2024/8/5

譲渡制限株式とは

譲渡制限株式とは、その株式を譲渡によって取得する際に会社の承認を要する株式のことをいいます。
 
株式の譲渡に制限を設けることにより、外部への株式の流出を防いだり、経営の安定を図ることが可能であり、また、会社の乗っ取りなどの敵対的買収のリスクを抑制することができることから、スタートアップや中小企業では多くの場合、定款で株式の譲渡制限規定を設けています。
 
 
 
 
 
譲渡制限株式とは
 
 
 
目次
1.株式譲渡自由の原則
2.株式の譲渡制限
3.株式の譲渡自体は禁止されていない
4.相続人等に対する売渡請求
5.おわりに
 
 
 
1.株式譲渡自由の原則
 
 
株主は、会社に対する出資を履行した後は、出資した限度しか責任を負う必要はありません。
 
つまり、会社の債権者にとっては、出資者個人の財産に対して責任を追及することができないため、会社の財産のみが債権の引き当てになるということです。
 
このことから、株主に対する出資の払い戻しは認められておらず、株主が投下した資本を回収するためには、会社の解散による残余財産の分配や、剰余金の分配(配当)などを除けば、もっぱら株式の譲渡という方法によるしかありません。
 
そこで、株式には譲渡する自由が保障されており、これを「株式譲渡自由の原則」といいます。
 
 

2.株式の譲渡制限
 
 
原則として、株式には1株につき1個の議決権があるため、保有する株式数が多いほど、株主総会における役員の選任・解任などを通じて会社の経営に影響力を持つことになります。また、決議に影響を及ぼさない少数株主であっても一定の要件を満たす株主には会社に対する様々な権利が認められています。
 
株式譲渡自由の原則により、株主がその保有する株式を誰に対しても自由に譲渡できるとすると、会社にとって望まない人物が経営に関与してきたり、株主の構成が複雑になってしまうなどの不都合が起こり得ます。特に、スタートアップや家族経営の会社などにとって、不特定多数の者が株主になりうるという状況では、会社とまったく関係のない者や対立関係にある者が株主になることによって経営が困難になる場合があるため、株主を人的な信頼関係にある者に限定したいとする要請があります。
 
このような要請を受けて、会社法は、株式の内容として譲渡による株式の取得について会社の承認を要する旨を定めることができることとし、このような株式を譲渡制限株式といいます。
 
ここでいう「譲渡制限」は、譲渡先(取得者)を制限することによって、会社の望まない者に対する株式の譲渡を避けることを主な目的としています。したがって、例えば、「外国人の株主が譲渡するには会社の承認を要する」とするのは株主平等原則に反することになるため注意が必要です。
 
 
株主平等原則とは?

株主は、株主としての資格に基づく法律関係において、その所有する株式の内容および数に応じて平等の取り扱いを受けるという原則のことです。
 
 
これに対して「外国人に株式を譲渡するには、会社の承認を要する」とするのは、あくまで譲渡先を制限したにすぎず違法ではありません。
 
なお、株式を譲渡する際の承認機関は、取締役会のある会社では取締役会、取締役会のない会社では株主総会が原則とされています。
 
 

.株式の譲渡自体は禁止されていない
 
 
譲渡制限株式を譲渡により取得するには会社の承認が必要となりますが、もし会社の承認を得ずに譲渡したとしても、譲渡の当事者同士では法的に有効な譲渡が成立するとされています。
 
つまり、譲渡制限株式とはいえ、株式の譲渡そのものが禁止されているわけではなく、会社の承認を得ずに譲渡された場合には、その譲受人が会社に対して株主としての権利を主張できなくなるにすぎません。
 
ただし、会社が譲渡制限株式の譲渡を承認しなかったとしても、一定の場合には会社が譲渡を承認したものとみなされる場合があるため注意が必要です。
 
なお、譲渡制限株式の譲渡について会社が承認しない場合には、会社または会社が指定した第三者(指定買取人)に対して、当該株式を買い取ることを求めることができます。
 
また、定款で定めることによって、一定の場合には承認を要しないとすることや、譲渡による取得が承認されなかった場合の指定買取人をあらかじめ指定しておくことも可能です。
 
 
 
4.相続人等に対する売渡請求
 
 
株式に譲渡制限を定めていたとしても、その株式が相続などの一般承継によって取得される場合は譲渡にあたらないため、会社の承認がなくても取得できることになります。
 
そこで、会社法では、定款に定めることで相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した株主に対して、当該株式を会社に売り渡すことを請求できることとされており、相続による株式の分散や、会社にとって望ましくない者が相続により株式を取得することを防ぐことができます。
 
相続人等に対する売渡請求は、主に支配株主である創業者以外の株主が亡くなった場合などに行われることが想定されていますが、支配株主である創業者が亡くなった場合に行われることも当然可能であるため、この制度を利用されて内部から会社を乗っ取られてしまうというリスクがあることには注意しなければなりません。
 
 

5.おわりに
 
 
以上、譲渡制限株式についての解説でした。
 
なお、譲渡制限株式と似た表現で「譲渡制限付株式」というものがありますが、これは、一定期間の譲渡制限が付された株式を役員や従業員に交付する報酬制度の1つで、譲渡制限株式とは異なるものです。
 
譲渡制限付株式は、リストリクテッド・ストック(RS)とも呼ばれ、役員や従業員にインセンティブを与えることで中長期的に経営や企業価値の向上に貢献してもらうことを目的として上場会社などで活用されています。
 
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