株式の譲渡制限が付いている非公開会社では、公開会社のように発行可能株式総数が発行済株式数の4倍以内でなければならないという制約はありません。したがって、発行済株式数の10倍や50倍でも自由に設定することが可能です。ただし、非公開会社においては、株式の発行は原則として株主総会の決議によることになります。 (2)発行可能株式総数を決める際の考え方 会社の設立後に続々と株式を発行するというのであれば発行済株式総数の100倍や1000倍にしておくのもよいかもしれませんが、前述のとおり、公開会社の場合は発行済株式数の4倍以内に収めなければならないことには注意が必要です。 会社の設立後に一切株式を発行しないというのであれば、発行済株式総数と同じ数にするのもよいでしょうし、将来予定している増資の金額が明確に決まっているのであれば、それに合わせて決めてもよいでしょう。 いずれにしても、発行可能株式総数に余裕がなければ、新たに発行できる株式の数も少なくなるため、もし、その時の発行可能株式総数を超えて株式を発行したい場合には、発行可能株式総数を変更しなければならなくなります。 発行可能株式総数は定款の記載事項であり、登記事項でもあるため、変更するには株主総会の決議と登記手続が必要になります。後になって、変更の手間や費用がかからないようにするためには、できるだけ余裕を持たせるようにした方がよいでしょう。
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